【自作曲】古典的なワンループではじめて作ったインスト・ヒップホップ(長文記事)
今年のゴールデンウィークは早々にメインイベントの旅行が終わってしまったので、ここ2~3日は先日誕生日プレゼントで買ったMPC ONEをいじりつつ、なんとなくビートメイクの真似事みたいなことをしてた。
これまでMPC自体まったく触ったことないし、DAWも弄ったことないから正直ほとんど手探り状態ではあるけれど、レコードから直接サンプリングした音源をチョップして、パッドを叩きながら曲作りをするのはとても楽しい。
この作り方って90年代当時実際に行われた古典的なトラックメイクの手法だから、なんだか凄くヒップホップしてる気分がするんだよね。
今回は記事が少し長くなったので目次をつけておこう。
ヒップホップの曲作りで大切なこと
何度かこのnoteでも書いてるけれど、僕は音楽理論の勉強はほとんどしていない。子どもの頃からピアノを習ってたから楽譜は読めるし、あまり複雑すぎない基本的なコード(ディミニッシュやオーギュメントくらいになると怪しい)は理解してるけれど、僕が習得してる音楽理論なんてほぼそれだけ。
だから「コード進行がどうした」みたいなポップス作りのセオリーはほぼ知らない。だけどその代わり、いろいろな種類の音楽を聴いてきたことに関してはそこそこ自信がある。
今回はじめてMPCで曲っぽいものを作ってみたけれど、サンプリング主体の古典的なヒップホップ(ブーンバップとはあまり言いたくない)の音作りでは、この「聴いてきた音楽の積み重ね」がなにより大切なんだってことを身をもって実感することが出来た。
考えてみれば初期のハウスやテクノなんかもそうだけれど、古典的なクラブミュージックって楽譜も読めず楽器も弾けない人(当然きちんと音楽教育を受けてたりバンド上がりの人もいるけど)が作ってたわけで、変に凝らずにそれっぽい曲を作るだけなら実は理論ってそんなに重要じゃないんだよね。
これまで聴いてきた色んな音楽のパーツを継ぎ接ぎで組み立てていけば、そこそこ聴けるような曲を作ることは出来るもんだ。
今回完成した曲とその簡単な作りかた
そんなわけで今回は完成した曲を貼り付けつつ、簡単に僕が実際にやった作り方みたいなものも紹介しておこう。ちなみにほぼゼロから手探りで初めて製作期間は足掛け3日くらい。
前回も書いたとおりMPCはマニュアルが分かり辛くてほとんど読んでないから、基礎的な使い方はネットの記事とYoutube動画で勉強した。だから、同じことをするのでも実はほかにウマいやり方があるかもしれない。
だから、こんな作り方もあるよってくらいの参考程度で読んでもらえればと思う。僕自身、他の人の音楽制作記を読むの好きだし、こういう記事が好きな人は他にもいると思うので。。。
さて、実際の曲がこちら。聴いてもらえば分かると思うけれど、今回アウトロ以外はネタ感のある2小節のワンループがベースになっていて、その上にラップや歌の変わりとして機能するウワモノが少し乗っている感じだ。
ここからは少し細かく章立てて具体的な作り方を書いていこう。
①ネタ選びとメインループの作りかた
ループに関しては、とあるレコードからMPC標準の40秒でサンプリングした素材を1小節単位でチョップし、それを2つ組み合わせただけのシンプルなもの。サンプル素材をパッドに割り当てて、適当に叩いて試しながらうまくハマる組み合わせを探した感じだ。
ネタ自体は自分で持ってるレコードの中から、なんとなく使えそうな曲をチョイス。ただ実際ループで使ったのは当初の想定とは別の箇所。まぁMPCあるあるなんじゃないかな。
ループのアイデアが固まったらそれを実際に打ち込んでいく。その際に必要になるのがBPM合わせだ。ただ、今回はネタのBPMを測ったりはせずに、概ねこの辺りだろうなってアタリを付けた速度から少し微調整をしただけ。
4小節以上とかまんま使いするならもっと細かいBPM合わせが必要になるけれど、今回は1小節単位でチョップした2つのサンプルが違和感なく繋がれば良いだけなので、ある程度ラフでも大丈夫。
