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知的障害がある弟にとってのお金のデザインを考える

ちゅうさんです。

私には3つ歳の離れた26歳の弟がいます。正社員として介護施設の清掃員スタッフをしており、毎日モリモリ働いています。

彼には、【知的障害】があります。両親を含め、家族では特に隠したりはしておらず、基本的にはオープンにしています。この記事を書くことにも、「身近に見てきたあなたが書くことに問題はないよ😉」と言われたくらいです。

ふと親と弟のお金の話になったのをきっかけに、知的障害のある弟にとってのお金のデザインとはなにかを考えてみます。

少しでもデザインのヒントや、視野が広がるきっかけになると幸いです。

弟の知的障害はどういったものか

まず知的障害とは?
論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、学校や経験での学習のように全般的な精神機能の支障によって特徴づけられる発達障害の一つです。発達期に発症し、概念的、社会的、実用的な領域における知的機能と適応機能両面の欠陥を含む障害のことです。
参考:e-ヘルスネット 知的障害(精神遅滞)

弟は療育手帳をもち、障害はB1の中度に分類されます。中度の知的障害だと、以下のような特徴があります。

中度の知的障害者では日常のコミュニケーションに問題はありませんが、複雑なものは制限を受けます。通常、社交的な表現や場の雰囲気を読んだり、社会的な場面での判断や意思決定については支援が必要です。
参考:at GP 大人になってから知的障害に?知的障害の特徴や原因など詳しく解説!

弟とはコミュニケーションがバリバリ取れますし、スマホも使えればプラモもゲームもできます。ただ知的レベルで言えば、13歳くらいから変わっていませんし、かといって一般的な13歳のようにいろいろ話せたり、何か出来たりはしません。

なんとなく処世術として空気を読むことは覚えましたが、突発的な出来事には対応できませんし、意思決定は基本的にできません。また時計の読み方は理解していますが、時間の概念はありません。

現在は1人で通勤もできていますが、親が何度も付き添い通勤という行動パターンを反復した結果です。覚えている場所と経路以外は単独移動は難しいです。

そして彼にはお金の概念がありません。

「お金の概念がない」ということを理解する

弟はお金の概念が恐らくありません。数字、それと購買という概念は持っているので、欲しいもの、やりたいこと(Suicaへのチャージなど)に表記されている数字(金額)に対し、自分の手持ちのお金から、数字に合うかそれ以上になるようにしています。

それはお金の概念を理解しているんじゃないの?

いいえ、違うと思います。彼は物事への価値という概念を持っていません。このサービスに払う金額が高いの安いのか。この商品の価値はいくらか。それがわからないのです。

そのためお金の管理は両親がしています。幸い「稼いだお金は自分のもの」ということはわかるので、不用意に人にあげるなど他人に悪用されることはまだありません。

もちろん知的障害のある人全員がそうではないと思います。ですが、お金の概念を持っていない人も、我々と同じように日々お金に触れている、という事実を理解しておくことは、インクルーシブなお金のデザインを考えるヒントになります。

彼にとってのお金のデザインを考えてみる

では彼にとって最良のお金のデザインはなんでしょう?

まず「お金の概念を理解させる金融教育サービス」は対象外になります。概念を理解してもらうにはハードルが高いですし、金額(数字)は理解しているのと物欲がないため、必要最低限のものしか自分の意志で購入せず、かつ支払いなどは滞りなくできます。

また個人で自身の資産を管理することもできないため、家族もしくは信頼された第三者がきちんと管理する必要があります。

弟をターゲットにして、個人的にアイデアを考えてみました。

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「家族と銀行が、障害のある人のお金を支えるサービス」
■「自分のお金」ということを理解しているなら、現金を持っている必要はありません。スマホを利用できることから、自分の口座を紐付けてキャッシュレスで支払いできれば問題ありません。現に弟はSuicaを利用できます。
■両親が支払いの詳細を見たり、支払い時の上限を設定できます。(傾向として1回の買い物で使う額はだいたい決まっています)
■お金の管理ができないので、名義は弟でも家族が管理できるようにする必要があります。セキュリティに対する考え方を見直す必要があるのです。
将来、両親が弟の面倒を見れなくなったときのために、口座の情報などを私や、信頼のおける代理人に引継ぎできなければいけないため、その仕組みも必要です。
知的障害のある弟の貯蓄はどうなるのか。彼の将来、すなわち両親が亡くなったあとのための資金です。いくら貯蓄があろうと、投資商品を勧めるのではなく、来るべきときが来た時の保険や施設のための活用できるよう、弟の資産を預かる金融機関が本人や家族をフォローすることも必要だと思います。
※あくまで個人のアイデアです。マネーフォワードとして検討しているわけではありません。

皆さんはこの記事を読んでどのように感じ、どんなデザインが思いつきましたか?

最後に

マネーフォワードでお金のデザインに携わっていると、様々なタイプのユーザーさんに触れる機会があります。その人たち全員にとって最良のデザインを考えるのは、とても難しいことです。

ですが、弟を含む様々な人にとって、少しでも「お金」が身近になるデザインを、お金をデザインするデザイナーとして実現したいと考えています。

この記事で「お金のデザイン」、そして「お金のあり方」について、少しでも視野が広がり、思いを巡らすきっかけになれば幸いです。


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