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【社会資源】精神科訪問看護

前回、前々回はデイケアについてお話ししました。
今回は、同じ医療保険の枠組みである「精神科訪問看護」について少しお話ししたいと思います。

地域生活の中で外来での診察と並行し、病院が必要に応じて処方(指示箋)できる社会資源として前回(【社会資源】シリーズ)ご紹介した「精神科デイケア」と共によくあがるのが、今回ご紹介する「精神科訪問看護」というものかもしれません。

デイケアは患者さん本人がデイケア施設へ通ってリハビリテーションの機会が提供されるものになりますが、訪問看護は名前の通り、看護師さん等が患者さんのご自宅に伺い、ご自宅で機会が提供される事業になります。

「訪問看護」と言うと、看護師さんだけのイメージもありますが、実際には作業療法士や精神保健福祉士などの職種も配置し、看護師さんと一緒に訪問看護を行う事業所もあります。

日本では、海外と比べて支援者が患者さんの生活している場所へ行き、一緒に問題を考えたりするような仕組みはまだまだ少なく、患者さんが外に出ていくことが求められるような仕組みが多いのが実情です。(徐々に増えてはきています)
そのような中では、訪問看護というのはこれまで病院や施設ではなく生活の場で利用できる資源として、これまでも現在も一定の役割を担ってきた資源だと思っています。


1.利用の対象になる方

  • 精神科や心療内科に通院しており、主治医から訪問看護の指示書が出ている方

  • 訪問看護事業所が訪問に行ける地域内に在住されている方

2.費用

  • 医療保険(自立支援医療)または介護保険で利用できます。

※自立支援医療の場合は、当然ながら上限額が反映されます。別途交通費を負担する必要がある場合がありますので、事業所に確認をしましょう。

3.やってくれること

  • 自宅に訪問し、体調(精神、身体)や病状についての確認や不安なことについて相談、助言

  • 服薬管理についてご本人が続けられる方法を生活に即して考えたり、確認をします

  • 日常生活上の困りごとの相談

  • ご家族に対しての支援

  • 必要な看護、リハビリテーション

  • その方の生活が続けられるように、通院先や利用される方が繋がっている支援機関の支援者と必要に応じ連携する

4.導入のタイミング(調整役である私個人の体験であり全てではありません)

利用のきっかけは、様々。
ご本人が希望される場合もあれば、ご家族が希望される場合もあります。あるいは通院先の先生や、ご本人の生活を知る支援者が治療と生活継続の補助としてご本人やご家族に勧めることもあるでしょう。

「わたしはどんな時に調整してきただろうか?」
と振り返ってみると、

1番多かったタイミングは、退院後の生活環境を調整する時が最も挙げられます。
精神疾患の予後の特徴として仮に入院治療によって入院前の状態を脱しても生活を送るだけのエネルギーを回復する(リハビリテーション期)には時間を要すため、退院時はまだエネルギーが十分でないということがあります。
つまり、元の生活に近い生活をいきなり送れるようになることは難しい場合があります。ご本人としては入院して退院したけど元気だった時のご自身とのギャップもあり辛い時期です。周りの方も、同様かもしれません。

入院が精神科治療のスタートだった場合には、退院し、住んでいる場所や仕事、家族の中の役割(以下の文上は「環境」と呼びます)等の中で病気や障害と付き合いながら生活するということは、ある種の人生初体験という方もいらっしゃいます。それは、きっと未知なる世界であり、不安がいっぱいなんじゃないかとわたしは思います。

また、「入院」という手段によって、見方を変えると、自分が生きてきた生活環境から一時離脱していたと捉えることもできます。一つはっきりしていることは、その環境の中で少なからず体調を崩されたということです。その点に対しては入院環境の中では実態が見えない部分も多く、出たとこ勝負というところも多少あります。

そこに、”実際に生活する場面に訪問してくれる人”をつくることで、もしかしたら、再発を予防したり、元気で暮らしていくためのヒントを、専門職の視点から見つけられるかもしれません。

