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僕が影響を受けた11枚のアルバム

noteを始めたてなので今回はベタ企画。僕が影響を受けた11枚のアルバムについて書いてみることにしよう。もともと15年くらい前から音楽紹介のブログをやっていて、中古レコード屋さんなんかを中心に、そこそこ見てくれている人もいたんだけど、ブログでは基本的に音源の紹介を淡々としてただけだったので、自分のバックボーンというか、そういうのを整理してみるのもちょっと面白いかなと思って。今回も結構な長文記事。


①PAN RHYTHM: Flight No.11154 / Muro

ちょうど高校生のときドラゴンアッシュから始まった空前の日本語ラップブームがあって、高校時代はとにかく当時の日本語ラップを聴きまくってたんだけど、その中で一番影響を受けたのがこのアルバム。

ブラジル音楽やジャズを中心としたネタ使いで、とにかく全編わたってお洒落サウンド全開。今はいろいろ元ネタとかも分かってるけど、あの頃はそんなの全然知らなくて「オシャレだなぁー」と思いながら聴いてた。当時の日本語ラップや洋ラップとトラックの方向性が全く異なり、今でも新鮮。

すごく自分の中で世界が広がった一枚で、今の自分の服装にどことなく南国感があったりするのもこのアルバムの影響だと思う。

②Organ b. SUITE / 須永 辰緒

Muroさんを聴いて音楽の世界が広がった僕が大学生になって、ヒップホップ以外の音楽ももっと知りたいと思っていた頃に出会ったミックスCD。辰緒さんはもともとヒップホップのDJで、Muroさんともしょっちゅう対談やイベントをしていたので、日本語ラップ好きにとって、いわゆるクラブ系音楽の入り口として入りやすかった。

このミックスCDは、それまでミックステープとしてリリースしていたカセットテープのシリーズを、初めてメジャーレーベルからライセンスリリースした1枚。イタリアのSchemaレーベルや80年代のジャズボーカルなど、2000年前後に流行ったオルガンバー・クラシックがズラリ。Muroさんに続き、僕の音楽幅を広げてくれた一枚。

この後、辰緒さんはメジャーから何枚もミックスCDを出してるけど、今でも時々聴きたくなるのはやっぱりこれ。ベリー・リップマンのパラマリボの娘はとかいまだに好きだし、たぶん一生好き。

③Taurus / Tania Maria

Muroさんと辰緒さんきっかけでジャズやブラジル系の曲を聴き始めた僕が、次に辿り着いたのは当時同じくブームだった橋本徹さんのSuburbia SuiteとCafe Apres Midiシリーズ。

当時サバービアは雑誌relaxにも出張掲載していたし、ヤフオクの出品レコードにはたいてい「オルガンバー/サバービア」とかっていう検索語が入ってたので、この辺りの音楽聴いてた当時の東京の大学生としてはわりと自然な流れだと思う。

そのアプレミディのシリーズに曲が収録された曲が大好きで、LPを買ったのがコレ。レコードは二束三文で売られてるけど、1曲目のTranquilityを皮切りに全編でおしゃれなピアノ系のフュージョン・サウンドが満載。ジョン・レノンのImagineカバーなんかも含め、仕事中とかにBGMとして未だによく聴く。

④Livin' In The City / The Melton Brothers Band

ミックスCDのオルガンバー・スイートからミックステープ時代のオルガンバー・スイートにポロロッカして、いわゆるフリーソウル系の曲も聴くようになった僕が当時一番好きだった曲がコレ。

テープの方のOrgan b. SUITEのNo.2に入ってるんだけど、大学生の頃の僕はとにかく都会に憧れてたこともあって、この曲のタイトルと演奏に惹かれてた。ずいぶん後になってCD化されたけど、元々自主盤で中古LPは当時からレアで買うのにとても苦労したのを覚えてる。最終的にどこで買ったかは忘れたけど。

