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eスポーツチームの収益モデル考察

eスポーツチームが収益をあげていく為に必要なことを考えたのでシェアする。

従来のスポーツとは違う

一般的なスポーツチームは「チケット」「スポンサー・広告」「物販」「リーグからの分配金」などを主な収益源としている。
従来のスポーツとeスポーツを同じように考える場面も多いが、収益モデルについては異なっている。
「チケット」については、eスポーツの試合は自宅から参加してプレイできるという特性上、大きなスタジアムをチームが保有していることは少ない。そのため、チケットの販売は大会運営を行うパブリッシャーの収益であり、eスポーツチームのものではない。
「リーグからの分配金」は、リーグを運営をすることで得られる収益から参加チームに分配する仕組みだが、そのリーグに参加できているのは日本でも数チームしかいないため、ほとんどのチームはこの収益を受け取ることを前提とすることができない。
※国内リーグだけで収益化させるレベルのマーケットではない、大きな収益源となるはずの「放映権」はまだeスポーツでは収益化が難しいなどの課題が要因になっている。
よって、eスポーツの収益源は「スポンサー・広告」「物販」が中心になっている。
もちろん、大会で優秀な成績を残して賞金を獲得することもあり得るが、選手のパフォーマンスはコントロールが難しいものだと考え、経営やマーケティングを考えるうえでは前提とするべきでないとするのが良いだろう。

広島カープや100Tを見習う

eスポーツチームは「スポンサー・広告」「物販」の2大収益に力を入れていくことが必要だと考察した。
スポンサー収益が大きな割合を占めているチームは、スポンサー企業の経営状態に左右される可能性があり、常にそのリスクと向き合わなければならない。また、所属している選手についても、プレイしているゲームのタイトルの人気がなくなってしまい選手としての活動が難しくなるというような外部のリスクをeスポーツチームは大きく抱えているといえる。
よって、「物販」に力を入れていくことがeスポーツチームの重要な戦略だと考える。
物販が成功すれば、安定的な収益を期待することができると同時に、物販の購入を起因としてチームのファンとなるといった好循環を作ることができる。
既にそのような施策を実行し、成功しているチームがある。「広島カープ」である。
広島カープはプロ野球界の12球団の中で唯一親会社がおらず、資金力がその弱みとされていたが、グッズ戦略を展開、2006年から約10年でグッズの売上を約2億円から50億円を超えるまでに成長させ、現在では全体収益の約30%ほどをグッズが占めており、その結果が2016年にリーグ優勝に繋がっている。
もちろん、野球ビジネスにおいては、その人気の高さや観戦のしやすさなど、様々な成功の要因が考えられるが、ここで伝えたいのは「自力で収益源を確保することの重要さ」である。
海外のeスポーツチーム、100 Thievesもよい例だ。
ウェブサイトを訪れれば、もはやeスポーツチームということを前面に押し出しておらず、物販に注力していることはすぐに理解できるだろう。

Tシャツを作ればよいのか

チームに関連したロゴを貼り付けたTシャツを作って販売すれば売れるといった、単純に物販の戦略では一部のコアファンが購入するだけで、継続的な収益は見込めないだろう。
では、なぜ100 Thievesのアパレルは売れるのか。
その答えはブランディングの成功にあると考えている。
多くのチームが通常のプロスポーツチームと同じように大会で勝ち、スポンサーを獲得するといったモデルだったのに対して、ストリートブランドのデザイナーを引き抜いたり、世界的に有名なラッパーDrake氏を共同オーナーにするなど、単なるゲーマー・アスリートということを感じさせないような活動・訴求をファンに向けて行ってきた。
そうして、100 Thievesは競技で活躍を応援するだけではなく、コンテンツやニュースなど様々な自社メディアにアクセスしてもらえるような大きなコアファンの集団を作ることに成功したのだ。
このようなブランディングが成功することで、応援したいからグッズを買おうというコアファン向けの顧客心理が、あそこのグッズはかっこいいし、私も選手のようになりたいから買いたいというように、より広くのファン層にリーチできるように変化したのである。
こういったブランディング活動はチームのホームページを見ればすぐに理解できる。

そう、100 Thievesはゲーミングチームなのではない、ライフスタイルブランドとしていることがチームのアイデンティティなのだ。
国内でも、同じような戦略をとるために最近リブランディングを行ったチームがある。
ZETA DEVISIONだ。

ここでは細かな施策内容までは深堀りはしないが、こういったブランディングを意識して施策を行っていくことが、ファンをコアファンへと成長させ、物販の購入率増加、新規ファンの獲得といった良いサイクルを生むことに成功している要因になっているのだろう。

アパレルブランド化だけが正義なのか?

これまで「物販」という言葉を使ってきたが、「競技の結果に左右されない収益源」と置き換えたほうがよいだろう。
例えば、野球では会場のお客さんには試合そのものの価値よりも集まって居酒屋のように友達同士で楽しめる観戦体験を価値として飲食などにも注力していることが分かる。
また、バスケットボールでは、VIPルームなどを用意することでビジネスマンへの価値を提供している。もはや利用者はバスケットボールを観戦さえしていない可能性がある。

eスポーツチームにおいては、ゲームを使ったコンサル事業や教育事業をメインの軸として置いても良いかもしれない。
大切なのは、従来のスポーツと関連したビジネスモデルのみを目指すのではなく、eスポーツならではの強みを生かした新しいビジネスチャンスを模索していくことだろう。
そのために、まず取り組むべきはチームが一番の強みとする価値を作り出し、ブランディングの構築、コアファン層を作る活動になってくるのだろうと考えている。

まとめ

  • 従来のスポーツと違い権利ビジネスにつなげにくい

  • 自社での収益モデルを作っていく必要がある

  • 自社の強みを定義し、マーケティングしていかないと取り残される


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参考にした記事やサイト

https://gigazine.net/news/20190906-100-thieves-e-sports-supreme/
https://digiday.jp/platforms/the-rundown-how-do-esports-organizations-generate-revenue/
https://www.riotgames.com/ja/news/building-the-future-of-sport-at-riot-games-ja
https://zetadivision.com/
https://100thieves.com/
https://fazeclan.com/
https://www.youtube.com/watch?v=sIFpHSW63QE
https://wisdom.nec.com/ja/business/2017022001/02.html
https://www.jmrlsi.co.jp/trend/eye/carp.html
https://www.carp.co.jp/

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