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「君たちはどう生きるか」 ネタバレ私感

感想をメモする練習をしている。
公開二日目に、「君たちはどう生きるか」を観た。
見ていない人は読まないでくださいね。


これから見るなら読んじゃダメですよ。

ちなみに私が見たのは、「盛岡中央劇場(通称:盛岡中劇)」という映画館。持ち込み自由で、割引サービスが豊富。私はレイトショーで見たので、週末なのに1100円で見れてしまった。お得すぎる。この映画は音楽映画も力を入れていたり、「午前10時の映画祭」を上映していたり。椅子も心地よいし、何かと愛用させてもらっている、好きな劇場。


で、見ずに読んじゃダメよ?


あらすじ書いちゃうからね?


 時代は戦時中。主人公の少年マヒトが、病院にいた母を火事で亡くす日のシーンから始まる。その後、父は母の妹である夏子と結婚し、子供をさずかる。家も東京を離れ、お屋敷に疎開する。大邸宅で、父は工場長?なのかえらい立場で、かなり裕福な家族であることがわかる。新しい学校、義理の母、面倒を見る老婦人たち。新しい環境の変化に対し、言葉にできない感情を行動にぶつけてしまうマヒトの元へ、アオサギが意味ありげに飛来し、挑発してくる。そのとき、義理の母・夏子が行方不明になり、マヒトは夏子を探しに不思議な塔へと誘われ、踏み出す……。

 ストーリーを説明するのは極めて難しい。だけど、映画の全編を通して、すべてにくまなく意味も理由も散りばめられていることはわかるし(それはどんな作品だって、そうなんだけど)、ひとつひとつ紐解いていけばいくらでも拡大するのだろう。とにかく前情報もなにもないので、声優が誰の役をやっていたのか、それすら役名が照らし合わされないエンドロールを見ながら、自分の頭を使って、記憶や感覚を頼りに手繰る映画なのだなとまざまざと感じる。

 私はかなりジブリに詳しくない人間だけれど、だけどこの映画の全編にわたって、過去の作品を思わせるシーンが随所にあることはわかった。この映画をもって大きな何かが回収されていくような感覚があって、それを宮崎駿は最後の作品として「君たちはどう生きるのか」と問いかけられているのだろう。

 終始、マヒトから感じる意志の強さが印象的に響く。マヒトには頼りなさを感じる場面がない。それは威厳を示して生きる父親の教育でもあり、戦時下である緊張感も相まって、誇り高く、毅然とした態度を終始つらぬいている。少年ならではのズルさや単純さもはらみながら、結局彼は自分の意志で全てを決め、「やれ」と言われ自分が使命感を感じたものはとにかくやってみる。目の前に提示されたものが違うと思えば、自分の理由を持ってしっかりと拒む。

 すごく話を単純化してしまうと、これはマヒトの見ている夢なのかな、と思った。火事で母を亡くしたその喪失と恐怖の記憶を塗り替えるための夢。最後にヒミが「私は火と仲良しだから、大丈夫よ」といったことを行って自分の世界へ戻っていく。それならばあの日病院で炎に包まれたとしても、苦しく焼け死ぬのではなく火をコントロールしてどこか違う世界へ楽々と向かう母を想像できるから。母の死に対するトラウマを払拭する象徴的なシーン。

 多分だけど、どのジブリ作品に思い入れがあるかどうかで、この映画は見方が変わってくるのだろうなと思う。私が一番熱心に見たジブリ映画は「となりのトトロ」で、今回の映画の中でも想起させられるシーンは多かった。

 私が小学一年生か年長さんくらいの頃、きっかけは覚えていないけれど、「人は死ぬ」という事実が猛烈に怖くなって、「お母さんも死んじゃうの?お父さんも?」ということが本当に怖くて眠れなくなったことがあった。トトロに登場するお母さんがどのくらいの病気の重さだったのか、結局お母さんは元気になったのか、それはわからない。だけど子供の中では「死んじゃうの?」という不安ばかりがむくむくと増幅する。だからこそとうもろこしを持って駆け出さずにはいられなかったし、そうできるメイちゃんを心のどこかで羨ましく思いながら追いかけるサツキだった。それを不思議な生き物であるネコバスやトトロ、説明しえないできごとが二人を包み込んで、救う。

 そういう意味で、この映画は、幼少期に抱いた漠然とした恐怖、あるいは身近な家族の病気や死と対峙したときえもいわれぬ不安を、人生の中でいつかこの映画を見て、「そういうことだったのか」と、理屈じゃなく直観として救うための映画なのでは、と私は今思っている。生と死の境界はとても曖昧で、どの部分を掬い取って解釈しても良い。そのくらいの自由さを持って、全ての意味を散りばめているのだろう。一回見たばかりの私が今掬い取れた部分はとても限られているけれど、それでも救われる何かがあった。

 あと、私はあの老婦人たちの張子人形が欲しい。可愛すぎて途中身悶えてしまった。

 そして今気になっているのは、メインビジュアルの文字と、エンドロールの文字。どちらも手書き感の溢れるバランスのもの。これは一体誰が書いたものなのだろうなぁ。


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