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空気に包まれた日


昨日は文学フリマに出店している友人のところに激励しに行った後、お呼ばれしていたお茶会に出かけた。
門前仲町で乗り換え、モノレールに乗り、流通センター駅にある展示場での文学フリマに来たのはこれで3回目だっただろうか。

プロアマ問わぬ各出店者の、自作の作品をブースに積み、通る人たちへのアピールをするべくインパクトのあるポスターなどを飾り、作品に興味を持ってもらえるよう工夫している様子を見るのは楽しい。

しかし、私は、いつも文学フリマの日は多忙な時が多く、ゆっくり回ることはできず、友人のブースに行った後は、そこからのご縁の方をご紹介していただくなどのことを済ませるとバタバタと駆け足ですぐ会場を後にした。

文学フリマ会場は、多くの人が詰めかけているにも関わらず、それほど騒がしくなく、図書館のような静けさがある。
それは文学フリマが醸し出す独特の空気ではないだろうか。

「文学」というだけに、小説や随筆の類がほとんどであり、目を通しながら回るにはやはり無口になるわけで、私が大声で友人と話をしているのが憚れるほどである。

友人は、「中央線が好きだ」という本を出しており、知名度、認知度も上がってきている。
中央沿線の新宿から始まる一駅ごとの一話完結の短編集といったものである。
それぞれの駅に地域性や特色があるように、各駅それぞれの物語があり、それぞれの世界が広がっていく。まるで沿線に住む人たちの息遣いが聞こえてくるかのように。

高尾までどんなお話が飛び出すのか毎回楽しみである。
その発表の場所が文学フリマというのはとてもいいと思う。
文筆仲間とともに楽しそうなブース運営の様子にこちらも嬉しくなった。
信頼しあえる仲間は人生の宝物である。
大切にしつつ、これからも頑張ってほしいとエールを送る。

会場を後にして、次の目的地に行くべく、モノレールに乗り、浜松町から山手線に乗り、東京駅で丸ノ内線に乗り、茗荷谷駅で降りた。
相方の職場が小石川にあるため、茗荷谷駅に着いた時、「なんか仕事に来たみたいな…」とげんなりとした様子の相方にくすりと笑いながら、駅前のカフェで休憩しようと言った。

小石川植物園や教育の森公園、桜の名所である播磨坂など緑溢れる地域で、石川啄木終焉の地や切支丹屋敷などの名跡もあり、さすがに文京という名のつく場所である。
小石川と聞くと、私は暴れん坊将軍の竹脇無我が演じた架空の医師役榊原伊織を思い出してなんだか嬉しいのだが、その舞台となった小石川養生所が植物園として残っているというのは大変興味深く、その植物園そばに相方が勤めているというのも面白いと思っている。

そんな茗荷谷の街の中で、「お茶会」が開かれたのだった。
街が育んだ文化の濃い空気に包まれたところで、茶道の心得もない自分を亭主は温かく向かい入れてくれた。
静謐な時に心落ち着けながら、その後に酒肴の時となり、そちらを少々お手伝いした。
といっても、普段自分が作っているものをさほど工夫もせずに出してしまい、もうちょっと手間をかけたものを用意したかったなあと思った。

BGMに相方の音楽を流していただき、次は私の軸を掛けて…、などのお話もいただき、これからご一緒に催しをすることの予感を高め、来年も熱い年になるのかもしれないと武者震いとともにお茶会で掛けていただけるようなものを描けるのか不安に襲われた。

文学フリマの友人と、茶会の亭主の周りにはたくさんの人が集ってくる。
魅力というもの。
天から授かったものに違いない。
新たに交流を持つことができるようになった方々とこれからも末永くお付き合いいただけたら幸いである。魅力溢れる人々に少しでも近づくことができたらと心から願った。

ご縁とは斯様に不思議なもの、そう思う日であった。

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