リーダーシップ往復書簡 087
今から5、6年前に、日本のスタートアップ界隈で「HARD THINGS」というアメリカの著名投資家ベン・ホロウィッツの本が流行りました。
「HARD THINGS」とは困難とでも訳せばいいでしょうか。やはり人格を磨いてくれるのは、いつの世もリーダーを待ち受ける困難や受難なのです。
私は幅広く年配の方とお付き合いをさせていただいておりますが、それでも戦争の記憶がある方はごく少数に限られます。
戦争の経験がある人、大病をして生死を彷徨った経験がある人、政治犯などで理不尽に収監されて不自由を強いられた人などは、人間の成熟度が違うと言われますが、時代も流れ、昭和、平成、そして、令和となり、私たち若者は、こういった本当の苦労からはなかなか縁遠くなっています。
私も20代から30代にかけて企業再生や敵対的買収防衛をしていたため、ほんの少しではありますが、苦労をする経験を得られて、人格が磨かれたように思います。
私の「HARD THINGS」のエピソードで言えば、ソープランドの帝王との10年戦争、上場会社の代表取締役社長を解任される、多数の民事・刑事事件対応、株主総会議事録が偽造され会社が乗っ取られる、テレビ、新聞や週刊誌など大手メディア掲載、ブラックジャーナリストが嫌がらせで自宅の郵便ポストに封書を投函、スタッフから遺書が送付される、取引先の社長・スタッフが自殺、政治家にホテルのロビーに呼び出されて脅される、各種業界の大物から呼び出し・・・などがありますが、SNSでは書けないことも含め、若い時分にお金では買えないような素晴らしい困難を経験させていただいたと思います。
当時は辛く感じたこともありましたが、こういった経験が血肉となって今の自分があると考えると、今となっては何が悪いことだったのかさえ、分からなくなってしまう時もあります。
これからリーダーを目指す人には「若い時の苦労は買ってでもせよ」と言いたいところですが、さすがに今の世の中ですので死ぬ人まではあまり見ませんが、うつ病になって社会復帰できない人ぐらいはよく見ますので、なかなか難しいところでもあります。
今まさに苦労をしているリーダーは、それがどのような形であれ、将来に続いていると認識して、本気で勝負をしていってもらいたいと思います。
リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。
また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!
【Q.87】
本連載で「リーダーはリーダーを育てる」という格言をご紹介いただいておりますが、具体的にリーダーはどのように次のリーダーを育てるのでしょうか?
<コメント>
ご質問に回答するならば、リーダーがフォロワーを動かす過程で、そのフォロワーにもリーダーシップの発揮が求められているのです。このリーダーシップの発揮の経験が、フォロワーを次のリーダーへと変えていくのです。
私は、リーダーとは、フォロワーにリーダーシップ・スキルを身に着けさせることができる人だと考えています。
もう少し正確に記載すると、リーダーシップを正しく発揮しているリーダーであれば、フォロワーもリーダーシップを正しく発揮するようになるのです。
リーダーシップの考え方では、社会や組織における地位や立場は一切関係ありません。そのため、優れたリーダーは、フォロワーに対して、パワー(地位や立場に基づく権限)を行使して、行動を強制するようなことはありません。リーダーは、夢や共感の力によって、フォロワーが自発的・自主的に動くように促すのです。
そのため、そもそも、正しいリーダーのもとでは、フォロワーは何か強制力が働いて行動するわけではありませんから、フォロワー自らもリーダーシップを発揮して行動しているのです。
そして、そのフォロワーが、さらに第三者に対して、リーダーと同じように夢や共感の力で人を動かすようなコミュニケーションをすれば、それはもう立派なリーダーシップなのだと思います。
こういったリーダーシップを発揮した経験が、フォロワーを次のリーダーへと育てるのだと思います。リーダーはリーダーを育て、正しいリーダーシップは連鎖していくのです。
※この記事は、2021年5月5日付Facebook投稿を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。
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