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境界線 中山七里 読書感想

気仙沼市で死体が見つかった 持っていた運転免許証から身元がわかり、笘篠の元へ連絡が入る
笘篠は震災で妻と息子を亡くしていた 津波に呑まれたままだった
その免許証の持ち主は妻の名前だった
しかし安置所で確認すると全くの別人の顏だった
そして別の日に公園で男の死体が発見される
男が持っていた免許証だが、やはりそれも本人とは別のものだった

震災後を舞台としたミステリー
今も行方不明となっている人達がいる
その身分証を利用し、名前を語っている人がいるという設定
ありそうな話で怖くなる

さらに復興復興を叫ばれる中、復興の為の人員は東京オリンピックに割かれ、業者たちの人数は足りないと容赦なく現実を描いている
がんばとうと言いつつも被災者たちの声は届いていない
そして被災者達の中でも家族を亡くしたものとそうでないもの、津波の被害にあった土地とそうでない土地と、なんとなく溝があるということ
受刑者たちは皮肉にも三食支給されていて、塀の外の人達の方が苦労していたこと

フィクションとは思えない圧倒的な心情がここに描かれている

目の前で助けようとした命が間に合わず奪われていく
あなたのせいじゃない
そう言ったところで届かない これは経験した人でないとわからないのだと無力になる

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