やっぱり大事な、君は誰だ

 君のことを告白しようと思う。私は、君自身のことがあんまり好きじゃないかもしれない。と言っても深刻な問題では決してない。

 前から何となく思っていたのだが、やはりそうだと確信した。いや、君は悪くない。だって君は人気者だし、ひとの悪口を言ったりもしない。誰かをいじめることだってもちろんしない。なぜ嫌いにならなければならないのか。理由が分からなかったから、嫌いだと認めたくなかったみたいだ。

 君は水の中から外へと生まれてくる。君はいつも無口で、色白で、大人しい。とても柔らかいから、そっと扱わないと壊れてしまう。ああ、君はなんて繊細なんだ。君は一人でももちろん魅力的だけれど、誰かと一緒だともっとひかり輝く。誰かの色に染まっても君は不思議と色あせないどころか、魅力がうんと増す。私はそんな君のことが好きだ。
 君に会いたくなったら会いに行くんだけど、君を探すことは難しい事じゃない。すごい昔は君の方から近くまで来てくれていたね。っていっても私も知らない昔の事だけども。昨日もね、どっちの君が良いものかしばらく悩んだよ。悩んで、いつもの君を選んだんだ。高級感が感じられる繊細な君ももちろん素敵なんだけど、でもお持ち帰りしてからのことを考えると庶民的な君がやっぱりしっくりくるんだ。

 君の実力が最大限に発揮されるのは3,4日というところだろうか。決して自分で何かをするわけではないのにね、君は動けないから。君の顔は四角いと言われるね、いや、今や丸にも紐状にもなることが出来るけれど、君の形は君が決めない。しかも、顔以外何もない。あ、ガンダムにも変身したんだったね、君は。でもやっぱり君の顔は四角が良いよ。

 そして君を大切にしまったよ、冷蔵庫に。腐らないように。そうそう、君は冷凍保存も出来るんだってね。食感が変わると聞いたから、今度試してみようかな。

 ねえ、私は君をそのまま食べると、味が淡泊で食べた気がしない割におなかが膨れるんだ。もっとおいしいものでおなかを満たしたいな、って思ってしまった。でもね、君はお料理に使うととってもおいしい。麻婆とか、お味噌汁とか、サラダにして野菜やドレッシングと一緒でもおいしいよね。この前はサバ味噌缶とキュウリとミョウガとかの薬味とごまと混ぜたらすごくおいしかったよ。君が味の調節をしてくれたおかげなんだ、ありがとう。
 
 

 ね、お豆腐さん。これからもよろしくね。

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