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ことことこーこ 阿川佐和子 読書感想

離婚して実家に帰って来た香子。なんだか母の物忘れが激しい。
父親が香子と弟の岳人と家族に告げる。
「母さんは呆けた。母さんは呆けた、母さんは呆けた!」

香子のフードコーディネーターという職業とタイトルから料理小説と思われるが、メインのテーマは母の認知症の介護。

ワンオペの介護はどんどん追い込まれていく、というのを重すぎることなく書いてあるが外側から見るとこれは深刻、と気付かされる。

弟が介護施設に入れようと言ってもここは母さんの居場所、環境を変えると認知症が進むからと聞かない
仕事にも支障をきたし、家にこもりがちになり、友人からの誘いも断るようになり、と自宅介護の悪い見本のように展開していく

このままでは香子が孤独になっていくのは目に見えている
本人はとても頑張っている 母にとって居心地のよい環境を、というのがわかっているだけにそれは間違いとは言いにくい また言ったところで聞かないのもわかる

それを打破したのが母親がおぼろげながらも考える意識ある時に決意したことだった

ずっと面倒を見ているつもりだったけれど、やはりそこは母親
娘にとって今の状況はよくないものだと察知していた
その深い愛情に感動した

お母さんが作っていた料理のレシピを一緒に作るなど、介護というテーマがありながらも暗くなり過ぎず美味しい料理で彩られた素敵な話でした


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