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[玉造温泉街再生秘話㉝]旅情とインバウンドの両立

いつもご覧いただきありがとうございます!

さて、いよいよ残り3回(の予定)となりました。

時代も2019年まで来ましたね。

取組紹介はおそらく今回が最後となります。
※後2話は周藤さんへの感謝、そして角を語ります。

そして、この33話を読み進めるにあたり皆様にお願いがあります。

この記事では色々な対立意見が出てきます。

これは決して『悪者を描く』という事をするつもりではありません。

まちづくりを進める上では
色々な立場の方がおられます。
そして色々な意見があります。
みんなまちのためを想っている、そこは変わらないと思います。
感謝しております。

誰が正しいとか、間違いとか、善悪を描きたいわけじゃないことをなにとぞよろしくお願いいたします。

※連載のファンの方はそんなん言わなくてもOK!でしたか… 余計なお世話でごめんなさい(笑)


総会の支部長あいさつ

2019年 5月

玉造温泉の観光協会では、毎年5月中頃に定期総会を開きます。

〔定期総会とは〕
☑ 会員約70名にむけた総会
☑ 前年の事業報告と決算報告をする
☑ 今年度の事業計画案と予算案を発表しOKしてもらう
☑ そのあと飲み会が盛り上がる

総会は支部長(いわゆる会長)の挨拶から始まります。

支部長は3年前に就任されました。

そこで話をされた挨拶がこちらです。

〔支部長挨拶抜粋〕
☑ 玉造温泉も今後どうなるかわからない
☑ 今までのような事をやっていても生き延びれるか心配である
☑ 現に宿泊数も年々減っている
☑ 他の地域を見ると、外国人観光客が多く来られて成功している
☑ インバウンド(外国人観光客の誘致)に力を入れていきたいと考えている
☑ また、美肌温泉は他の温泉も言い出していて玉造だけのものではなくなる
☑ これからは「ものづくりのまち」としてさらなる魅力を発信していきたい

と、熱弁をされました。

出席された会員の皆様も、「うんうん」とうなずいておられます。

ところが角さんはこう思っておりました。

おっと…

そうお考えですか…

なるほど…

ちょっと複雑でした。

要するに

『今までやってきた取組では今後は生き残れないよね…』というお言葉です。

隣に座る周藤さんに目を向けると、神妙な顔をされていました。

支部長が観光協会でこれから力を入れていきたいのは

① 外国人観光客の誘致(インバウンド)
② ものづくりのまちブランディング

と、いう事を宣言された総会となりました。

〔補足〕ものづくりのまちブランディングとは、勾玉の発祥の地としてハンドクラフトの聖地というブランディングを新たに進めたい、というお考えです。発案として間違いではないと思います。 

総会が終わって直会(懇親会)の席で周藤さんに聞いてみました。

角「支部長があいさつで言われましたが…」

周藤さん「ま、そげなら…仕方ねだねか(仕方ない)。支部長の意見が一番だけんの」

周藤さんの寂しそうな表情が印象的でした。

※さあここで一旦深呼吸しましょう! 
そして、支部長の考えが間違っている、という事を書きたいわけじゃないので気持ちをニュートラルにして読み進めください☆


インバウンドの考え方

さて。

支部長の考えもわかります。

☑ 新しいテーマで価値を作りつづけるべきである。
☑ 変化をしないと生き残れない。
☑ 国が進めるトレンドに乗るべきである。

一方で周藤さんの考えもわかります。

☑ 今までの取組をぶれずに地道に続ける事の大切さ。 
☑ 無いもの探しよりも、あるものを探して磨く事。
☑ 全国の温泉地がインバウンドに右ならえ!の時こそ、逆張りをすべき。

これはどちらが正しいのかは、やってみないとわかりません。

良いとか悪いとかでもありません。

人それぞれに考えが違うことはどこの地域でもよくありますよね。

 

