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とんこつQ&A 今村夏子 読書感想

前職で6時間グラスを拭く仕事をしていた主人公は膀胱炎になり、病院の途中で見掛けた店のアルバイト募集の貼り紙を見て転職する
咄嗟に言葉が出て来ずに当たり前の「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」が言えない
しかし紙に書いた言葉は言えると気付き、その日から対応に必要なメモを持ち歩き見て声を出せるようになった
順調そうにいっていた日々だったが、店が新しい人を雇おうとした時から心にさざ波が広がる


色々予測不能な話だった
新しい人を雇おうとしたときに、きっと社交的で綺麗な人が入って来て主人公が居た堪れなくなるんだろうなと思ったら全く違っていた
主人公と同じような人 
そして仕事が出来ないというのに、主人公は自分が勤め始めたときのことを忘れ、あの人はまるで仕事が出来ないと苛立つ
しかしここの店とぼっちゃん、心が広いな
前の店でグラスを拭くだけをやっていたのも、前の店の人達は主人公にそれだけをやらせ、他のことは出来ないと見切りをつけていたのだろう
そういう人に、大丈夫と寛容な心で受け入れる
そうでなかったらあのラストはなかった
前の店の人達のように排除の方へ傾いたらきっと辞めていただろう
いつまで時給で続けるんだという意見もあるかもしれない
しかし人それぞれの居場所がある 本人が幸せならそれでいい 誰かが決めることではないと思った

他に三編あり、その内の二本は後味があまりよくない じんわりと怖いとも思う

最後の話はなんかあの人ってお金たかってくるらしいよ、と言われたら警戒するのすごくわかる
なのに家に上げて大丈夫なの?と読んでいたらなんか交流しているし、いい話で終わるかと思ったらやっぱりね、なんだけど勉強代として仕方ないかとも思える
これまで料理すらする気がなかった主人公だけれど、包丁を手に持ってどうにか生きるためのご飯を作って食べている 読後感はよかった



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