初めてサークル参加をした話

 今からおよそ15年ほど前、M3という音楽イベントがあるということを知り、いつか行ってみたいという気持ちを抱きながら結局行かないでいた。当時はまだ蒲田で開催していたと記憶している。
 やっとこ一般参加をしたのが確か2016年秋の事だったと想う。なんとも腰の重たい話である。そして、それを機にいつかはあの机の向こう側に行ってみたい(即ちサークルとして参加してみたい)と思うようになったはいいものの、出展するようなものなど何一つ持っていない。
 ちゃんとしたオリジナル楽曲もいつか作ってみたいと思い続けて15年ほど。結局1曲も作らず、自主製作CDを作りたいと思い続けている間にCDという媒体がなくなってしまいそうな有様。何をするにも腰が重たすぎる。

 そんな私でもニコニコ動画にソロギターの演奏動画をアップロードしていた時期があった。流れるコメントの中には「ニコニコソロギタリストの二軍の中では一番上手い」「演奏は下手だけど楽譜は綺麗」というものがあり、まだ根に持っている。
 これらを総合して考えると、楽譜だったら音源の収録をする必要もないし、それなりに人様に見せられるのではないかと思い至り、またM3が25周年、自分自身が生誕35周年という節目であることもあり、ついにサークル参加を決断した。

 というのがまだ寒い春先のできごとであった。
 まだ何も用意がない。そもそもサークルってなんだ?一人なのにサークルで良いのか?ソロギター同人サークルで構成員一人ってそれはただのソロギタリストなのでは?といった具合に何も分かっていなかった。
 今にして思えば、とりあえずまず参加するためにサークル名なんて「すみはる屋」でもなんでも良いから参加しておいて、後からちゃんとした名前に変えるなりすれば良かったのではないかとも思うが、案外形から入るタイプなのでちゃんと名前はつけておきたかった。

 ゲームのキャラクターメイクとかに延々と時間をかけてしまうタイプなので、サークル名の決定にはそれはそれは時間がかかった。
 ソロギター同人サークル「楽団ひとり」とか「弦詩人」とか「弦想」とか「弦想里見八犬伝」とかとかとか…様々な候補が浮かんでは消えていき、決めきれなかった。
 ちょうどchatGPTが台頭してきた頃でもあり、候補名を審査してもらい、一番AI受けの良い名前とその理由を調べて命名の参考にしようと考えた。
 なんならAIに良い名前をつけてもらおうかとも考えたが「オタクギター」「マンガストリングス」「同人フレット」「オタクフィンガーズ」みたいな名前ばかりでどれもピンと来ないし、同人とアニメ・マンガ・ゲーム・オタクを切り離して考えてもらうことができなかったので全て棄却した。

 AI審査の結果、「弦詩人」と「弦想里見八犬伝」と「楽団ひとり」のAIウケはとても悪かった。楽団ひとりがダメなら劇団ひとりはどうなるんだと食い下がってみたが、劇団ひとりは良いらしい。なんだそれは、納得がいかない。
 私のセンスの問題か、はたまたAIが駄洒落を理解してくれないのかは分からないが、こうしてついにサークル名を決定するに至った。

かくして同人サークル「Solitary Ensemble」は静かに産声をあげた。

 これは直訳すると「孤独な合奏」となり、一言で矛盾してしまうのだが、chatGPT的にはアリだったようだ。じゃあ「楽団ひとり」が矛盾してるってこき下ろす事ないだろ。

 実は「Solitary Ensemble」という名前はモロにパクりというか、『孤独のグルメ』の英題である”The Solitary Gourmet”にあやかったもの。
 ちょっと小洒落ていて、ソロギターという音楽性をよく表しつつ、『孤独のグルメ』の哲学とどこかしら通じる部分を感じられて、パクりであることを除けば、かなり良いネーミングだなと思っていたので、AIの審査関係なくこれになっていたのかも知れないが、結果として背中を押される形となった。

 準備段階はひたすら楽譜を書いていた。と言いたいところだがそんなことはなかった。なんか集中できなかったりなんだりかんだり…そもそも楽譜書くなんてめんどくさいし、ソロギターアレンジできたら自分で弾いてそれで大体満足しちゃうもん…そんな有様でついつい後回しになりがちであった。
 それからサークルカットなんてものも作らねばならない。自慢じゃないが美的センスなんて誇れるようなものは持ち合わせていない。とりあえず手持ちの楽譜を素材集の「古い紙」のテクスチャの上に合成して、その上に面白いフォントを乗っけて可読性をあげるために縁取りしただけのサークルカット的な何かができた。いつかちゃんと作ろう…(きっとこれをずっと使うんだろうなぁ…)

 案外形から入るタイプなので、とりあえず即売会用の100円と500円玉に特化したキャッシュボックスと、お金の受け渡し用のコイントレー、卓上ポップスタンドを購入した。後から思えば無くても何も困らなかったが、雰囲気が出たので大事だったと思う。
 その他、「本日のおすすめ」のシールとか要らんものを用意しそうになったり、サークル用のアカウントを取得しようかとか色々と考えたが、冷静に見送った。

 そうこうしてる内にライブに出演しませんかというお話をいただいた。あまりよく考えずに引き受けてしまったが、日程がM3の2週間前だったのは痛恨のミスだったと思う。ライブの練習とM3の準備が重なりしんどかった。半端なライブをしてしまった感が否めないが、いつも半端な気もするのでいつも通りだったのかも知れない。
 どちらかと言うとライブの練習をする時間や、ライブの本番の日とかでM3の作業を進めてしまいたいという焦る気持ちが大きかった。実際そんなに出来ることなんて多くないと思うけど。

 そんなこんなで最終作業を完了したのが5日前の夜。大量に印刷し、クリアファイルに挟み込んで、整頓して値札(ポストイットだが…)を貼る。延々と時間がかかってしまったが達成感はかなりのものであった。

ていうか重くない?大丈夫?

