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intel N100プロセッサーのポテンシャルを作品制作で測る 後編

作品制作をするにあたって購入した小型PC「TRIGKEY G5」
2.5万円前後で購入出来るにもかかわらず、intel N100プロセッサーと搭載し、従来の格安PC、小型PC特有のもっさり動作を解消したコスパ最強のPCです。

前編ではそのファーストインプレッションとして、PC本体の端子類や通常利用時の使用感を紹介しました。

この後編ではこのPCを購入した本来の目的である「作品制作」で実際に使ってみた際の使用感や、それらのまとめを書いていきます。

TouchDesignerを使ってみる

自分が作品制作において最も使用しているソフト、TouchDesignerでの検証です。
「TouchDesignerって何?」という方はこちらのnoteで詳細を書いていますので、是非そちらを御覧ください。

検証環境

今回の検証は下記条件で行いました。

起動ソフト:TouchDesigner、タスクマネージャー(CPU使用率等の計測用)、Snipping Tool
起動プロジェクトファイル:デフォルトプロジェクト、VJ用プロジェクト(下記noteで紹介した過去にVJをやった時のプロジェクトファイルです)、

デフォルト環境での検証

まずはデフォルト環境での検証です。
新規にプロジェクトファイルを作成した時の環境で色々見ていきます。

このプロジェクトファイルでは、movie file inでインポートした画像にnoise CHOPで生成した数値をdisplace TOPに入れた値を使って可変させるという簡単な2D処理を行っています。
この時のFPSはMaxである60fpsを常に維持している状態でした。

CPU使用率

この時のCPU使用率は約60%でそこまで負荷がかかっている感じではありません。
何も起動していない状態では3~5%ほどのため、やはり2D処理がメインとはいえ負荷が比較的かかっていることが分かります。

GPU使用率

続いてGPUへの負荷を見ていきます。
こちらはCPUと打って変わって使用率80%とかなり逼迫していることが分かります。
3Dのレンダリング等があると負荷がかかりそうなものですが、TOPなどの2D的な処理でも一部GPUを使って処理するのか、高い使用率になっています。

もっと複雑なプロジェクトを開いてみる

次は以前自分がVJをやったときに作ったプロジェクトファイルで検証です。

こちらのプロジェクトは主に3つのものを生成しています。

上段はGLSLで生成したノイズパターンをGrid SOPに凹凸して反映し、それをCamera COMPで撮影した映像をsyphon TOPを使用してVJソフトであるVDMXへ送信する仕組みです。

中段は会場に設置したwebカメラの映像をインポートし、cache TOPとcache select TOPを使って残像を作成した上で同じくsyphon TOPを使用してVJソフトであるVDMXへ送信しています。

下段はVDMXで選択した映像をsyphon TOPを使ってTouchDesignerにインポートし、そこにイベントロゴ(VJをしたイベントのロゴ)をRGBに分解し、それぞれにnoise CHOPで生成した値をもとにTransform TOPで動きや加工を付けて合成した映像をさらに合成する仕組みです。

2D処理も3D処理もあるため、デフォルトのプロジェクトとはレベルの違う重さになっていることもあり、そのFPSは4~8あたりを行ったり来たりと使い物にならない状態になってしまいました。

CPU使用率

この時のCPU使用率はまさかの40%前後で、デフォルトのプロジェクトを開いている時よりも軽い結果になりました。
正直なぜこうなるのか個人的に理解が出来ないのですが…
CPU処理で事足りるタスクであれば同時並行でこなすことが出来るかもしれません。

GPU使用率

GPU使用率は想像通り高い値になっています。
3D部分が100%にほぼ張り付いているため、明らかに処理性能が足りずFPSが一桁しか出ていない状態になっていると思われます。

少し深掘りしてみる

ここからは先程のVJ用に作成したプロジェクトをもう少し深掘りして検証してみます。

webカムの処理をなくすとどうなるか

まずは中段のwebカメラを使った仕組みを削除してどうなるかを検証します。

結果は特に変わらず、FPSも一桁台で依然として重い状態が続きます。
TOPという2Dの処理でGPUにあまり依存しないからか、ここを消してもパフォーマンスの改善にはなりませんでした。

ロゴ画像のトランスフォームをなくすとどうなるか

次は下段にあるロゴ画像のトランスフォームやCHOPによるノイズの生成部分も消して検証してみます。
中段と下段にあったものがなくなり、上段にあるSOP系(3D系)のみが残った状態です。

これまた結果は特に変わらずFPSは一桁台のままでした。
GPU使用率を見ると下記画像の様にやはりGPUへの負荷が限界を超えていることが分かります。

3D部分をなくしてみるとどうなるか

最後に上段の3D処理部分のみを削除し、中段と下段を残して検証してみます。

するとFPSはたちまち60fpsに張り付く様になりました。
やはり3Dの処理がGPUに多大な負荷をかけていてパフォーマンスが低下していたことが分かります。

しかしCPU使用率、GPUを見ていると以外と両方とも切羽詰まっていることが分かりました。
中段、下段は両方ともそこまで特別に重い処理を掛けているわけではないと思いますが、N100プロセッサーの性能では比較的思い部類に入るのだと思います。

ちなみに上段の3D処理については、やはりGeometry COMPを消した瞬間にFPSが出たため、3D処理全般がかなりキツイものと思われます。

総括

今回は作品制作のために購入したintel N100プロセッサー搭載ミニPCの検証を行いました。

なんとなく予想はしていたのですが、CPU部分が12世代コアのEコア(高効率コア)を使っているため比較的性能が良いものの、GPUは他のCPUと変わらない内蔵グラフィックスのため、そこまで性能が出ませんでした。

ネットサーフィンやYouTubeを見るといった日常の負荷の軽いものであれば
「Pentium」や「Celeron」といったこれまでの廉価グレードCPUより遥かに快適だと思います。

ただクリエイティブ用途して使用すると、TouchDesignerに限らず動画編集の書き出しやCG制作といったGPU性能が重視されるタスク処理には適さないため、使える用途が限定されてきます。

ただ前述の通り、CPU性能に関しては比較的余裕があることから、TouchDesignerであればTOPやCHOPによる処理で完結するものであればコストパフォーマンスもよく十分使えるPC、プロセッサーだと思います。

お知らせ

先日のnoteで発表したのですが、
12月23(土)〜24(日)に渋谷のギャラリーRoom_412にて、
自分が代表を務めるメディアアート集団「WONDEMENT」の旗揚げとなる展示「encounter」を開催します。

実はここで展示予定の作品にも今回紹介したミニPCを使用しています。
展示終了後に何回かに分けて作品の詳細をnoteで書いていくつもりですが、その中でこのミニPCの詳細についても書いていく予定です。

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