見出し画像

死霊館 2013年アメリカ

死霊館

Amazon プライムに「死霊館」と名のつくホラー映画が何本かありました。
どれが怖そうかと選ぶよりも、こういう場合はまずシリーズの1本目から見るのが常道。
大抵の場合は、1作目が一番怖いことになっています。
とにかく、ホラー映画はそこそこ当たれば、シリーズものになることが多いジャンル。
そりゃそうです。
ホラー映画の多くは、観客の「怖いもの見たさ」という本能的な映画鑑賞モチベーションを当て込んで、ビッグ・スターを使うことなく、大抵の場合低予算で撮られます。
それでも、そこそこ当たれば、元々製作費が安いわけですから、製作費回収率もよく、また外した場合でもリスクはそれほど大きくないという訳で、監督にしても、キャストにしても、多くの場合は新人の登竜門とされることが多いわけです。
そして、当たれば二匹目のドジョウを狙うのが常道で、そこそこヒットしたホラー映画は大抵シリーズ化されます。
新しい企画でコケるよりも、一作目のヒットに乗っかって、多少新鮮味は薄れても、同じ路線で稼げるまでは稼ごうという、完全な制作側の金勘定事情ですね。
「13日の金曜日」、「エルム街の悪夢」、「死霊のはらわた」、「チャイルド・プレイ」などなど、シリーズ化になっていったホラー映画の例を挙げれば、枚挙にいとまがありません。
全部が全部とは言いませんが、一作目を超えるパート2、パート3には、この分野では滅多なことではお目にかかれません。
それでも、マニア気質というのはありがたいもので、一線を超えた熱量を持ったファンたちに気に入られると、そのシリーズは、よほどのクゥオリティの劣化がない限りは、惚観客たちからはそう簡単に見捨てられることはありません。
多くの人が飽きてしまっても、自分はまだこのシリーズを愛するということが、偏愛マニアのモチベーションをくすぐったりもするわけです。
これもまた、このホラー映画というジャンルの大きなストロング・ポイントでしょう。
自分のやや偏った思い入れでも、それにとことん固執し発信すれば、ネットのどこかでは、それに対するシンパシーを獲得できて、繋がれるというオタクネット文化が、これに大きく貢献していることは言うまでもありません。
今や、ネット上では、相当マニアックの視点でも臆することなく動画発言をしているYouTuber たちは数知れず。
ある意味では、そんな熱心な彼らに支えられて、僕が浴びるように映画を見ていた昭和の頃よりも、今のファンたちのホラー映画リテラシーの水準は、かなり上がっているのだろうと推測されます。
そして、そんなうるさ方の目にも耐えうるホラー映画を、期待を裏切らずに送り出し続けてきたホラー・マエストロが、本作の監督は、ジェームズ・ワンという人です。
ホラー映画制作のセオリーに則って、この監督が世に生み出したホラー・シリーズは既に3つ。

この監督の出世作は、あの「ソウ」シリーズでした。
シチュエーション・ホラーともいうべき、斬新な設定が度肝を抜いた映画シリーズでした。
このシリーズが、監督が変わっても粛々と作り続けられ、既に現段階で7本。
まだあります。
「インシディアス」シリーズもそうでした。
こちらも、監督は途中で変わっても続けられ、現段階で4本。
そして、この「死霊館」シリーズも、今年公開の「死霊館 悪魔のせいなら、無罪」まで、合わせて6本となります。
これは文句はないでしょう。
あえて、「ホラー映画シリーズ化」の達人と言わせてもらいましょう。

そして、この腕を見込まれて、最近では、「アクアマン」などの、超大作も任されるようになってきているんですね。
但し、個人的希望を語らせて貰えば、ジェームズ・ワン監督におかれましては、妙な欲を出して大巨匠への道など歩もうとなさらずに、とことんホラー映画の職人にこだわって欲しいところ。
とにかく、怖がらせ方のツボは充分理解している監督です。
餅は餅屋ではありませんが、下手にスイーツやフルコースなどには手を出さずに、スリル&サスペンスにこだわったヒッチコック監督のように、自分の得意分野をとことん追求してもらいたいところです。
そのキャリアを見ていて、ちょっとかっこいいなと思うのは、最初の何作かを監督したら、その後はプロデュースに回って、若手の監督に委ねてしまう彼のスタイルですね。
そして、自分はどんどんと新しいシリーズに果敢に挑戦して、着実にモノにしているんですね。
とにかく、実績が挙げられれば、何を作っても天下無敵のこの世界。
ハリウッドでは、ジョン・ウー監督に続く、確実に稼げるアジア系監督としての評価を不動のものにしつつあります。

さて、本作は実話に基づいているとのこと。
実在する霊能者と霊能研究家の夫婦が過去に霊能体験した中で、最も恐ろしい出来事が映画化されているのだそうです。
家に取り憑いている邪悪な霊の存在を知らずに引っ越してきたペロン一家に、次々と襲い掛かる不可解な出来事。
家が呪われているという設定のホラー映画は、過去にも数多くありますね。
このジャンルの王道ではあります。
そして、映画のクライマックスには、「エクソシスト」でお馴染みの悪魔祓いの要素が加わり、映画の冒頭では、「チャイルド・プレイ」でお馴染みの人形プレイも登場。
「ポルダーガイスト」的味付けもあり、そこに「オーメン」や「サスペリア」も程よくブレンドしてあリます。
しっかりとホラー映画の歴史を踏まえつつも、最終的には観客を呼べる作品に仕上げている辺りは、ジェームズ・ワン監督の手腕がお見事ということでしょう。

この映画について、もっと知りたい方は「シリョウ館」へ。

この記事が参加している募集

#映画感想文

67,494件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?