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読書ノート

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本屋の息子なので、読書は今でも道楽の王道。 iPad のヘビー・ユーザーなので、僕のスタイルは、すべての本を裁断して、電子書籍化。 いつでもどこでも、マイiPad をスワイプしな…
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2021年3月の記事一覧

日本橋 泉鏡花

日本橋 泉鏡花

いやあ、難儀しました。

どうしても、ビジュアルのイメージが掴めずに、不明な単語を一つずつ検索していたのですが、埒があかないので、本書オリジナル版装丁の小村雪岱画伯の作品集などにも、寄り道したり、YouTubeにある市川崑監督の映画や(溝口健二版はフィルム現存せず)、坂東玉三郎の舞台の予告編を見たりして、イメージ補填をして、なんとか読み終わりました。

物語は、一人の男をめぐる、日本橋花柳界を舞台

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野口久光映画集成 ヨーロッパ名画座

野口久光映画集成 ヨーロッパ名画座

この方の描いた映画のポスターが好きで、部屋中のあちこちに貼りまくっています。

すでに、同名タイトルの本は一冊持っていたのですが、それは1984年度版。
川越市立図書館で、見つけた本書は、表紙は違いますし、中身も見たことのないポスターがチラホラある2000年度版。
早速借りてまいりました。

野口久光という方は、映画のプロデュースをしたり、音楽評論もやる方で、かなり文化的な方なのですが、戦前から戦

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小村雪岱作品集

小村雪岱作品集



久しぶりに、川越市立図書館に寄ってきました。
探しに行ったのはこの本。
目指す本ドンピシャリがあったので、借りてきました。

溝口健二の映画を見た流れで、「青空文庫」を探したら、彼の書いた、映画に関する短文があるのを見つけたんですね。
「日本趣味映画」というタイトルでしたが、これが書かれたのが、1929年でした。
ちょうど溝口が、「日本橋」という、泉鏡花原作の小説を映画化しようとしていた頃のエ

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地獄変 芥川龍之介

地獄変 芥川龍之介

地獄変

大正7年に書かれた芥川龍之介の短編小説です。
「中期」とカテゴライズされるこの時期の彼の作品を貫くテーマは「芸術至上主義」。
本作は、鎌倉時代に書かれた「宇治拾遺物語」の説話にヒントを得て、創作されたもの。
愛娘の焼かれる姿を見て、地獄変屏風を完成させた絵師良秀の物語です。

まず、芸術至上主義の定義を少々。

「芸術それ自身の価値が、真の芸術である限りにおいて、いかなる教訓的・道徳的・

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コットンが好き 高峰秀子

コットンが好き 高峰秀子

コットンが好き 高峰秀子

先日、「乱れる」を鑑賞した流れで、本書を手に取りました。
おっと、「手に取った」は正確ではありません。
iPad から引っ張り出してきたというのが正解。
昔、高峰秀子の主演作「浮雲」を見て、彼女の大ファンになり、その勢いで彼女の筆による「私の渡世日記 上下巻」を読んで、またまたその達者な文才に惚れてしまいました。
「天は二物を与えず」とは言いますが、彼女はその限りにあら

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茶の本 岡倉天心

茶の本 岡倉天心

1906年と言いますから、明治39年に発表された本です。
日露戦争で、大方の予想を覆して、日本が勝利したのが1904年のことでしたから、言ってみれば、欧米列強が、極東アジアの小国日本を、無視できなくなってきた頃に、岡倉天心によって書かれた本を翻訳したのが本書。
「翻訳」と書いたのは、実は本書は、元々英語で書かれた本でした。
“The Book of Tea” というのが原題です。
岡倉天心は、当時

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「資本論」「共産党宣言」カール・マルクス

「資本論」「共産党宣言」カール・マルクス

「資本論」「共産党宣言」 カール・マルクス

いやあ、やっぱり無理でした。
すいません。見栄を張りました。
せめて、タイトルだけでもと、ドカンと書かせてもらいましたが、読んだのは本書ではなく解説書。
それでも、何度も寝落ちを繰り返しながらなんとか読み切った次第。
疲れました。

前回、小林多喜二の「蟹工船」を読んだ流れで、チラッと開いてみたのですが、やはりマルクスの経済理論はあまりに崇高すぎて、無

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蟹工船 小林多喜二

蟹工船 小林多喜二

蟹工船 小林多喜二

1929年に執筆された、プロレタリアート文学の金字塔。

恥ずかしながら、読み始める前までに持っていた知識は、その程度でした。
本書の中に、こういう件があります。

毎年の例で、漁期が終わりそうになると、蟹缶詰の献上品を作ることになっていた。(中略)
「石ころでも入れておけ! かまうものか。」

献上品といえば、恐れ多くも天皇陛下に差し出す品物です。それに「石ころでも」とやっ

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