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ミュシャ『四季』に見出す煌めき

 新しい試みとして、作品を紹介しようと思います。



 まず、初めに取り上げさせていただくのはミュシャです。
チェコの画家アルフォンス・ミュシャ(1860〜1839)が1900年に描いた『四季』の《秋》をモチーフにしています。ミュシャはチェコ出身のグラフィックデザイナー、画家です。彼の描いたポスターやパネルは日本でも人気があります。
ミュシャは四季の題材を使用したリトグラフ作品を1886年、1897年、1900年に発表しました。それぞれの季節の植物を女性に擬人化して作品化しています。
 1900年に発表されたミュシャの『四季』は、それまでの作品とは構図が異なっています。季節折々で異なるポーズを取った女性の像とは違い、春夏秋冬全ての季節において成熟した女性の立像を描いています。また、画面を装飾的なフレームが縁取っていることも特徴的です。

【ミュシャ『四季《春》』(1900)】

 『春』の作品の中央には美しい花束を持つ、緑のドレスをまとった女性の姿が描かれています。彼女の足元にはまだ積雪が残る植物があり、冬から春へと移り変わる季節の流れを象徴するように画面の右下から左上へと女性のスカートがS字の形に流れています。緑のドレスと装飾フレームと背景の薄赤の色が補色となり、色あざやかなコントラストをなしています。冬景色の中に鮮やかな花の色が映える美しい作品です。

【ミュシャ『四季《夏》』(1900)】
  《夏》は、輝く黄色のススキの野原の中で、佇む薄ピンクのドレスの女性がこちらを見つめる姿が印象的な作品です。女性のオレンジの髪色、両腕に抱えたケシや白菊などの初秋の花束、そして黄色のすすき野の中に点在する花の赤や青の花々が色鮮やかな印象を与えます。
 

【ミュシャ『四季《秋》』(1900)】

 《秋》は、4つの季節の中で最も装飾的な印象を受ける作品です。チェコの伝統衣装に見られるようなリボンに包まれたドレスを身にまとった茶色い髪の女性が、アールヌーボーらしい植物の文様のフレームがあしらわれた画面の中で佇んでいます。彼女の顔の横の赤い髪飾りと、足元の赤い布の色が呼応し、羽を広げた蝶のように艶やかな印象を与えています。

【ミュシャ『四季《冬》』(1900)】
《冬》は、四つの季節の中で最も静かな印象をたたえた作品です。春夏秋のあざやかな画面とは異なり、画面のほとんどを雪の白が覆っています。画面右手前の雪から、雪をのせた松が左下、右中央、左上と、S字の流れを作ることで、画面に奥行きと薄青の布で頭部を覆った女性の謎めいた雰囲気を作り出しています。星の形をした葉があしらわれたフレームと、画面に流れを作り出す松によってまるで浮世絵のようなオリエンタルな印象を与える作品です。

 ミュシャの作品を通じて、オリエンタルな香りを感じていただけたら嬉しいです。
 

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