ただ、単純に角さんは

『周藤さんのお考えの方が好きだなぁ…』と思っていました。


そんな中で、インバウンドの予算が総会で議決されたわけです。

ということで、急がれるのはインバウンド需要への対策です。
※外国人観光客の誘致のことをインバウンドと言います。2016年頃に角さんも知りました。

国が力を入れている観光施策です。

京都をはじめ北海道や熊野古道、飛騨高山など多くの地域がインバウンド施策に成功しています。

今、日本の観光地としてのトレンドは間違いなくインバウンドです。

ところが、周藤さんは2016年頃からこのようにお考えでした。


以下周藤さんのお考えをまとめると

インバウンドは大切である、と前置きをされたうえで
☑ まず日本人が喜ぶような観光地にするのが先である
☑ 日本人が来て喜ぶようなまちでないと外国人も喜ばないだろう
☑ 他の地域がインバウンドに傾倒するからこそ逆張りする。←他の地域との差別化ができる
☑ 街中に多言語看板などを設置すると便利さと引き換えに旅情を失う
☑ インバウンド施策には反対ではない。要は役割分担
☑ PRは行政に任せて自分たちは(国籍関係なく)来られた方に喜んでいただけるようなまちづくりをしっかりとする
☑ そもそもマーケットはまだ圧倒的に日本人が多い
☑ 日本人を差し置いてインバウンドに傾倒すると必ず痛いしっぺ返しがくる

と言う話を(タバコタイムなどで)しょっちゅうされていました。

2016年ごろからこんな事言っている人は角の周りでは周藤さんだけでした。あと、星野リゾートの星野社長が似たような事を言っておられるのを動画で見ました。


どの意見が正しいのかはわかりません…


しかし事業の予算がついております。

そうなると

『温泉街の中に多言語化の看板を設置しよう!』

『外国人に優しいまちづくりをしよう!』

という意見が大多数となります。

※周藤さんは旅情を失うので異国語がたくさん書かれた看板にはあまり乗り気ではありません。


んんーー

どうしようかなぁ… と悩んでいたら

アイデアは枯渇した角さんですが、神仕組みはまだ続くもんです♪

会員でもある地元銀行から紹介されていた関西の会社を思い出しました。

支部長にも先に話が通っていたので益々神仕組みの匂いがします。


その会社の名前は(株)PIJIN さん。


提案してきたのはQRトランスレーターというWEBサイトのサービスです。

これが…玉造温泉にピッタリの多言語化看板でした!

〔QRトランスレーターとは〕QRコードから多言語翻訳サイトへログインしていただくWEBサービス。つまり、温泉街の看板に異国語をたくさん書かなくてもOK! なぜなら、説明文はすべてサイト内で翻訳をするから:角ざっくり説明

さらにざっくり図解
  ⇓

おせっかいおしゃべり看板

温泉街にQRコード付きの看板を設置して
   ⇓

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スマホで読み取ると・・・
  ⇓

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▲スマホの中で自国語に翻訳して見れる便利サイト。

言語選択ができるのでどちらの国の方でも安心!

しかもサイト内なら何千文字で説明できる。←温泉街に異国語を表記しなくてすむ。


やはり神様のお導き!

ということで周藤さんに相談をしたところ、

周藤さん「おお!これならえだねか!(いいじゃないか)」

とOKをいただきました。


景観を重視

さて

玉造温泉街で外国人に説明が必要なスポットをリストアップしましたら…

絞って絞って9カ所となりました。

しかし

9カ所もサイトページと看板を作るとなると予算が足りません…

倍額必要となります…

※予算は80万円⇒見積は150万円。


でも、この9カ所はもう削れないよなぁ


と、まあ悩んでいたら…

また神仕組みが始まります!

松江市の担当者からホントにたまたまメールが来たので開くと…

観光庁の助成金の情報提供でした!


しかもこのメニューには、

「外国人観光客に対する案内看板の助成金」があります!

まさにドンピシャ! 

半額も助成いただけます!

ということは丁度になるじゃん!

