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小説

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#短編小説

モンブラン

モンブラン

 母がモンブランを買ってきた。近所にある、昔ながらのケーキ屋さんの期間限定の商品らしい。
 「絞り口の形からこだわったみたいよ。緒方さんが言ってたの」
 緒方さんはケーキ屋さんの店主だ。大きな手が特徴的な女性。彼女の手から生まれるケーキはかわいらしい味がする。彼女が笑顔で絞り口について語ったことは容易に想像ができる。彼女はケーキがとにかく好きなのだ。
 「もちろん、クリームにもこだわってるって。美

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クッキー

クッキー

「クッキーってどうやって作んの?」
3時ではなく、4時のおやつ中に彼はきいた。
「んー。邪道だけど、一番簡単なのはホットケーキミックスに砂糖と卵とバター入れて混ぜて焼く、かなあ」
「つまり、糖にタンパク質に」
「炭水化物」
「カロリー高そうだなあ」
「おほほ。高いですわよ。箱の裏参照」
彼はクッキーを口にくわえたまま(お行儀が悪い)、クッキーの箱を裏返して表示をまじまじと読み始めた。
「げっ、高え

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海

 35歳の会社員と18歳の女子高生は海にいました。
 雪が降るほど寒いのに。現に女子高生の手はかじかんで、真っ赤になっています。
 女子高生は今話題のロックバンドの話をしました。会社員は楽しそうにそれを聞きました。会社員はジャズの起源についての話をしました。女子高生は興味深そうにそれを聞きました。
 二人はお互いのないものを持っているようでした。
 女子高生は強くて冷たい風を物ともせず、防波堤の

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姉弟

姉弟

「お姉もついに人の女かあ……」
「人の女って……人の女だよ」
神妙な顔をして縁側に座っていた弟の隣に座った。
「僕のランドセル、ワインレッドだったじゃん?で、お姉は緑でさ。すごいよね。姉弟揃ってマイノリティ」
「自分で選んだのよね。そのくせに悠木はいじめられてるんだもん」
「でもお姉が助けてくれるから好きなの選んじゃった」
当時、私よりはるかに小柄だった悠木はいじめの恰好の餌食となってしまった。

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芹沢くん

芹沢くん

「芹沢くんはとても誠実だね」
私は、芹沢くんにそう伝えた。
「そうかなあ」
それを聞いた芹沢くんは、実に困った顔をした。
「みんなおじじ先生の標本の片付けって逃げるのに、芹沢くんは逃げない」
「それは田代さんも一緒じゃないか」
確かに。
それは私も一緒だ。だからこうして今私達は二人でおじじ先生の標本の片付けをしている。
「私はおじじ先生といるのが楽しいから」
「確かに楽しい」
「それにしても、芹沢

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