ちなみに僕が持ってるのは2色刷りのセカンドプレスの方。いまDiscogみたら10万円ついててさすがにびっくり。多分2万円くらいで買ってるはず。後にマッドリブがネタにして、ヒップホップ界隈でも知られるようになった。僕のエレピ好きの原点のうちの一つ。

⑤Lemuria / Lemuria

これもフリーソウルにハマってた時に知ったアルバム。当時Free Soulコンピのレギュラー・シリーズではなく、Flight To 〇〇というシリーズがあって、そのハワイ版の1~2曲目に、立て続けに入ってたのがこのレムリアだった。

当時はDreamsvilleから出てた再発LPで聴いてたけど、10年後くらいにハワイアンAOR熱が再燃したときにオリジナル盤を購入。これも今オリジナル盤が3万円以上しててびっくり。

実はオリジナルと再発でテイク違いの曲があるんだけど、数年前に出た紙ジャケCDは両テイクを収録(というかオリジナルテイクを初CD化)していたので、また買ってしまった。全部でアナログとCDあわせて4枚買ってる。僕のコンテンポラリー・ハワイアン好きの原点。

⑥Exciting 6 / Basso =Valdambrini Sextet

ブラジル音楽や80年代ジャズボーカルの次にオルガンバー界隈で流行ったのが、より本格志向な60年代の欧州ジャズ。そのきっかけの一つがこのイタリアの双頭コンボで、2000年代中盤ごろまで大人気だった。

このアルバム収録のDonna Luという曲がOrgan b. Taro 4の1曲目で、初めて聞いて衝撃を受けて以降この雰囲気の曲ずっと探し回ってたっけ。当時ジャズのことをまったく知らない大学生で、ジャズレコード専門店の店員に「バッソ=ヴァルダンブリーニみたいな曲ありますか」って尋ねて「あんなに良い曲そうそうあるわけないだろ(笑)」って失笑されたのをよく覚えてる。

このアルバムはイタリアのGTAというローカルなレーベルから出てたこともあってなかなかリイシューされず、当時聴きたければオリジナルで聴くしかなかった。当時4~5万円くらいで壁かけで売られてた盤で、社会人になったお祝いに父親に買ってもらったんだと思う。その後、再発が出たときに他のレコード買うために売っちゃったんだけど、今考えれば思い出的な意味でもったいなかったな。

その後急速に欧州ジャズに系統していくことになるんだけど、個人的には全てのきっかけになったのがこのアルバム。ルパンチックでカッコいいジャズ代表。

⑦Be / Common

片一方でバッソ=ヴァルダンブリーニみたいな「ど」ジャズを聴きつつも、まだ20代前半で若かった僕は、いわゆるクラブヒットも並行して聴いていた。そんな中ヒップホップ系でメジャー作品ながら、そのオーガニックなサウンドメイクでアングラ好きの間でも大ヒットしたのがこのアルバム。

僕がJ.DillaことJaydeeやカニエ・ウエストをはじめて認識したアルバムが多分コレ。コモンは名作と言われるアルバムが何枚もあるけど、渋谷のDMRでリアルタイムにLP買ってることもあり思い入れ強め。

もともとヒップホップについては日本語ラップ専門だったけど、このアルバム聴き始めた辺りから90年代USヒップホップも聴くようになったかな。

⑧Desenhos / Vitor Assis Brasil

バッソ=ヴァルダンブリーニから始まったアメリカ産でないジャズ探求の、自分の中での終着点が多分この辺り。ヴィトール・アシス・ブラジルとテノーリオ・ジュニオールが織りなす超ドープな音世界。ボサノバのKind Of Blue。全てのジャズ作品の中で一番好き。

今は再発済で一時期に比べるとオリジナルも高くないけど、僕が買ったのは一番高いころだったような気がする。と言うか値段以上に、そもそも市場に全然流れてなかったな。当時神保町の某レコード屋さんで探してるレコード聞かれてこのアルバムの名前を言ったら、「一応あるけど凄い高いよ」って奥から出してきてくれた。少し悩んだけどクリスマスが近かったこともあり、自分へのプレゼントと言い訳して購入。8万円弱くらい。

