8週目。ソテー、グリル、ローストの違い
ソテー、グリル、ローストの違いは何か?と聞かれて、ぱっと答えられるだろうか?
私は答えられない。答えられなかった。
8週目のテーマは、「焼く」。「最初は肉を焼いてみます。何も特殊なことはいたしません。ただ、焼くだけです。余計なことをせずにフライパンでただ焼くだけで、肉は美味しくなります。」シンプルな文章と調理法、余計なものがないことに、心惹かれる。
8週目を過ごしながら、また並行して本を読んでいる。中公文庫の、「料理の四面体」玉村 豊男さんの書かれた本。5年前ぐらいに知り合いにおすすめされて購入していたのだが、当時は料理への関心も薄く、少し読んでそのままになっていた本。Kindleのライブラリを眺めていたら、久しぶりに再開。いいタイミングだと思い、読み始めたら、案の定ハマってしまった。
冒頭の問いは、「料理の四面体」の「ローストビーフの原理」という章から生まれた問いかけ。実際に本の中で問いかけられているわけではなく、読んでいる中で自分に問いかけた、問い。
章の中では、ローストビーフの作り方から、欧米でのオーブンの位置付けについて話が展開され、昔の、ローストービーフを作るために必要な道具が、野外のたき火であると語られる。火であぶる(焙る/炙る)のがローストであり、要はスルメをあぶるという意味でのあぶる、である。
「料理の四面体」はこの章以外でも、色々な国での調理方法や名称が、分解したり翻訳するとどう対応づけられるのかが語られている。
フランス料理、中華料理、和食、世界中で食べられている料理名がついているわけではない日常の料理。そもそも違うくくりのものとして認識していたものが、意外な多くの共通点と、もちろん違いを持っている。
人類が歴史の中でどんどんと移動し、交流し、生きるために工夫して食べ続けてきたこと。試せることや食材の範囲、気候に、地域による差異はあれど、地球という大きな大きな共通点の中で食べるということが営まれてきたこと。
それを考えるとバラバラな地点どうしの料理が多くの共通点をもっていることは、当たり前なことなのかも知れないが、実際に遠く感じていたよく知った料理と料理の共通点を知ると、あたたかい、わくわくした気持ちになる。
別のものだと思っていた二つが、線でつながり、面になる。面と面で、立体が作られていく。
実際に作ったステーキは、思わず笑みがこぼれる美味しさだった。気になっていたお肉の専門店で買ったランプを、ただ、焼いただけ。
美味しいお肉は、焼いただけでこんなに美味しいのか、なんて馬鹿みたいな単純なことを思って肉を頬張る。焦がしたりしなかったという意味では、私もこの出来栄えに関与できたんだろう。
「料理の四面体」では、正しいビーフ・ステーキとは、「フライパンも油脂も使わず、直接燃えさかる火にかざして焼いたものをいう。直火焼きである。(中略)これが本来”焼く”という言葉にふさわしい方法で、油脂を介在させるのは”炒める(ソテーする)”という方法である。」と書かれている。これが分類上?正しいのかは私にはわからないが、自分がステーキだと思って作って食べたものがステーキではない可能性に思いを馳せる。
ステーキであっても、ステーキでなくても、充分に美味しい料理。
ソテー、グリル、ローストの違いは何か?と聞かれて、ぱっと答えられるだろうか?
私は今でも答えられない。でも楽しく話せる内容は、少しずつ増えている。
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