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「物事が変わるのは一瞬」で思い起こすもの。

猛威を奮いまくっている新型コロナとは適切な距離を取りつつ付き合うことが自然になりつつあった9月のある日。新日本プロレスを観るために仙台サンプラザの3階席に僕はいた。
興行も6月から再開し、海外選手の参戦はもちろんなかったものの、リング上の闘いは相変わらず熱くそして活気がみなぎるもので、久しぶりに観る生のプロレスを第1試合からメインまで堪能した。

内藤哲也、飯伏幸太、オカダカズチカ、棚橋弘至に高橋ヒロム…多くのスター選手が出てくる中、今日のお目当ての選手が第2試合で入場してきた。
ロープを跨ぎ、赤のコーナーポストに登り、見栄を切る。腰に巻いたベルトは彼にとっては最初の勲章で、立ち姿は以前見た時よりも頼もしく力強く見える。その光景に僕は少し嬉しくなった。
彼の名をYOSHI-HASHIという。

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彼はオカダカズチカとほぼ同時期に海外遠征に出て、凱旋時期も同じだったのだが、凱旋後スター街道をひた走っていたオカダとは対照的に前座を務めることが多く、せっかくタイトルマッチの挑戦という浮上のチャンスを掴んでも、それをモノにできないという不遇な日々を過ごすことの多い選手だった。
しかし、そんな日々にもめげず、「物事が変わるのは一瞬」なんだと諦めることを辞めなかった彼が7月にNEVER無差別級6人タッグのチャンピオンになった。12年かけての初戴冠だ。その瞬間は会場のファンはもちろん、配信を見てた僕の胸を熱くさせた。
そして目の前で次期挑戦者であるオカダとやり合い、試合後にチャンピオンベルトを目の前に掲げる姿にとても興奮した。物事を変えた後の彼の今を観れて本当に良かったという満足感を得ながらその日は帰宅の途についた。

「物事が変わるのは一瞬」
そういえば、そのフレーズを聞くとYOSHI-HASHIとともに個人的にもう1人勝手に思い出す人がいる。彼女はアイドルだった。
思えば初めて彼女を観たのも5年前。2月の仙台サンプラザの3階席だった。遠くからでも映える彼女のパフォーマンスに僕は見惚れてしまった。
そこからは本当に早かった。動画サイトやメールサービスなどで情報を仕入れる日々がはじまったし、初めての握手会はとても緊張したのだけれど、あの笑顔が、「長い付き合いになりそうだ。」というヲタク特有の確信を得るのには充分だった。

だが、惹きつけて離さないパフォーマンスがあっても、愛嬌に溢れていて、人懐っこい笑顔に癒され、フランクな気分を味わえる握手会があっても人気のあるメンバーとはいえなかった。
熱烈なファンが多くても、規模はそんなに多いわけではなかったし、やっぱりファンの規模がモノを言う世界ではあるから致し方なしという面もあるのだが、それでも「なんとかならないものかね?」と感じたことも当時多々あったような気がする。

それでも不遇の中でも前向きで、総選挙でランクインしたいという野心を持っていた彼女の姿がどこかYOSHI-HASHIを連想させ、彼女の「物事が変わる一瞬」をみたいと思った。実際にフレーズを書いてもらったこともあった。(先頭の画像がそれです)
「何?この言葉?」と聞かれたけど、詳しい説明もすることなく、「好きな言葉なんだよねー」で当時は終わらせてしまった。戻れるならナンボでも説明するし、なんなら今からでも説明したい。

不遇、不遇だと勝手に思っていたが、少しずつ物事が変わっていく契機もあった。
2016年ソロコンでの極妻を彷彿される衣装と演技。演出で注目を浴びた。そして翌年のユニット対抗戦で日高優月とのコンビ「STRAWBERRY PUNCH」で優勝し、特典として特別公演を開催されることとなったこと。
そこで彼女の人となりやキャラクターがより浸透していく結果になったと今になれば思う。

それに加えて、以前まではSNSに及び腰で、携帯に縛られたくないと語っていた彼女があまりやってこなかったブログ更新を筆頭とする自分から発信をし続ける努力をはじめたこと。
そこには2017年の総選挙で81位という次点に終わったという本人にとって堪える結果を原動力に変えたものであり、次回こそ結果を手にするという強い意志を強く感じるものだった。

ファンの目には見えなかった努力の賜物が受ける評価と本人が力を入れて挑んだ目に見える努力の結果の結実が2018年。
第42位 内山命 25261票
「物事が変わる一瞬」だと、当時はっきりと脳裏に浮かんだことが今のことのように思い出せる。
壇上に登り、いつも通り、いやそれ以上の笑顔を浮かべているのだけども、そこにはランクインという自信が共についてきていて、これが長年の夢を叶えた表情なのかと感じながら、その姿を見ていた。

その歓喜に至った1年後に卒業してしまうというのはかなりの衝撃もあった。けども、自分の意志で腹いっぱいアイドルをやり切った上での卒業で一般人に戻っていくというのは彼女らしさも感じたし、素晴らしい決断だったのだなと今でも思っている。

「物事を変えた」2人に僕が学んだことは、変わるのは一瞬であるけど、変わるまでの日々は長く、先の見えないものである可能性はあるけども、「物事を変える」思いにブレてはいけないということ。
決して表には見せない中での努力や葛藤は絶対あるはずだし、表だけでの評価で実像が見えない意見が横行する世界。辛辣な意見に頭を抱える日もあったと思う。
それでもブレない日々の積み重ねの結果が、「物事を変えるのは一瞬」なのだろう。

一般人になった彼女は、今も新たな生活の中で底抜けの明るさと笑顔で誰かの心を明るくしているのだろうか。いや、多分しているのだろう。
再び交差することは絶対ない。けども彼女に惹きつけられ、心を明るくしてもらった身として、新しい生活が良いものであることをいつまでも願っている。幸あれと。

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