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死霊館 エンフィールド事件 2016年アメリカ

死霊館 エンフィールド事件

引き続いて、前作「死霊館」の続編を鑑賞しました。
実存する霊能力者夫婦と、実際にあったポルダーガイスト事件の実話を基にした映画化です。
主要キャストは前作からそのまま引き継がれ、監督も同じくジェームズ・ワンが当たっています。
前作のブログで、ホラー・ジャンルで、一作目を超える出来の二作目はほぼ皆無と力説してしまいましたが、なんのなんの。
本作は、ちょっと前言撤回と、平身低頭したくなるくらいのクゥオリティの続編でした。
お見事。
やはり、ジェームズ・ワンという監督は、このジャンルにおいては、ちょっとタダモノではなさそうです。
少なくとも、個人的には、前作と比べる限り、本作の方に軍配をあげたくなります。
まずは、なんと言っても冒頭のカメラワークが秀逸。
決して、恐怖シーンではない、イントロの状況解説シーンにおいても、本作のキャメラは、まるでカメラ自体が意志を持って動いているかのように、窓枠をすり抜け、テーブルを潜ったりして、自在に動き回ります。
まるで、鑑賞しているこちらの視線の持って行き所を、ちゃんとわかっているとでもいうような流麗なカメラワークは、まるでカメラ自身に意志があるようです。
昔見た「Uボート」という映画で、潜水艦の狭い艦内を、自在に動き回るステディ・カムの映像にもビックリさせられましたが、本作のカメラは、とても人間が通れないような軌道で動き回るので、それがまずは圧巻。
それに加え、カット割りなしのズームイン、ズームアウトで、場面変換や時間経過を見せてしまうトリック撮影にも感心してしまいました。
こういう小技が、随所でピリリと効いていて、飽きさせません。
そして、これがクライマックスの恐怖演出にも、次第に効果を発揮していくというわけです。
ホラー映画において、カメラが意味ありげに動こうとすると、見ている方は、それだけで構えます。
僕のようなマニアになれば、むむっ、そんなミスリードに引っかかってなるものかと、少し引いて画面の全方位にアンテナを張って、次のショック予想しようとしてしまいますが、どっちにせよ結果は同じこと。
その場面の緊張感にまんまと乗せられているわけです。
ホラー映画においては、こういったシーンの緩急を自在に操って観客を引き込むセンスはものを言います。
ヒッチコックは、この辺りの演出が憎いほど上手でしたが、ジェームズ・ワン監督もなかなかのもの。
そして、ドラマツルギーにおいても、本作のクライマックスへの持って行き方は、前作を凌いでいました。
一連のポルダーガイスト現象が、少女の自作自演だったという映像をテレビクルーに見せておいて、検証チームを解散させておいてから、実はそれも悪魔の仕業だったとやるわけです。
もちろん、主人公の二人はそれに気がついて現場に戻ってくるのですが、それにこの夫婦の予知夢に伏線を張った悪魔の正体と愛情物語を絡めて、クライマックスのカタルシスのグッと盛り上げていました。
最近の映画には疎いので、クラシックな映画ファンから見れば、前作同様知っている俳優が誰もいないキャスティンクではありますが、それは、優れた演出さえあれば、ホラー映画では全く問題にはなりません。
むしろ、そんなキャスティングによる先入観が入ってしまう分邪魔になるだけ。
まして、本作のような実話をもとにしたドキュメンタリー・ホラーならなおさらです。
実話が元になっている本作ではありますが、それでも映画は映画。
もちろん、こちらも、事実よりは恐怖を盛っているだろうという目で見てはいますが、映画的には十分盛り上げてくれた後の、エンドロールで、実際のエンフィールド事件におけるポルダーガイストの記録を画像と音声で紹介するという演出も効いていました。(前作もそうだったかも?)
最後の最後まで、何かと怖がらせてくれるジェームズ・ワン演出には、やはり次は何をやるのかと期待させられてしまうわけです。

ああ、怖かった。

ところで、今更なんですが、ポルダーガイスト現象って、本当にあるの?

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