 すごい量になってしまった。大きなカバンにパンパンになってしまってやたら重い。キャスター付きの旅行カバンにするべきか割と本気で悩んだ。
 この辺りのサークル感覚の無さが初参加らしくもあり、私らしくもあり、きっと今後もこんな参加の仕方をするんだろうなぁなどと思ったが、持てるレベルだったのでそのまま持っていくこととした。

 前日は遠足前の子供のように眠れない…というようなことはなく、素直に眠りについたものの、やはり緊張からか眠りが浅く何度も起きては寝てを繰り返し有様で明らかに浮足だっていた。
 会場に到着してサークルスペースを準備したは良いものの、A4の楽譜を並べていたら完全にスペースが足りない。これは完全にレイアウトをよく考えていなかった。立体的に配置できるように小物を用意すべきだったのは反省すべき点だったと思う。

 そんなこんなでごちゃごちゃ並べて配置したは良いものの、「机の向こう側」(サークル参加しているので「こちら側」なのだが)に座っているとなんだかそわそわする。座ってるだけで疲れるという有様。
 楽譜がただ並んでいるという光景がそれなりに目を引いたのか、ある程度目を向けてくれる人はいたものの、ソロギター用の譜面しかないので手に取ってくれる人は少なかった。

10時59分その時は訪れた。

 初めて楽譜を手に取ってくれた人が、素早くササッと1部取って手早くお支払いして去っていった。凄いあっさりと。終始無言で…
 なんかこう、初めて手に取ってくださったから、もっとあれこれお話しようかと思ったのにスッといなくなってしまわれた。なんだったんだろう。音楽の神様かなにかかしら・・・?

 あとは知人サークルに挨拶に行ったり、挨拶に来てもらったりしたけれど基本的にはそわそわして立ったり座ったりしてるばかりだった。せっかく興味を持ってくれたのにソロギター用しかないので残念がってた人もいたものの、ほかの楽器の都合が分からないのでどうしたものか。分からないなりにある程度の形で作ってみるのも経験なのだろうか。

 ホームページがないかと何度か聞かれた。全く用意する気がなかった(というか面倒だった)けど、やはり作った方が良いんだろうか…?</br>
<font size=5 color=ff0000><b>もうHTMLタグを手打ちするのはこりごりです…</b></font></br>
 今やHTMLタグ手打ちなんてせずにスマホでぽちぽちーって作れるんだろうけど、なんか腰が重い…。でもあった方がいいならあった方が良いんだろうなぁ、などとぼんやり考えながら無料ホームページ作成サービスをあれこれ調べたりしている。どのような曲になるのか視聴したいという声もあったので、ホームページから視聴できるようにしておくとよいのかもしれない。

 それから名刺。
 みんな洒落た名刺作ってるから私も作りたいという欲求が出てきてしまったが、白地に黒文字のビジネスみたいなやつでも全然良いと思う。

 そして何故かメロンブックスさんか目を向けてくれて、TwitterにDMくれたりスペースまで来てくれたりするなどした。こんな隙間産業の零細サークルに何故…?と思いながらも、最初のDMが長かったのでロクに読まず「長いから3行でまとめて」と返信したのは申し訳なかったと反省しております。
 そんなメロンブックスさんは改めてスペースに足を運んでくれて、さらにいくつか細かい質問をしたらわざわざ持ち帰って確認とってからもう一度来てくれたりと大変丁寧に対応してくれたので、委託しても良いんじゃないかと思ったりしている。
 そんな事は全く考えもしなかったものの、ホームページ作ってメロンブックスに委託なんて急に同人サークルらしくなってきてしまってどうしたものかとニヤニヤしながら悩んでいる。

 それから有志の打ち上げに参加して交流の輪を広げるなどして、家に帰ったら即刻倒れるようにして寝た。そのあと数日間は疲労が続いたと思ったら風邪をひいた。試験期間終わったら風邪ひくアレみたいなことになってる。

 などと、振り返ってみるともう少しちゃんとやれるところはあったなという気持ちと、初めてなんだからまぁ…という気持ちと、次は上手くやらないとな…という気持ちと、次にちゃんと出すためにはそろそろ準備しておかないとな…という焦りなどを感じながらとりあえずメロンブックスさんにサークル情報の登録だけは済ませました←

最後に…

 今回、生誕35周年を記念して思い切ってサークル参加などしてみたら、思った以上に大変でもあり、でも思ったほどハードルが高いわけでもなく、そして準備期間含めて思った以上に楽しい半年であった。
 M3とは全く無関係だが、2004年11月18日からギターを始めたので、来年で私の音楽生活がは20周年を迎える。20周年の節目に色々頑張りたいと漠然と思ってはいるものの、具体的に何をどのように頑張って良いのやら全く分からず、結局普段通りの展開になるのかもしれない。でもやろうと思えば小さくても何かできると思うキッカケにもなった貴重な経験だった。

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