というか、このラフなBPM合わせが逆にMPCらしさやヒップホップらしさに繋がってる気もする。適当でいいのよ、適当で。
②ドラムパートの打ち込み
メインのループが出来たら今度はドラムパートの打ち込み。
まずは音色選びで、今回は標準で入っているサンプルから、Hiphop-kit〇〇みたいなのとRnB-kit〇〇みたいなものを選んでみた。使ってる音はキック・スネアとハイハット代わりの鈴(=スレイベル)だけで、一応キックは強弱を付けるため別々のサンプルから一種類ずつの2音色をチョイスした。
前回も書いたけれど、ハイハットの代わりにシャンシャンシャンシャンとスレイベルを打つのはDITCのロード・フィネスとバックワイルドが昔よくやってた手法のマネだ。
MPC ONEの標準サンプルではそのものズバリの音は見つけられなかったけれど、"RnB-Kit-UR BV Ethnic RnB 140.xpm"に入ってたタンバリンの音がイメージと近い音色だったから、これをスレイベル代わりに使うことにした。
打ち込みパターンについては奇を衒わず、自分にとって耳馴染みのあるシンプルな展開にしてみた。基本は4小節のリフで、16小節目だけ展開を変える合図としてスネアのパターンをほんの少し変えただけ。これくらいシンプルでも充分それっぽさは出る。
③ウワモノを入れてみる
メインのループとドラムパターンが出来たら今度はウワモノ。実は今回もともとウワモノを入れる予定はなくて、メインのループと別のループをいくつか差し込むことで展開を付けるつもりだったんだけれど、実際試しでパターンを作ってもうまくメインループと繋がらなかったんだよね。
で、何気なくメインループを流しながらRD-88(ステージピアノ)で適当な音色を右手だけで手弾きしてたら、意外とうまくハマることに気づいた。
そこで、この手弾き演奏をMPCに取り込む方法は何かないかって思って調べてみたら、↓の解説動画でルーパー機能を使えばいいことを発見。早速RD-88とMPC ONEを直結して録音をすることにした。
今回録音したのはRD-88のKalimbells(カリンバ?)、Steel Drums(スティールパン)、フルートの3音色。
ループを流してるうちに、少しスチャダラパーの"サマージャム'95"で知られるボビー・ハッチャーソンのMontaraに近い雰囲気を感じたから、なんとなく同じような南国感ある音色を選んだ感じだ。
最初に録音したのはKalimbells。元々はヴァイブの音色を使うつもりだったんだけど、実際に音を鳴らしてみたらこのKalimbells音色の方が自分のイメージに近かったから、これを使って適当にそれっぽいフレーズをアドリブで弾いてみることにした。
で、この雰囲気なら多分スティールパンも合いそうだなと思い、続けてスティールパンのパートもアドリブで録音。ちょっと音が割れちゃったけど、まぁこれもMPCっぽさってことで逆にアジになったような気がする。
最後がフルート。RD-88のフルート音色は息使いも含めかなり再現度が高くて前から気に入ってたから、いつか使いたいと思ってたんだよね。
こんな風に元ネタのループを聴きながら合いそうな楽器を思いついたり、合いそうなフレーズをアドリブで弾けるのは、それこそ「いろいろな種類の音楽を聴いていること」の賜物。特に意識はしてないけれど、頭の中にアーカイブみたいなものがあって、そこから必要な要素を適宜引き出してるんだと思う。
ちなみにMPCではルーパーで録音した音源もサンプルとして扱われてチョップとかできるから、今回みたいな単音系の楽器の録音では便利。微妙に始まりがズレたフレーズの修正や、フレーズの組み換えが簡単に出来るからね。
一応MPC本体でサンプル音色を使ってピアノロールでMIDIデータを打ち込むやり方はあるみたいだけど、そもそもDTMやってないからピアノロール慣れしてないし、MIDIパラメータとしてのベロシティもほぼ「なにそれ?」状態だから、こういう風にライン入力でそのまま音を生録音して、後からボリュームなりタイミングなりをアナログ的に弄る方が性に合ってる気がする。
④曲構成の作りかた