結婚した今はレコード1枚にこんなにお金出すこと出来ないから、若気の至りと言えば至りなんだけど、内容も盤の状態も素晴らしく骨董品的な価値があるので、別に後悔はしていない。ちなみに自分の中で購入した高額レコードの中で第3位。これより高かったのはベント・アクセンのSketchコメダのBallet Etudesだけで、ずっと欲しかったSketchの7インチEPを購入した時点で高額盤から足を洗ってる。

⑨Elements / Psyche / BFC

欧州ジャズ人気の過熱具合にちょっと距離を取りたくなった僕が、これまで聴いてこなかったジャンルに触れてみようと思い、手を伸ばしてみたのがデトロイトテクノ。もともと4ヒーローとかは聴いてたけど、その流れで最初に聴いたデトロイトテクノ作品がこのカール・クレイグの初期作品集。

それまでテクノっていうと漠然とピコピコしたうるさい音をイメージしていたので、これを聴いて1曲目からぶっ飛んだ。ファーっという美しいシンセパッドを中心とした音作りは、ある意味ネオアコやシューゲイザーにも近いピュアさで、いまはテクノと言うと自分の中ではこのイメージ。

まあ良く考えれば時代的にもほぼ同じだし、デトロイトの狭いコミュニティで当時の若者たちが作った音楽ということも踏まえ、自分の中ではアメリカ版のネオアコって捉え方もちょっとしてる。

⑩A Hi Tech Jazz Compilation / Galaxy 2 Galaxy

初期カール・クレイグと同じ時期に影響を受けたもう一枚のテクノ作品がこれ。デトロイトテクノのエモーショナルで宇宙的なイメージを完成させたのがマッド・マイクことマイク・バンクスで、このコンピにはそんな宇宙的な作品のほぼ全てが収録されてる。

特にHi Tech Jazzを初めて聞いたときの衝撃は忘れられない。カール・クレイグと同じく自分の中のテクノのイメージが強烈にアップデートさせられたし、それまでいわゆるクロスオーバーなジャズって西ロンドンやドイツで生まれてきたと思ってたので、自分の認識の浅さを痛感させられた。

2000年代前半に人気だった4ヒーローやフィル・アッシャーなんかのクロスオーバー勢は皆ここから影響を受けてる。宇宙大好き。

⑪THANK YOU UNIVERSE / Joaquin Joe Claussell

デトロイトテクノの次に手を出したのがハウス。それこそ初期のシカゴハウスなんかも好きなんだけど、衝撃と影響を受けたという点ではこのジョー・クラウゼルの存在が大きい。

特に90年代中盤以降、現在に至るまでのオーガニックでトライバルなサウンドは唯一無二。本人も語ってたけど、Nujabesやハイドアウト勢は明らかにこのジョー・クラウゼルの影響を受けてて、アコギやアコピの使い方がそっくり。

ヒップホップしか聴いてなかった学生時代はNujabesの音ってオリジナリティがあるなって思ってたけど、このアルバムや他の幾つかのジョーの作品を聴いて、Nujabesはこの音をヒップホップのフォーマットに落としてるんだなってことが良く分かりました。



以上11枚、僕が影響を受けたアルバムを選んでみた。

好きなアルバムとかって切り口だとその時々の気分で変わるけど、「影響を受けた」「ターニングポイントになった」って切り口で考えると、自分の中では多分ここに挙げた11枚は不動かな。ホントは10枚にしたかったけど、どうしても外せなく11枚になってしまった・・・。

もちろんロック系でも好きなアルバムはあるけど、やっぱり自分の中での根っこはブラック・ミュージック。それぞれYoutubeのリンクも貼ったし、ああコイツはこんな音楽好きなんだなって思って聴いてもらうと嬉しいかも。


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