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営業時代の大切なお客さま

眠れないので思い出話(?)を。

新卒で入った金融系企業は東証一部上場(現在のプライム市場)でした。
テレビCMがじゃんじゃん流れる大企業。
そんな企業の法人営業として配属されました。

福利厚生のよさをうたい、流行りの「プレミアムフライデー」を導入。安心して勤められる...はずでした。

新卒で女だから、というのが大きかったと思います。大して頑張らなくても、契約がもらえました。毎月数千万円の売り上げがあったので、正直お給料はかなり良かったです。

大して頑張っていなかった中でも、ご契約をいただくまで大変な思いをした大切なお客さまがいました。
母親と同じくらいの年齢の、上席の女性の方、Kさんでした。

最初にお会いした時は挨拶さえもさせてもらえませんでした。
でも、その会社には珍しい女性だし、なんか悪い人じゃない気がして懲りずにしつこく話しかけに行っていたら少しずつ心を開いてくださって...。
高齢のお母様と2人暮らししていることとか、新人だった頃のお話とか、色々聞かせていただけるようになり、お会いすると「すみれ!」と親しげに呼んでいただけるようになりました。

ある日Kさんといつものように雑談していると唐突に、「私子どももいないし、すみれに任せようかな」とおっしゃって、大口のご契約をいただけることになりました。
見たことの無い金額で私はビビりまくり、手続きに不備がないよう私の上司にも同席してもらいました。
契約が完了し、震える手で書類をお渡しすると、今までのことを思い出して涙がぶわっと溢れてしまいました。

「これからも一生懸命頑張ります。お客さまになっていただいてありがとうございます。」

と何度も頭を下げました。

当時は仕事の傍ら、ダンサーとして活動していました。
平日は福岡で働き、休日は大阪や東京へダンス遠征。
日曜夜に現地を夜行バスで出発してそのまま会社へ...などと今思うとヤバいことをしていましたw

サラリーマンをやっていたけれども、当時はプロダンサーを志していました。
副業禁止でしたが、賞金やギャラで稼げるようにもなっていたので、気持ちとしては 仕事<ダンス となっていて。

でも、Kさんにこれを話すととても応援してくれていて、「週末のダンスどうやった?!」と気にしてくれたり、「すみれがどんな道に行っても幸せならいいよ」と言ってくれて...
本当に優しかったです。

しかし、仕事の過激さが増して行きました。

土日の休日出勤、早朝出勤を求められるようになりました。
ノルマの達成、未達成にかかわらず、時々「施策」と称した謎の活動をしなければならないことがあったのです。
土日出勤は、お客さまがお休みの日にご家族にあわせていただき、その方々の分の契約も貰ってこい、とのこと。
早朝出勤は、営業先に出向いて周辺のゴミ拾いしたり挨拶したりしろ、とのこと。

めっちゃ馬鹿らしいですよねw

勿論やりたくなかったので、色々と理由をつけてやりませんでした。しかし、のらりくらりとかわすのにもだんだんと限界がやってきました。

「土日出勤いつも絶対しないけど、何してるの?」

毎週金曜になると、上司に聞かれるようになりました。土日にアポイントを入れていることを前もって申請しないと平日の代休がとれないからです。

正直...お休みの日にプライベートになにをしようがこちらの勝手です。
だけどまだ一年目。
「先輩たちみんな土日にアポイント入ってるよ」
こう言われ、反論もできませんでした。
そこで、土日に架空のアポイントを入れては「リスケになりました」と報告し、やり過ごすようになってしまいました。

しかし今度は「なんでリスケになるの?アポイントの取り方が悪いんじゃないの?」と詰められることになり...。

今思うと馬鹿ですが、自分で自分の首を締めることになってしまいました。

「契約取れてればいいってもんじゃない。チームなんだから、皆が土日に出てるなら頑張らないと」

という謎理論のお説教をうけ、だんだんと自分のやりたいことができないこと、プライベートを詮索されることが大きなストレスになりました。

ある日会社に着いたら、涙がボロボロ止まらくなってしまいました。
その日は早退しましたが、この日を境に会社に行けなくなってしまいました。

しばらく休職しました。

しかし、会社からはお客さまの契約のことや私の状況確認など、しょっちゅう電話がかかってきます。
気持ちが休まるどころか体調がどんどん悪化し、結果として退職となりました。

プレミアムフライデーなんて嘘っぱちです。
地方の営業マンには休日さえも出勤せよと命じるような異常さ。

他にもいろいろ嫌でした。
飲み会を強要されること、その飲み会で歌ったり踊ったりしないといけないこと、あちこちで社員が叱責されていること、ずっと年上の男性社員に枕営業をやるよう示唆されたこと。

思い出すだけで嫌なもんだ。

でも、やめた今でもお客様になってくださった方々のことは気がかりです。
みなさん「すみれさんだから契約する」って言ってくださった方ばかりでした。
本当に本当に大事に人間関係を構築してきた方ばかりでした。本来は引き継ぎの挨拶をしてから退職しなければなりませんが、当時はそれが出来る状況ではありませんでした。

Kさんもそうです。
「休職します。戻ってこれるよう頑張ります」
とお伝えしていたのに、退職の挨拶もできないまま辞めてしまいました。
休職中も、時々会社に「すみれさんどうしてますか」とお電話をくださっていたそうでした。
Kさんにだけはちゃんと挨拶したかったのですが、当時はまだ若くてそんなところにまで頭が働いておらず...。
連絡先は全て社用端末に入っていたため、連絡をとれないまま私は逃げてしまいました。


仕事はやめてよかったって思ってます。
だけど、Kさんのことはとてもとても後悔しています。
頑張る、って約束したのに頑張れなくて、退職して数年経っても本当に申し訳ない思いです。

でも、「幸せならいいよ」って言ってくださったこと。
私は今幸せなので、そのお気持ちには応えられています。

こんな私の幸せを願ってくださった大切なお客さま。
あなたもどうか幸せでいて下さい。