「緒方監督暴力事件」のキナ臭さ

カープは昨日のズムスタでの対ドラゴンズ戦に11対4と快勝。これで連勝を6に伸ばして勝率を5割にもどした。

今シーズンは長期の連敗と連勝とを繰り返して出入りの激しい戦いをしているカーブだが、その裏ではどうやらベンチの雰囲気が作用していたようだ。

この24日に緒方監督が、チームの野間選手に鉄拳制裁したことが発覚して、それが知れるようになった。

この「事件」。ネットのスポーツニュースのネタになっていることは知ってはいたが、全国のテレビニュースにもなっていたらしく、野球にはあまり興味のない家人が眉をひそめて語っていたのには驚いた。

それは緒方監督の行為そのものについてではなく、「もっと他に報道しなきゃならないことがあるでしょうのに」というテレビ報道についての不満だったのだが。

もちろん鉄拳制裁を肯定するつもりもないし。しかし、ことがお茶の間の話題にまでなっていることに、右に同じくなんともいえない違和感を感じてもいる。

もうことの内容と経緯はご存知だろうが、簡単に事件をふり返ってみたい。

ことが起きたのは6月30日。横浜スタジアムでのカープ対ベイスターズの試合でのことだった。
この試合で9回に四球で出塁したバティスタの代走として出場した野間選手は、2対2のまま延長に入った11回表の攻撃で1アウト後に打席に入り、平凡なピッチャーフライに倒れた。

凡打に落胆した野間選手は一瞬、全力疾走を怠った。と、ピッチャーのエスコバーが意地悪くというか、これを落球。そのまま拾って一塁に送球して間一髪アウトとなった。
野間選手が全力疾走していればセーフになったタイミング。否、たとえアウトになるタイミングだったとしても全力疾走は怠るべきではなかった。

この怠慢プレイに対して緒方監督が暴力で“指導”してしまった。
試合後に野間選手を監督室に呼び出し、複数の関係者の前で何発かの平手打ちをしたというのだ。

この行為に対してカープ球団はNPBに事態を報告するとともに緒方監督に厳重注意をし、緒方監督は選手全員の前で謝罪したというもの。

これが事件の概要だ。

緒方監督が野間選手に鉄拳制裁を加えた翌日から、カープは連敗9を重ねて、その日の引き分けを挟んで11連敗を記録したことは、あらためて記憶を喚起しておく必要があるだろう。
あの時期、「いったいカープはどうしたんなら?」とファンの多くが抱いていた疑問の背景に、この事件があったということを。

この緒方監督の行為の是非が問われるとともに、彼へのペナルティの軽重も話題となっている。

たしかに必罰を考えるならば厳重注意だけでは足りないだろうし、緒方監督の鉄拳を、野間選手の将来に期待しての「愛のムチ」ととらえれば、この程度でも十分との意見もわからなくはない。
それは個々の見解だから議論はわかれて当然だし、いまここではあえて問わない。

それよりも今回の事件とその後の推移を見ていると、なんともいえない違和感、キナ臭さを感じるのだ。
何か球団の不祥事を隠蔽するため、あるいは話題を逸らすために緒方監督をスケープゴードにしているのではないか、そんな疑念だ。

不可解なタイムラグ

「またそれかよ!」のソシリは覚悟で(笑)、ここでことの経緯を表にまとめてみたい。

6月30日 緒方監督が野間選手を監督室に喚んで複数回平手打ち
7月15日 緒方監督に球団が厳重注意。監督が選手の前で謝罪
7月24日 球団が事実関係発表

ご覧のように事件があってから球団が対応するまで2週間以上経過していた。
この時間の経過はいったい何を意味しているのか。

まず緒方監督は、事件が発覚するまで野間選手に謝罪するつもりはなかったことがわかる。多分その必要性もみとめてはいなかったのだろう。
それは取りも直さず彼が鉄拳を「愛のムチ」だと認識していたからにほかならない。

ところが事件から2週間も経ってから、球団が緒方監督を厳重注意して選手に謝罪させることになった。
「内部報告」があったため緒方監督と野間選手から事情を聴取したところ、事実関係が明らかになったという。

この間、ある程度の時間が経過してしまったのはわからなくもない。
先にも書いたように、緒方監督の暴力事件をきっかけにベンチのムードが冷え込んでしまったらしいカープは、出口の見えない連敗トンネルに入りこんでしまっていた。
そんな状況を見かねて内部の人間がフロントに事件を告発。結果、監督の謝罪によってベンチ内は和解し連敗のトンネルを抜けることができた、と。

ところが、その後の10日近くのブランクがわからない。
もし隠蔽するつもりだったのなら、そのまま発表しなければよかった。現にこの事件は公には知られてはいなかった。球団が発表したことで露見したのだ。

なぜこのような不可解な経緯をたどってきたのか不思議に思っていると、手を変え品を変えて報じられるニュースに中に、引っかかるフレーズを目にした。

「近く発売される週刊誌の記事の内容が、事実と異なるためにあえて発表した」、という球団本部長のコメント。
つまり緒方監督の暴力事件、あるいはその周辺のことが週刊誌ネタになったらしく、その対抗措置として事前に発表することにしたというのだ。

なるほどそなら理解できないことはない。
つまり前記の表は、週刊誌と球団フロントとのせめぎ合いの記録だったのだ。

この緒方監督の暴力行為については、NPBが25日に再発防止の要請をしている。
あのチケット抽選券の配布騒動で世間を騒がせたときも、過去に公正取引委員会から勧告を受けた際も公的には要請すらしなかったNPBが、こういってはなんだが、たかがチーム内の指導方法について苦言を呈するというこのアンバランス。
そこに違和感を覚えるとともに、事態を主導してきた球団のキナ臭い思惑を感じるのだ。

その週刊誌に何が書かれているのか、それがわからないので今はまだなんともいえないが、球団フロントがまた何か不祥事をしでかしたのではないかという疑念が消えない。


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手作り野球場DREAMFIELD元管理人。現ホーリー農園オーナー兼物書き。主な著書に『わしらのフィールド・オブ・ドリームス』(メディアファクトリー)、『衣笠祥雄はなぜ監督になれないのか?』(文工舎)、『初優勝』(プレジデント社)など。 —noteでの著書は下の「プロフィール」に
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