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家族の中で老人が果たす役割

2世帯住宅について03

世界一の長寿国である日本が何も海外から学ぶ必要はないのかもしれませんが、日本と同様に長寿で有名なロシアのコーカサス地方では、「眺めのいい場所で暮らすこと」、「乳製品を多くとること」、そして「役割があり、尊敬されていること」が長生きの秘訣だと言われているそうです。

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コーカサス地方は、カスピ海と黒海の間に連なる高原地帯であるため、眺望の良さは折り紙付きですし、酪農が盛んなところなので乳製品の摂取量は当然多くなるのでしょう。

仮に、「眺めのいい場所」を「清々しさを味わう」ことだととらえれば、つまりはストレスの発散を意味しているという解釈もできるので、ストレスをためない生活を心掛ける方法を見つけておけば事足りるのかもしれません。

日本でも、食文化の違いはあるにせよ、乳製品に関しては、日本のマーケットには牛乳からヨーグルトまで豊富に揃っています。

「眺め」と「食」がどうにかクリアできたとしても、日本のお年寄りに役割があり、尊敬されているか、という問題は残ります。たとえば、昔ながらのスタイルを守り続けている日本の農家では、若い夫婦は田圃や畑に出掛けて力仕事を担い、老夫婦は軽作業に従事するという分業体制をとっています。

また、地域社会との助け合いが欠かせない農村部では、冠婚葬祭はもとより、納涼祭や収穫祭などといった行事が各家庭をつなぎ、鎮守棟の伝承話や祭りのお磯子などは、老人から若い世代へと受け継がれます。

こうした暮らしでは、お年寄りはむしろ不可欠な存在であり、あえて口にすることはないにしても尊敬され、お年寄りもそれを実感しているはずです。ところが、ほとんどの人がサラリーマンである都会の暮らしでは、家業と呼べるものがなくなってしまいました。

電化製品の発達で家事労働が軽減されたため、人手も最小限で済んでしまいます。時代の変化のスピードが増すばかりで対応するのも容易ではありません。毎日が忙しい働き盛りの世代では、時間がないと焦るばかりで仕事にも子育てにもゆとりが持てていないはずです。
そしてそういう時代だからこそ、お年寄りの役割が見直されるべきなのかもしれません。

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私たちは、まだまだ先輩たちから学ぶべきところがあり、それらを取り込む姿勢と仕組みがなければ、流行を追うばかりの軽薄な発展しかせず、この国の土台は一層もろくなるばかりでしょう。



【横山彰人建築設計事務所】

これまでに300以上の住宅を手掛け、富な実績を元に、本当に居心地のいい、家族が元気になる住まいをご提案します。noteでは住まいで役に立つトピックスを連載形式で公開します。