#4 『アイデア』楽譜解説
こんにちは、suisaiのKomeiです
この度、suisaiのOfficial Score Shopが開設されました
第一弾として、僕が編曲を担当した星野源さんの楽曲『アイデア』が発売中です
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そこで今回は楽曲『アイデア』について、編曲者の立場から編曲の背景やねらい、楽曲の解説などをしていきたいと思います
◆まえがき
本作は、僕(Komei)がsketch作品として1番のみ編曲した後に、星野源によるFull Ver.公開を受けて、suisaiメンバーのRyuと作編曲家の倉田京くんが2番以降をリレー形式で書き足して完成した作品です
当時、一見一聴してすぐに構想がまとまったため、数時間で一気に書き上げた記憶があります
(sketchって何?という方は今後のblogをお楽しみに)
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◆原曲の特徴的な要素
・作詞・作曲:星野源
彼の作る作品からは「人の”生”活には当たり前のように常に”死”の影がある」という普遍的なメッセージを感じます
僕が編曲をした時期はドラマOPの1番部分のみしか公開されておらず、源さんらしからぬ前向きな推進力の強い曲だなと若干の違和感を覚えたのですが、フルが公開されて「あ、やられたな」と脱帽しました
彼ひとりが歩み生み出してきた幾多の「アイデア」には一人では太刀打ち出来なさそうだったので、三人寄れば文殊の知恵とばかりにリレー形式に初挑戦しました
・連続ドラマ小説「半分、青い。」主題歌
本作が主題歌となった作品は、片耳が不自由な女性が主人公の物語でした
キュートかつユーモラスで、色彩豊かな素晴らしいOP映像も印象的で、人と違う感覚を持つ人間の個性を優しく強く後押ししてくれるような感じを受けました
◆編曲のねらい
・テーマ:「一筆書きの風」
初めて原曲を聴いた時、強くて優しい風がばーっと自分を運んでいくような感覚がありました
ふと、昔読んだゴルフ漫画『風の大地』という作品に登場した、「風の色が見える」女性の話を思い出しました
「風」にはたくさんの色の種類があり、それぞれの色を持った風は、吹き上がったり、潜ったり、ぶつかりあったり、時に対流したりしながらひとつの大きな流れを作り、ここではないどこかへ強烈なエネルギーで向かっていく
そんなイメージを曲の中に落とし込むことを、まず第1に考えました
また、OPの映像の中で、絵筆を持って線を描くシーンがあり、そこから「同時に6本の筆がリアルタイムで独立して動き、重なりやにじみを生み出す」という現実には起こり得ない現象を音楽上で表現しようという着想を得ました
現出する情景としては具象ではなく、やや抽象画に近いイメージを持って書きました
◆解説
今回は僕(Komei)が担当した部分のみの解説です
まず、全体を通じて、個々のパートのメロディラインをはっきりと主張させつつも、外からは一本のメロディラインに見えるようなバランスを意識して書きました
楽曲の各所に、Introの「吹き上がる風のモチーフ」(FGFCの音型)を様々な形で配して、曲全体にエネルギーと統一感を持たせています
1小節目~8小節目:原曲で印象的なマリンバのメロディラインを複数パートに分割することで、立ち昇っては潜る多層化した風を表現
17小節目~22小節目:朝のサウンドモチーフ「鳥」「朝露」/パートを3セクションに分割(リードと字ハモ、グルーヴメイク、装飾)
25小節目~30小節目:Introと同様のテクニックに加え、コーラスの旋律も分割してより複雑に混ざり合う色の表現
32小節目:アイデアが浮かぶ瞬間、ひらめきのモチーフ
36小節目~37小節目:次々と吹き上がるカラフルな風
45小節目~48小節目:バラバラだった風が一つにまとまって強く押し上げてくるシーンを上向音型で表現
135小節目~138小節目:風が弱まって一瞬の凪、色を持った風が止む瞬間に形を失って柔らかく混ざり合う
140小節目~:バーバーショップスタイル/再び吹き上がった風が、今度は各々の境界線をじりじりとすり合わせて混ざり合い・せめぎ合いをしながら、一つの方向へと一気に突き進んでいくさまを表現
以上、ざっくりとですが『アイデア』の編曲譜についてお伝えしました
ぜひ音源を聴きながら、楽譜を読み込んで頂ければ嬉しいです
また、suisaiのLINE公式アカウントでは僕を含めたメンバーとメッセージのやり取りも可能です
楽譜についての質問やコメントなどもお待ちしています
それでは、またそこらへんでお会いしましょう
Komei
▼『アイデア』の音源はこちら(sketch ver.)
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