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これぞ一匹狼の群れ。UVERworld TAKUYA∞と男ファンの「無言の10kmラン」

2019年12月19日と20日。
UVERworldは、東京ドームライブ2daysを敢行しました。

彼らにとって9年ぶりとなる東京ドーム公演。なかでも、20日は男祭り(男性限定ライブの通称)で、男性限定で45000人というとんでもない記録を打ち立てました。

この2daysに僕も参戦したので、その感想を書き記したいところですが、今回は別の話。

12月20日21時ごろに男祭りが閉幕し、8年間の男祭りがフィナーレを迎えたそのわずか2時間半後に、ちょっとした「続き」がおこなわれました。
ボーカルTAKUYA∞と、男crew(crew=UVERファンの呼称)の真剣勝負の10kmランがおこなわれたのです。

自分と向き合うためのランニング

TAKUYA∞は、約8年前から毎日10km走っています。
ライブでのパフォーマンスを高めるための、彼なりの努力の形です。

ランニングを始めた当時から、ファンクラブ内のブログで報告していたので、多くのファンに周知されている事実です。
でも、彼は基本的に一人で走ります。彼にとって、ランニングは「自分と向き合うため」「音楽と向き合うため」の時間だからです。

そのため、ライブ後などにファンがついてくることをとても嫌がります。
ブログ内でも「俺のランの邪魔をするな」と時々投稿されているほど。

ファンもそれを理解するようになり、ランニング中にすれ違ったファンはハイタッチのみなど、TAKUYA∞のランニングとファンとの間に程よい距離感が生まれています。

だから、彼は「一緒に走ろう」なんて呼びかけたりしません。
ランニングは彼の生き様そのものなので、その生き様に軽々しく触れることを許していないのです。

「ついてくるなら勝手にしろ」な男crewとのラン

しかし、たまに、男crewのみついてくることを許す日があります。
「一緒に走ろう」ではなく「ついてくるなら勝手にしろ」という日です。

今では男祭りの際の恒例行事になりつつありますが、始まりは2015年。

大事なライブの前日は会場に泊まる、ということもファンには知れ渡っている事実です。
そこで、「ライブ会場の前で待ち伏せしていれば、TAKUYA∞が出て来る」と読んだ一部のファンが現れ始めたのが2015年でした。

神戸での男祭りの前夜に20名ほどの男crewが待ち伏せしており、その光景を見たTAKUYA∞はこう言い放ったのです。

「ついてくるのは勝手だけど、10km走り終わるまでに一切俺に話しかけんな。10km走って、俺より速かったヤツとだけ話してやる。そんなに俺と勝負したいなら相手してやるよ」

その日のランは、TAKUYA∞がぶっちぎりの1位。
中途半端なランしかできないヤツは、TAKUYA∞と走ることは許されない」という暗黙のルールができた瞬間でした。

噂が噂を呼び、2017年のさいたまスーパーアリーナでの男祭り前夜は56人、2018年の横浜アリーナ前夜はなんと178人の男crewが集まり、深夜に男同士の真剣勝負が繰り広げられました。

人数が多くなろうが、このランのルールは一貫しています。

・10km走り終わるまで、TAKUYA∞に話しかけてはならない
・1位になった人だけがTAKUYA∞と話すことができる

事実、過去2回で1位になった人は、TAKUYA∞と親密な関係になり。彼が結成したランチーム『PRIDE RUN』に仲間入りしています。

挑戦できなかった悔しさが決め手になった今回の参戦

当然、僕もこのランのことは知っていたし、TAKUYA∞に影響されてランニングを始めたので、「いつかはこのランに挑戦したい」とずっと思っていました。

でも、「僕なんかが挑戦して、周りのcrewやTAKUYA∞に笑われないか」と葛藤していたし、2018年のランは挑戦できない悔しい理由があったのです。

上記のnoteに記していますが、当時膝を痛めてしまっており、歩いてもたまに痛みが出るような状況。
当然、走ることなんてできるわけがなく、この真剣勝負のランは諦めざるを得ませんでした。

少し前にフルマラソンを走ったのですが、あまり走り込みができないまま出走し、その影響をもろに受けてしまった形です。

僕の努力不足が露呈し、立ちたい舞台に立てなくなってしまった。
この事実が、本当に悔しかった一年前の出来事でした。

だから、今回の東京ドーム男祭りが決まった2019年4月11日から、僕の心は決まっていました。

絶対走る。

ランは速さでも距離でもない。深さであり重さである

とはいえ、今回、TAKUYA∞や他の男crewとタイムを競う気はさらさらありませんでした。
自分ができる最大限のランをすることだけを心がけていました。

2017年さいたまや2018年横アリでは、TAKUYA∞より全然速い人が現れ、10km30分台前半で走るバケモノがゴロゴロいます。
そんな人に勝つなんて無理なので、タイムは重要視しませんでした。

