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最後のフリーソウル世代

前にも書いたけど、大学生くらいの頃の僕はMuroさん~辰緒さんの流れから色々なジャンルの音楽を聴くようになり始め、フリーソウルやブラジル音楽なんかのいわゆるサバービア系旧譜と当時ブームだった新譜のクラブジャズを漁るように聴いていた。

特に大学3年生~社会人2年目までは渋谷区の笹塚に一人暮らししていたこともあって、レコード屋やクラブが身近だったので、それこそ貪るように音楽を聴いていたと思う。

僕が大学に入ったのが2002年なので2004~2007年ごろ。今から15年くらい前の話だ。

2004年ってどんな時期?

ちなみに今調べたら2004年は平成16年だそう。平成は31年の4月30日まで続いたみたいなので、僕が笹塚で暮らしてたあの時期はちょうど平成のど真ん中ってことになるみたいだ。

2004年がどういう時代だったこと言うと、ちょうどADSLや光回線なんかのブロードバンド(死語)が、当時20~40代くらいの家族が暮らす一般家庭の多くに行きわたり、インターネットが普及し始めたころ。

企業がある程度「見栄えの良い」ホームページを作り出すのが一般的になっていったのもこの頃。ただし、ネットやパソコンに疎い人も多くて、そういう人はまだネット社会には触れてなかった。

YouTubeサービス開始もiTunes Storeの日本版開設もAKB48誕生も翌2005年。日本で最初に流行ったSNSのmixiのサービス開始がこの2004年だけど、当時まだ携帯ユーザーは利用出来なかったので、本格的に若者の間で流行るのは2006年頃から。スマホは当然ない。

こんな感じの時期だったから、今では当たり前ないろいろなカルチャーや価値観が当たり前になっていくギリギリ前の時期と言えるかもしれない。

平成中期の大学生の一日

その頃の僕はというと、大学にもろくに行かず、毎日10時過ぎに目を覚まして「なるとも」を見てから渋谷・新宿・下北沢のどこかしらのレコ屋に自転車で行って、夕方になったらバイト。その後はバイト仲間と飲みに行ったり一人でクラブに行ったりみたいな生活をしていた。

片手にはいつもDMRかdisk unionかCiscoあたりの袋。我ながらわりと絵に描いたように、あの時代における「都会の大学生の生活」を満喫していたもんだ。もうミレニアムは過ぎてだけど、例えば桜沢エリカのレディコミなんかに出てくるような90年代的なライフスタイルがそこにはあった。

よく奥さんなんかにも話してるんだけど、たぶん1983年の僕の世代って、いわゆる90年代的なレコ屋・クラブ・DJみたいなライフスタイルを送れた最後の世代なんだと思う。

実際にはこういうスタイルの生活をしてたドンピシャの世代はもう3〜4コか下手したら10コ上くらいの人たちだけど、僕らの世代でも高校生〜大学生が背伸びしたらまだギリギリ手が伸ばせる範囲ではあった。ちょっと文章には書けないようなことまで含めてね。

文化の大衆化と衰退

これが2つくらい下の世代になるとそうは行かない。クラブの年齢チェックが厳しくなって未成年は入れなくなってきたし、居酒屋やファミレスに深夜入店するのにも年齢確認がいるようになった。世の中は急速に真っ当になっていき、今に続く潔癖社会の始まりだ。

また、この頃を境にクラブやヒップホップ系のイベントが大衆化し、時を同じくしてインターネットが爆発的に普及した。これがクラブ文化が衰退した大きな原因だと思う。

インターネットが普及して誰でも手軽に触れられるようになったのは門戸を広げる意味ではよかったんだろうけれど、同時にコア層の離脱にもつながった。誰でも手軽に触れられるものって特別感がなくて面白くないからさ。

この2004年頃くらいまでって、まだ「渋谷界隈だけの流行り」ってのがギリギリ残ってたんだよね。アングラ感っていうとまた少し違うのかもしれないけど、口コミで広がった「そのときその場所でしか触れられない出会い」みたいなのがあった。僕はそうした時代に90年代文化の深いところまで触れることが出来て本当に良かったと思ってる。

そんな90年代渋谷ローカル文化のひとつの象徴が、橋本徹さんが提唱してたフリーソウルだ。

けっこう背伸びをしてた自覚はあるので、当時は自分のことを「遅れてきたフリーソウル世代」なんて思ってたけど、その後でシーンが衰退してしまったので、たぶん今となっては「リアルタイムでシーンに触れた最後のフリーソウル世代」だろう。

Cisco閉店が2007年、DMRのレコード販売終了が2011年。街のレコード屋が続々閉店していったのも多分その頃だ。ディスクユニオンは手を変え品を変え今も頑張ってるけど、それすら最近は少し厳しそう。新宿も渋谷も店舗規模縮小してるしね。ひとつの時代がいよいよ本当に終わっていく。。。


時代が変わるのは当たり前のことで、別に悪いことじゃないし、いつまでも昔を懐かしんでいるだけでも仕方がない。

ただ、20代前半までをあの時代あの場所で過ごしたことは、間違いなく僕の人生観に大きな影響を与えている。今好きなものの多くはあの頃に触れたものの延長線にあるものだ。

最近とある本を読みながら、ふとそんなことを考えた。その本はまだ読んでる最中なので、読み終えたら改めて感想でも書こうと思う。

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