ドア1枚越しの安否

先の参院選を巡る選挙違反事件で、前法相の河井克行容疑者(57)と、その参院選で初当選した案里容疑者(46)夫婦が公職選挙法違反(買収)の疑いで逮捕、拘留された。
それと時を同じくして、不肖私も〝拘留〟されるハメに陥ってしまったのは、わが不徳のいたすところというべきだろう。

ことの経緯は次のようなものだった。

河井夫婦の逮捕を報じるテレビニュース、ワイドショーをハシゴ見したのち、ようやく各局が料理番組だのドラマだのに落ち着いていったのを見届けた不肖私は、二階に上がってトイレのひととなった。
そして小用を足したのち、ズボンを引き上げながらドアのロックをスライドさせて開錠しようとした、まさにそのときだった。

嫌な予感が黒い霞のように頭上から落ちてきたのを察した刹那、ドアのロックが固まったまま、動かなくなってしまったのだ。
スライド式のロックが内部で空回りしてロックが開錠されない状態。有り体にいえば、不肖私は狭いトイレに閉じ込められてしまったのだ。

その現実を突きつけられたとき、つい先日のトラブルが頭をよぎった。ちょうどその真下にあるトイレで、やはり母親が閉じ込められる事件があったばかりだったのだ。

そのとき母は体調優れず、まともに歩くこともできない状態だった。その母がトイレ内で倒れ、中開きのドアの内側で倒れたことで、自分のからだがつっかえ棒になってドアが開かなくなってしまったのだ。

一時はバールかチェンソーでドアをぶち壊すことも考えたものの、ドア越しに母を鼓舞しながらからだを起こして、なんとかコトなきを得た。
そして、なんとか救出した母に向かって「もし独居であったならば、死んでたかもな」といった冗談が、そのまま不肖私にブーメランのように返ってきて、幽閉の身となったわが脳裏にこだましたのっだった。

幸い隣の洗面から窓越しにドライバーとバールを手渡してもらってノブを壊して解放されたが、1ミリ程度とはいえ不肖私の脳裏に死の想念がよぎりましたよ。

いままでは、さして問題もなかった住環境が、経年とともに危険と紙一重になっていたことをつくづくと思い知らされた、河井夫婦逮捕の日ではありました。







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