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白雪姫殺人事件と5年前にであいたかった#読書感想文

嬉しい事に最近は読書の波が来ているため、ぽんぽん読書感想文が書けます。

湊かなえさんの本はこれで2冊目ですが、湊かなえさんの作風が大分掴めたような気がします。

前回読んだ「告白」と同じように、今回の「白雪姫殺人事件」も全編を通して登場人物の独白で進むという、他の作家さんでは見られない手法をとっています。

好き嫌いが分かれそうですが、個人的には今回のテーマとこの手法かなり相性が良いように思えました。


今回のテーマは「口コミ」と「ゴシップ」であり、片田舎で起こった事件をフリーのライターが取材をして、事件の詳細を追いかける体だけをとっています。

なぜ、体をとっていると表現したかというと、取材をするライターが一切事件の本質を見抜く意思がなく、週刊誌のゴシップになるような情報しか集めないからです。

しかも、この小説の面白いところが、全編を通して事件の口コミと週刊誌のゴシップ記事でしか、事件の詳細を把握できません。

したがって小説を読む方としては、

「この情報嘘っぽいなー」

「いや、これ誇張してるでしょ」

「途中の週刊誌の内容さっきの口コミと情報違うし」

と、どの情報があっているか分からず、普通のミステリー小説の様に、小説を読み進めても核心に近づいているのか、それともミスリードなのか分からないのです。


一応記者が取材しているため、この口コミの告白部分は会話を行っている風にはなっていますが、先ほども紹介した様に独白であり、記者の言葉が入っていない事も真相が分かりにくい点の一つです。

ミステリーとしても、最後の犯人発見後の新聞記事が出るまで、誰が真犯人か分からず面白かったですし、

SNSや口コミの誇張表現が、マスコミによって偏向報道される怖さも伝わってきたため、非常に良い作品だと思いました。


ただ、一つ残念な事は私が読むタイミングが遅かった事です。

正直に言うと、マスコミの偏向報道はこの2〜3年大きく取り上げられ、様々な媒体で提示され続けているため、目新しい感じはしませんでした。

また、ゴシップ好きな登場人物が誇張表現をする事自体も、それ程真新しい感じとは思えませんでした。

もちろん、これは本自体が悪いのではなく、私の問題です。

しかし、白雪姫殺人事件の文庫が発売した2014年であれば、もっと素直な気持ちでこの作品を楽しめたと思うと、かなり悔しい思いが残ります。


小説を100%楽しむ為には、読むタイミングも大切だなと、ひしひしに感じさせられました。


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