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異世界の島 第1章(第7話 水がない!)

烈が言う。
「時計を作れないけれど、よく考えると方位はわかるんじゃないか?太陽が沈む向きが大体西ということで。」
「確かに!さすが烈くん。太陽が沈む時に方角を決めようか。」
「烈もたまにはやるじゃない」
「さて、とりあえず森に行くことにするか。」

3人は、並んで森の中に入った。
涼しい風が顔を撫でていく。
風花は珍しそうに周りの木々を見ている。
漂流して無人島に流されたというのに、平和すぎる気がすると私は感じていた。一体いつになったら家に帰れるかもわからないというのに。

風花が赤いイチゴを思わせるものを指差している。
「あの実は食べられるの?烈」
「少し待って、風花。調べるから」
ペラペラめくる音が小さく響く。
「っと、200pの一番上に、イチナム(空想の食べ物)って書いてある植物があるんだが、水穂さんこれあってますか?」
面白い聞き方だな、と思いつつ、私はページを覗き込んだ。
「どれどれ?うわっ」
そのページには、びっしりと細かい字で植物の情報が書かれている上に、幾つかのカラーの写真まで載っていた。私は歯磨き粉の裏面を覗いているみたいだなと思いつつ、写真と木を見比べた。
「多分合ってるよ。」
「じゃあこの木の実は食べるんじゃなくて飲むってことか。へぇ〜」

その時、何も話しかけられていない風花が割り込んできた。
「烈、飲むってどういうことよ?実を飲むなんて意味がわからないわ。」
話しかけられた烈は、本から顔をあげず答えた。
「風花、この実は果汁が沢山含まれているんだ。それを絞って、8:2の割合で水で薄めて飲むと、とっっっっても美味しいんだって。」
「なにそれ!早速飲みましょうよ!あ、水がない…」
2人はそこで私を見た。

「いやいやいやいや、なんで2人とも私を見るの。」
まるで犯人はあなたですって言われて時のような状態だ。
「れ、烈くんの冒険ブックに載っていないの?」
烈は、少しクスッと笑った後、ページを捲り始めた。

「えーっと確か最初の方に書いてあったはず…あった!36ページ、『水の見つけ方そして作り方。皆さんは毎日水を飲んでいると思います。人間の体は、水がなければ生きていけません。もし、周りに目に見える水がなかったら…そんな時にどうすればいいかを教えます。』だって。俺たちは森の中にいるから、この『森の中にいる場合』だな。」
烈は目を細めて読み進めていく。
「『森の中にいる場合、必ずどこかに水はあります。なぜなら木は水がないと生きていけないからです。周りに高いところはありませんか?その場所に登ってみて、谷があるか探してみて下さい。そこには川や湧水が流れている可能性が高いです。
 海沿いにいる場合、あたりを見回して色んな植物が生えているなら海岸に沿いながら歩いていくと必ずどこかに川の河口があるはずです。頑張って探して下さい。
 周りに植物がなく、海はあるのなら海から水をとってきて、下の図のようにして水を取ってください。そのまま飲むと危ないです。』
 …」

「…海沿いに探しに行きましょう。余り森の奥に入っているわけでもないし。」
「そうだね。」
私たちはイチナムの実を持ち、来た道を戻って水を探しに行くことにした。