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父から娘に「娘のトリセツ」が送られてきた

ポストを開けたら少し分厚い郵便物。宛名は父。


父が娘に「娘のトリセツ」を送ってきた。


父との思い出を振り返るとあまりいいエピソードは出てこない。


私は中学生という絶賛反抗期の中、親の離婚が原因で父子家庭になった。



今日は、父子家庭になってからの父との思い出を少しだけ振り返ってみる。




忘れもしないエピソードは、私が女子高校生だった頃。


バイト帰りの夜道で私はチカンにあった。



制服のスカートの下から、パンツを脱がされたのだ。笑




その後すぐに大声で叫んだことで、チカン野郎はこっちを見ながら逃げてった。



今思えばそれだけで済んで良かったと思うが、当時16歳程の私は震えが止まらず泣き叫んだ。



恐怖で足に力が入らない中、なんとか踏ん張り家に帰って父に泣きつく。



顔をぐしゃぐしゃにしながら、過呼吸になりながら、経緯を説明した。




そして父が重い口を開けて一言。




「警察には連絡したのか」



女子高校生の私が求めていた言葉とは全くかけ離れていた内容に衝撃が走ったのは、今でも覚えている。



「大丈夫か?」


「怖かったでしょ」


「そいつ許せないな」


こんな言葉が返ってくると思ったら大間違い。


涙が一気にひいた私は急に冷静になり

「連絡してない」と一言。




「次の被害者がでたら大変だから今すぐ警察に連絡しなさい」




私は立ち尽くした。



一気にチカン野郎への怒りから、父への怒りに変わる。



私の心配ではなくて、他の人の心配。。?



娘のことを想わないお父さんなんて、お父さんじゃない!



また涙が込み上げてきた。





父はこういう人間なのである。




今思えば父の言葉は勿論正論である。


ただ、女子高生の私にそんなことを考える頭などなかった。



もう1つエピソードをあげるとすると、私が中学生の頃。


私はセミが大の苦手だ。


今は克服しつつあるが、幼少期に私目掛けて飛んできたセミが顔にへばりついてきたあの瞬間からトラウマになっているのである。





とある夏の日。


家の玄関の扉にセミが止まっていた。



扉を開けるにはセミに接近しないといけない。


扉を開ける行為は、セミに刺激を与えることになる。


そうなるとこちらに飛びついてくる確率はかなり高い。



私は絶賛セミ恐怖症。



すがるような気持ちで父に連絡をし、扉を開けて欲しいとお願いをする。




「セミは人間のが怖いよ」




ツー...ツー...ツー...
電話を切られた。




、、、、!!!!!
そのくらいいいじゃん!!!!!


父はこういう人間なのである。



それから1時間ほどセミが玄関からいなくなるのをじっと待っていたあの日のことを未だに忘れない。


2つのエピソードを聞いて、
そんなことで。と感じる人は大勢いると思う。



ただ、そんなことだけで娘は根に持つ。



そして今はもういい大人である娘は、10年以上前の話を大人気もなくインターネットという誰もが見れる場所に記している。



人間とは、残酷な生き物で悲しかった出来事の方が覚えている。



あれから月日が経ち、実家を離れ私は一人暮らしをはじめた。



そして数年。

ポストに父からの郵便物。


前触れもなく、「娘のトリセツ」が送られてきたのだ。


世の中の父は、娘と向き合うために取り扱い方法を考えながら接しているのだ。


私の父もそうだったのだろうか。






父から貰った「娘のトリセツ」を読んでいる間、何故だろうか。涙が止まらなかった。




理由は分からないが、父からの愛を感じたのだ。




ずるいと思う。
自分はこのようにあなたのことを考えているんだ。と、小説一冊で分かれと送ってきたのかもしれない。



しかも、「父のトリセツ」ではなく父が読む「娘のトリセツ」である。



娘が「娘のトリセツ」で、まんまと心を打たれ震わせ、愛を感じたのだ。



父がこの“トリセツ”でどう感じて欲しかったのかは分からない。自分のことをどう思われたかったのかも、分からない。



そして、その胸の内を私から聞くことは生涯絶対にないと言いきれる。



父が自分の気持ちを話す時も生涯ないだろう。



父子家庭で育ったが、「お父さんというものは何が正しいのか」尋ねられても言葉に詰まる。



私の父は理想像とはかけ離れていると思っていたが、振り返ると私の考えは正しかったのだろうか。




未だに整理してもしきれない。



考えても分からないのである。




ただ、揺るぎない事実として、娘のお父さんはこの世で1人。





今日、少し遅れた父の日を送ることだけは決めた。



父の日に参加するのは、人生で初めてである。



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