さてさて、こんなことをしてるうちにメインループ+ドラムパート(シークエンス)と、当初使おうとしてた別パターンのループ数種類、それからRD-88から録音した3種の手弾き演奏サンプル(MPC内での扱いとしてはドラムプログラムの一つになる)がMPCのプログラムに入ったので、最終的にそれらを組み合わせつつ並び替えながら曲として完成させることにした。
とりあえず思うがままにパーツを組み合わせたら10分近い長尺になってしまったので、そこから色々と展開を削って5分くらいに収めることに。基本的にはワンループで行くことにしたけれど、せっかく別パターンのループをいくつも作ったので、この別パターンの4小節ループ群から2種類を選んでアウトロに加えてみた。
こんな風にアウトロで一番気持ちいいフレーズが流れる手法は、ブッダブランドのデヴラージが良くやってた。フロントかブラストのインタビューで「最後までちゃんと曲を聴いてほしいから」って語ってたのを昔読んだ記憶がある。
展開自体は16小節区切りで考えると、なんとなくそれっぽくなる。これはテクノなんかも同じで、この手のループ音楽は4小節のループを4回繰り返して一つの固まりにするのが基本。8小節で変えちゃうとちょっと忙しない印象になってしまうので注意。
そんなこんなでひとまず5分くらいの曲展開が完成した。いちおう一番気持ちいいKalimbellsの音が入ったパターンがフックのつもり。ループネタ自体は全然違うけど、なんとなく"サマージャム"っぽさは出てると思う。
ちなみにMontaraは確かに良い曲だけどあまりに色んな人が使い過ぎてるおかげで完全に飽きてて、新しいのを聞くたびにまたこれかってなる(笑)
⑤仕上げの録音作業
ここまで出来たら後は録音するだけ。本当はMPC単体でもエクスポートは出来るみたいだけど、どうやってパソコンに受け渡ししたら良いのかよく分からないし、シンプルにライン接続でパソコンにそのまま録音した。
一応オーディオインタフェース?って言うのかな。元々はレコード音源をPCに取り込むつもりで買った単純な録音用ツールを持ってるので、それで録音してるだけだ。
うちの接続はMPC→ミキサー→コンポ→PCって繋ぎになってるから、間に余計なものが入ってる分だけ、多少音がクリアじゃない気がするけどこれもまた味。そもそも元のサンプルだってノイズ混じりのレコードなんだから細かいことを気にしても仕方ない。
なんてったって今の時代、わざわざローファイな質感やテープ音質にするためのエフェクターがあるくらいだし、それに比べれば健全でしょう(笑)
曲の終わりがフェードアウトになってるけど、これはMPCだとやり方が分からなかったからPCに録音した後で前にも紹介したACIDで処理した。今回パソコンを使ってるのはこのフェードアウトと録音後のノーマライズ(音量レベル調整)だけ。
テクノを作ったときと制作ハードは違うけれど、今回もまぁほぼハードだけで1曲作ったと言って良いんじゃないかな。
そんな感じで今回は長々と書いたけれど、こういう風に作れば良い感じの曲は作れるから良かったら是非挑戦してみて。
特にMPCを買っても「ホントに簡単に曲なんて作れるの?」って思ってる人。これはつまり少し前までの僕のことでもあるんだけど、アタマの中に引き出しさえあればちゃんと曲は作れるので安心していい。
約10万円くらいするからDAWなんかに比べると手軽に買える機材とは言い難いけれど、昔の人が作ってたのとほぼ同じような作り方で曲作りができるのはやっぱり魅力的。
「最近の曲ってなんか好みのものがないな」って思ってる人、がんばって新しい曲を探すよりも、もしかしたら自分の頭の中に描いてる曲をカタチにしてしまった方が手っ取り早いかもしれない。
特にサンプリングで作るヒップホップについては、そのスジのリスナーであればわりと誰でもとっつきやすいから、気になる人はレッツトライ。
僕自身もまた時間を見つけてMPCの使い方を身につけて行くつもりなので、またなにか他の曲が出来たらここに載せることにしよう。
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