家族よりも会っている
介護士をしていると、当たり前だが毎日職場の利用者さんと会う。
職場の職員とも会うが、お互いシフト勤務なので、毎日必ずいる利用者のほうが、圧倒的によく会う。
なんなら裸の姿も知っている。
トイレも付き添う。
この関係なんだろうね!?
と、昨日ふと思った。
昨日は介護支援専門員の研修で、「看取りに関する事例」というのをやっていた。
グループワークをやる中で、他の研修生と
「利用者って家族よりも会ってますよね」
という話になった。
本当にそうだ。
以前勤めていた施設で、毎日トイレ介助をしている利用者さんで、朝食後にいつもお通じのある人がいた。
私は便秘気味なので、「毎日出て羨ましいです」とよく話していた。
すると、その人から「今日出た?」と聞かれるようになった。「出てない」と答えると「糞づまり!!」と笑われた。便秘のそんな汚い言い方初めて聞いたので笑ってしまった。「出た」と答えると「うん」と反応が薄めだったのも面白かった。
こんな感じで、トイレ介助に付き添うたび、毎日の排便状況を報告し合う仲になった。
その人はある日てんかんの発作を起こし、入院した。入院に付き添ったのは私だ。「念のため入院」みたいな感じだったのだ。
病室で「バイバイ」と話した時はいつも通りだった。
10日くらいして、夜勤中の明け方、その人が亡くなったと入院先から連絡がきた。
院内でインフルエンザに感染し、亡くなってしまったというのだ。
福祉施設に入所しているとはいえ、まだまだ年齢的にも若い方だった。
あまりにあっけなかった。
今でも思い出すと悲しい。
急死が心残りなのは、しっかりお別れができなかった悔しさを残すからだろう。
毎日排便を報告し合う仲の人を私は失った。
今のパートナーとだってそんな報告し合わない。
介助を受ける―介助する という関係性だからこそ成り立った、極めて特殊な会話だっただろうとも思う。家族とも友達とも違う、けれどなんだか特別に親しい。
その暖かさは、他では味わえないものだった。
仕事だけれど、人間と人間の関わりはいつもそこにある。
ケアの中で生まれる関係性の醍醐味は、そこにあると思っている。
それを忘れずにいたいし、ずっと大切な思い出だ。
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