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設計者はワタシ~U邸家づくりルポ~

はじめに

こんにちは、まずは自己紹介です。
ワタシは、 一般財団法人住まいづくりナビセンターにて住まいに関わる相談をお受けしたり、セミナー講師をしたりと、公正中立な立場から住まいづくりのサポートをしている住まいのナビゲーター®の1人です。

本業は、設計事務所を営んでおり、住宅設計をしています。
ですから、実際の計画に関わるご相談については、経験からくるワタシ個人の見解や意見が混じってくることは否めません。一般的に正解と述べることができることは実は少ないのですが、この場合にはこちらのほうがきっと良いと思うご相談もしばしばあります。

さて。
これからしばらくの間、住まいづくりナビセンターのサポートプログラム「住まいの計画書づくり」を利用されて、その後、依頼先選びを通して、大切な依頼先としてワタシを選んでくださったU様の自邸=「U邸」の家づくりのレポートをUPしていきます。

設計者はワタシ

そもそも設計とは、どの素材をどんな形にしてどう組み合わせてどんな設備を組み込むかを決め、構造と機能と意匠(デザイン)を成り立たせるものです。設計図とはその説明書に過ぎません。
しかし、そこには設計者の静かで熱い想いが詰まっています。
また、一軒の住宅には要望・条件・予算・時間が複雑に絡まり合ってきます。
時に建築主と意見が食い違うこともあります(建築主が良しと言っているのに、すぐには良しとしない設計者が多いことが設計事務所の特徴一つです)が、それは自然なことだと考えています。

このレポートでは、一軒の住まいが出来上がるまでの過程と、その時々の設計者が考えたことをお伝えし、皆様に住まいづくりに興味を持っていただければ幸いと思っております(途中で終わらないよう頑張らなければ)。

●其の1 わくわく初回面談 の巻

U様からご連絡があり、依頼先の設計事務所として面談をさせていただきました。
U様が取り組まれた「住まいの計画書づくり」には、ご家族で取り組んでいただく「宿題」があるのですが、実にしっかりと取り組まれて順調に完了しました。当時は、ご夫婦とお嬢様の3人で賃貸のマンションにお住まいでいした。

住まいの計画書づくり

「住まいの計画書づくり」ではU様のお母様がお住まいの家の隣にご家族3人の住まいを建てる、という内容で進めさせていただきましたが、その後に計画が変更となり、別の土地にお母様との二世帯住宅を検討されることになりました。
 
計画書づくりにはお嬢様も参加されて、率直に意見が言い合える明るいご家族という印象でした。1日目、2日目それぞれ2時間ずつお話を伺う計画書づくりでは、実に多岐にわたるご要望が出てきますが、
・食事をはじめご家族一緒に過ごす時間はもちろん大切にされる一方で、家族それぞれが一人で過ごせる場所も欲しい。
・明るさ、光を大切にしたい。
・木の雰囲気は好き。和風が強すぎるのは好みではない。
・整理整頓ができる収納が備わっていること。
などが挙がり、ご家族の楽しそうな暮らしが想像できるような内容でした。

ふむふむ。
「明るく」「収納たくさん」は言われるまでもなく、ほとんどの建て主さんが口にされます。
「木の雰囲気」はワタシもとても好きですし、完璧な数寄屋建築をお願いしたいと言われたらちょっとたじろぐけれど、「和風が強過ぎない」は難しくない。
難しいのは「一人で過ごせる場所、も、欲しい」という部分。
しっかりと区切られている必要があるのか、どのくらいの広さがいるのか。この辺のニュアンス、住まいの中でのパブリックとプライベートの解釈のしかたで計画は大きく変わってきます。
 
さて面談ですが、二世帯をどのような形で考えるか、竣工までのおおまかなスケジュール、U 様世帯のご要望は計画書づくりの内容と変わっていないことなどお伺いして、計画を進めていくこととなりました。
南に道路がある細長い形をした40坪程度の土地とのことでしたが、細かなことはまだわかりません。
まずは現地を拝見し、敷地の図面をお預かりして法規制などチェックをした上で、もう一度面談をしてから、プランと模型を作ってプレゼンテーションまで行うお約束をいたしました。
 
ワタシは「住まいの計画書づくり」だけでなく、住まいのナビゲーターとして、時間内で出来得る限り細かく、ご自身の気付いていないご要望まで引き出すよう努めています。
しかし設計者としては、初めの時点ではあまり細部に及ぶヒアリングはしません。本当に大切なことだけお聞きして、あとは当方の提案内容を見ていただければと考えています。
建て主さんには、最初から設計者を要望で縛りすぎないことをおすすめします。要望には、かならず実現したいこと、予算次第では実現したいことがあり、よくよく考えていくと優先順位があります。かならず実現したいこと、どんな風に暮らしたいかだけバシッと伝え、あとは提案内容を見て説明を聞いてからでも遅くはありません。せっかくですのでちょっと泳がせてみてください。
 
さて、どんな敷地なのか、ご家族のご要望をどう形にしていくか、これからが楽しみです。

(その1 終わり)
執筆 住まいのナビゲーター/一級建築士 古屋英紀


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