「おお…神様もGO!を出しているんですね」

ということで松江市のM係長に助けていただき助成金も無事採択されました。


これでお金の心配は無くなりました。

 

さて、QRコードの良いところといえば
看板への外国語表記を最小限に抑えられるところです。…

とはいうものの、玉造温泉の看板といえば第29話で紹介したアレです。

布野さんが面白い看板をたくさん作ってくれました。

看板のテイストは統一したい…

うーーーん…

色々と悩んでいる時にはいつものように神様のお導きがやってきます。

叶い石、そして面白い看板製作でもお世話になった山岡さんです。


山岡さん「角さんこんにちはー」

角「あ!山岡さん!丁度良かった!神!」

山岡さん「ど、どうされました?」


~QRトランスレーターの説明15分~


角「でね、温泉街のテイストを統一して作りたいんですよ」

山岡さん「あーー…なるほど。承知いたしました!」

彼も出来る男! 神仕組みメンバーの一人です。

ワクワクしながら待っておりました。


数日後、山岡さんから連絡が入ります。

山岡さん「試作品ができました!ちょっと見ていただけますか?」


提案されたデザインがこちらです⇓

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シンプル!


そして白ベースで木製のスッキリとしたデザインです。

角「おお!めっちゃいい! これは…なぜこんなに質感がいいの?」

山岡さん「実はコレ、文字のところをエッチングして(削って)いるんです」

山岡さん「こうすると文字のところに自然な木目が見えるんです」


はぁーーーー!!


なるほど!


文字を指でなぞってみたら…確かに彫ってあります!

雰囲気出てるなぁ!

これならツヤっとしたケミカル感もありません。

景観も守りながら多言語案内が出来ます!


山岡さん「これならいかがでしょう?」

角「ありがとう!」

ということで

2019年 11月

温泉街のスポット9カ所の説明看板を作っりました。

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そして実際の箇所に設置すると…

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▲足湯の説明に。


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▲おすそわけ茶屋にも。


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▲特に人気の美肌温泉テイクアウト。


なんともいい感じです。

それぞれのスポットを4か国語(英語、ハングル、繫体字、簡体字)で変換してみていただけるようにしました。


サイトはこちら


実際に設置をしてみると全く違和感がない。

統一感もあります。

9カ所もあるので、観光客も目にしてくれます。

なにより、日本語の説明もあるので日本人も使える!

看板のサイズもスマホを横にした程度です。←旅情も損なわない。

非常に良いものが出来たなぁと思っておりましたら…

最後に嬉しい連絡が入ります!

この助成金を担当された中国運輸局(観光庁)の女性からのお電話です。


担当「角さん。こんにちは」

角「あ!このたびは大変お世話になりました!」

以下担当

「実は、ちょっとご相談がありまして」

「この助成金事業は来年度も継続して行う予定でして」

「玉造温泉さんのこの看板がとても好事例と観光庁でも評価されまして」

「来年度の募集などの際に、好事例として紹介させていただけないでしょうか」

ということで

おそらく内部資料かな、と思いながらも

こうして評価いただけたことは嬉しく思います!


こうして周藤さんも納得の

温泉街の景観や旅情を守りつつ

日本人を含む観光客へのスマートなガイド看板ができました。


第34話へつづく


最後までご覧いただきありがとうございます!

このお話では、周藤さんのインバウンドへの考え方をお伝えしております。

地域で事情が違うので正解かどうかはわかりません。

ただ、全てにおいてしっかりとしたお考えを持っておられる事をお伝えできればと思っておりました。

また、支部長と対立をしているわけでもない事をどうかご理解くださいませ。

さて、次回34話は、周藤さんの花道というタイトルです。

どんなお話となるのでしょうか

お楽しみくださいませ

第34話 周藤さんの花道 はコチラから















ここまで読み進めていただきありがとうございます! こうして読んで、コメントをいただいたことが大変励みになります。もし皆様のなにか参考になれば嬉しく思います。 皆様からいただきましたサポート資金のおかげでこうして続けられます。そして次の方にもご覧いただける事ができました。感謝☆