そんな時、病気と障害特性、生活と幅広い視点でその方の生活を見守ってくれる訪問看護さんの活用を提案していました。

別の側面では外来通院では、おそらく入院環境よりも先生とのコミュニケーション(自分のことを上手く伝えられるか)が大変になる場合があります。
適切な治療を受けるには自分の状態や生活での課題を、入院の時以上に先生に伝える力が必要になります。
それらの助けになるのではと見える時にも、提案をさせて頂いていました。

生活自体の環境が大きく変わる時も勧めさせていただくことが多いタイミングの一つです。
実家から出て初めて1人暮らしを始めたとか。
ご家族が体調を崩されて、今までのようなサポートを得ることが難しくなった。
定期外来の頻度が減ることになり、以前より受診に行けなくなる代わりに、訪問看護に来てもらいたい、など。
環境が変わる時も、一つのタイミングではあります。

5.注意するところ

訪問看護に限ったことではなく、人が関わる社会資源全般に少なからずあるものですが、人と人が接するものなので、相性の合う合わない等問題は時にあるかもしれません。特に訪問看護の場合は特定の職員との関わりになりがちです。
デイケアなどであれば、職員も複数いますので、いい意味で使い分けてもらうことができますが、訪問看護では自宅で基本的には決まった支援者との定期的な付き合いになってきます。
そう言った点では、不安もあるかもしれませんが、最初はどんなものも使う中でフィットする部分、しない部分は少なからずあるものです。フィットしない部分が出てきた時は皆で話し合いながら調整していけたらと思います。

それを訪問看護に来ている職員には直接言うことは抵抗もあると思います。
訪問看護は制度上、主治医の指示銭で行っているので先生にも相談しづらいかもしれません。
そんな時は、病院の医療相談室や他に関わりのある支援者で話しやすい人がいれば、話してほしいと思います。
わたしが医療相談室に在籍した時にどのくらいできていたかは分かりませんが、そういう時に「整理してくれる」「話を聞いてくれるんじゃないか」と患者さんの頭に浮かんでくれたら良いなと思いながら、実際に患者さんにお会いし、調整する過程でのやりとりを大事にしていました。

また、単純に人ととの付き合いが苦手な方にとっては、どんな相手であれ最初は緊張したりしてしまうこともあると思います。
訪問看護は定期的に主治医が指示書を書き続けるものです。

必要性も適宜相談できるタイミングがあることを知っておいてください。


最後に、、、

わたしが出会ってきた訪問看護さんは、熱心な方が多かったです。
その思いが、上手く利用者さんに届かず、悩まれている方もいました。利用者さんの生活や健康を守りたいといった気持ちが聴こえてくる方が多かったです。
病院のソーシャルワーカーの立場で病院に勤務していた頃は、退院をして地域で生活をされると患者さんとの接点は減ります。
ふとした時に、「そういえば入院の時に担当させていただいてた○○さんはどうしているかな?元気かな」と思い出すものです。

そんな時に訪問看護さんなどから、患者さんが頑張っていることやちょっとした変化を教えてもらうとわたしも力づけられましたし、困っている状況を聞くと自分には何ができるだろうか?と思わせてもらっていたので、とても心強い味方です。

訪問看護は今現在に、ご自身では問題はないよというタイミングで勧められることもあるかもしれませんし、勧めている方も今問題があるからと言う理由ではなく、再発予防的な意味合いで勧める場合もあると思います。
そして、その裏には紹介している支援者がこれまで色々な患者さんと関わらせていただいた中で体験的に実感してきたものが根拠となっていることもあります。

訪問看護に限らず、どんな資源も万人に当てはまる資源はないでしょう。

でも、「何故勧めてくるのか?」
聞く耳を一旦ひらいて聞いてみて、その上で検討されたら良いと思いますし、そんな風に関わりを築けたら嬉しく思います。

制度を知っておくことで、その時は選ばなくても、その後生活を送る中で何かが生じた時、「そういえば、前にこんな制度を紹介されたっけな?」と、再び自分の選択肢として浮上できるかもしれませんから。



今回のお話は以上となります。
拙い説明ですみません。
お読みいただきありがとうございました。

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