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映画『るにん』どこにも行けない

あらすじ

江戸・吉原に火を付けた罪で、八丈島へと島流しにされた花魁の豊菊。食糧不足のその島で、いつの日か再び江戸へ帰ることを夢見ながら、彼女は男たちに体を売って生き延びる。そんなある日、博打の罪で島に送られてきた喜三郎は、心身共に消耗した豊菊を江戸に返すと約束し、潮の流れを観察するようになる。

監督:奥田瑛二
キャスト:松坂慶子、西島千博


八丈島の残酷物語。

どこにも行けない憂鬱な日曜の夜と罪人たちの気持ちがリンクした。

島の暮らしは過酷で退屈。

ここで一生を過ごすのは耐え難い。

みんなどこかへ逃げたいが、島から脱出しようとした者は、見せしめの「ぶっころがし」で死罪になる。

大阪に住む前、僕は千葉に仮住まいしていて、そこからまた放浪する時に、2週間ほど八丈島に滞在した。

キャンプ場にテントを張って、島を自転車で一周する。

八丈島富士と三原山に登り、天然の露天風呂に入って滝を眺め、八丈島にしかいないキョンを見物したらもうやる事がなくなってしまった。

新鮮な気持ちで居れたのは賞味3日くらいだろうか?

島の人と交流を持つほどのコミュニケーション意欲もないから、残りはほとんどキャンプ場に引きこもり、喜八郎のように海を眺めてボーッとした毎日を過ごした。

映画の島人たちは孤独や退屈が限界を迎えると、人肌を求めて流刑にされた吉原の女たちを慰み物にする。

貧しい暮らしの中から自分が出せる僅かな貢ぎ物で女たちと身体を交え、終わりなき日常を耐え忍ぶ。

この過酷な島の暮らしから脱出する方法は2つ。

恩赦と抜け舟。

流人たちはまず恩赦に期待して、自分の将来に微かな希望を持つ。

そしてその希望が潰えた時、島に骨を埋める覚悟をするか、ほぼ成功の見込みがない抜け舟が頭を掠める。

僕は八丈島の罪人ではないのに、なぜか毎日罪人たちと同じ気分でいる。

グローバルな時代にあってどこにでも行ける状態なのに、どこへも行けない訳のわからない閉塞感を抱えて生きている。

僕が日本で期待しているベーシックインカムと安楽死制度は罪人たちにとっての恩赦のようなものであり、それがダメなら閉塞感を抱えたまま終わりなき日常を生きるしかない。

抜け舟のような方法として何があるか?

そんな事を考えても犯罪的な方法しか思い付かなかった。

そして悶々と迎えた月曜日の朝にこの記事を書いている。

従属的で退屈な終わりなき日常を今日も生きなければいけない。


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