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04|僕とウサギ

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当時、僕は祖母にくっついて歩いていた。買い物いこう。よく駅前のデパートに出かけた。夕飯の買い物に。ウインドウショッピングも含めデパートの散歩は、時間潰しに最適だった。駅前には2つのデパートがそびえ立つ。AデパートとBデパートは連絡通路でつながっている。その空中の渡り廊下には、小さな雑貨屋さんがあった。通る人たちは恰好の餌食になるはずだ。幼い僕の目線にロックオンするものがあった。ちょこんと木の椅子にもたれたウサギのぬいぐるみだった。茶色とグレーが混ざったソイツを。挨拶するように。通るたびに触れ続けた。1週間のうちにその通路を何度通っただろう。その度にウサギとの深度は深くなる。ある日、自分の器から溢れ出た時、「買って!」とせがんだ。祖母は「おじいちゃんに聞いてみよう」とやんわりかわす。帰宅後の拙いプレゼン。やっぱり暗雲が立ち込める。「ウサギのぬいぐるみ?」祖父は分かり易く困惑顔。当時の僕はリトルリーグ野球少年。とっくにぬいぐるみ適齢期を越えていたのだ。「男なのにいらんじゃろ」熱いものが頬をつたう。天を仰いで大粒の涙を流してしまった。また何かが溢れ出てきた。どうしてもあの毛並みを手が覚えていた。観念した祖父が言う「ええい、もう買ってこい!」閉店間際の雑貨屋に祖母と舞い戻り、夜道、ぬいぐるみを抱えて歩いた。自分でも気づけない温もりを欲していたのかも知れない。時は2022年。今、子の「あれ買って」に全力で阻止している。けど、泣くほどのプレゼンには応えようとは思っている。


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