また、ライブでことあるごとに、TAKUYA∞は「ランは速さじゃねえ。距離でもねえ。深さだよ。重さだよ。俺は、今日のライブで最高のパフォーマンスをするためだけに、祈りながら走っている」と言っています。
走ることではなく、走ることの意味付けのほうが大切だ、ということです。

僕は、2019年に入って毎日走っているのですが、その意味は2つあります。

・編集者として最高の言葉を紡げるように、心の状態と頭の状態を整える
・継続力のないダサい自分にトドメを刺す

この2点のみです。
だから、毎日確実に走るために距離を柔軟に変えているし、タイムに制限も設けていません。
毎日走ることが僕の最大の意味だったからです。
毎日走った先に、なりたい自分がいたから。

今回のラン勝負でも、このスタンスは一貫していました。
自分が納得するランをするだけだと。

待ちに待ち、あっという間に過ぎ去った48分間

そして、いよいよ12月20日23時30分。
TAKUYA∞のブログで、日時と集合場所が予告され、このランに挑戦する男crewが続々と皇居に集まりました。

その人数、なんと1200人。
日本国内のライブハウスの多くでキャパオーバーになる人数です。
世界で有名なプロボクサー マニー・パッキャオが、自身のトレーニングで500人を連れて走ったことがあるらしいのですが、それを遥かに超える数字でした。

「この日に走るので、一緒に走りたい人は来てください!」というプロモーションは全くしておらず、むしろその逆。
「この日だけはついてくるの許すけど、走らねえヤツ、中途半端なヤツは邪魔だから絶対来るなよ」と警告した上での1200人だったので、それだけの覚悟を持った人がUVERには付いているということなのでしょう。

走り始める前に、TAKUYA∞から一言。

「ありがとう!お前ら、ブサイクばっかやな(笑)。でもそれでええねん。大切なのは生き方や。かっこいい走り方しょうな。お前らと一緒に走れて嬉しいわ」

TAKUYA∞のランニングへの覚悟をcrewは知っているからこそ、このランに集まった男crewに対して敬意を示してくれたのでしょう。

その後すぐにランがスタート。
皇居を2周し、僕のタイムは48分。
直前まで足の調子がかなり悪く、速くて52分ぐらいだったのが嘘かのように、終始4分40秒/kmくらいで走ることができました。
(1200人もいたので、はじめがなかなか前に進めず結果的に48分に着地)

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8か月も待ち焦がれ、この瞬間に向けて体を作ってきたのに、その瞬間はたった48分間で終わってしまう。
実際、ラスト2kmぐらいになると、「もう2kmでこの時間は終わってしまうんだな」と頭によぎっていたほど。

本当に望んだこと、本当に楽しいことって、こんなもんなんだろうな。と学んだ48分間でもありました。

でも、一番書きたいのはこんなことではありません。
一緒に走った1200人の男crewについてです。

生き方を見せ合った1200人の「一匹狼の群れ」

このランが終わってから、僕はずっと「最高だった」と口にしています。
僕自身が最高だったわけではなく、あの空間が最高すぎました。

TAKUYA∞は、求める人間関係を「一匹狼の群れ」と形容しており、それを『LONE WOLF』という楽曲で表現しているのですが、1200人はまさに「一匹狼の群れ」。

まず、皇居にTAKUYA∞が現れた瞬間、「ウェーイ」など声をあげる者は一人もおらず、固唾を飲んでその登場を見守っていました。
また、1200人に対してTAKUYA∞が注意喚起するときは、その一つひとつに対して「はい!」という気持ちいい返事。

尊敬される者と尊敬する者。
なんとも言えない気持ちいい空気が流れていました。

そして、走り始めると、その1200人は一言もしゃべらない。
たまに「大丈夫ですか?」「もう少しです!」という声かけはあるものの、終始無言で走り続ける10km。

そう、1200人それぞれが、自分のランをしていたのです。
自分との勝負をしていたのです。

さらに、10kmを走り終えても、TAKUYA∞が待ち構えててハイタッチなどするわけでもなく、走り終わったらそれぞれのペースで勝手に解散。
皆息を整えたら、何をするわけでもなくそそくさと皇居を後に。

勝負が終わっても、その瞬間にまた自分の時間が動き出す。
それを全員が体現しているようでした。

これらの1200人の行動に、僕は本当にしびれました。
これぞ一匹狼の群れ。
本当にかっこいい男たちの集まりでした。

何人集まろうと、自分を見つめ続け、それぞれの生き方を全うできる。
また、他者に必要以上に期待せず、それでも他者に敬意を払い、その中で自分を貫くことができる。
それを目の当りにした48分間であり10kmでした。

群れずに群れる。それができる人間になりたい

今回の10kmラン、挑戦して本当に良かったと思っています。
「中途半端なヤツは来るな」という警告がSNSでも多く見られていたので、一瞬ビビッていましたが、それで逃げることこそ中途半端だと思い、覚悟を決めた上でのランでした。

僕自身のこれまでのランや生き方が間違ってなかったとわかったし、これからの在り方や生き方を1200人が教えてくれました。

群れずに群れる。
そんなかっこいい生き方をしていこうと思えたランでした。

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