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子供を捨てるという選択 引きこもりの家族を抱えた方々へ

私は西洋占星術師としての経歴が長いので、昔に鑑定したお客様から丁寧な「お礼状」をいただくことがあります。ほとんどの場合メールなのですが、個人的に面識のある相手だと、直筆の手紙や写真付き年賀状が来ることもありますよ。

一番多いのは「スイレン先生が相性バッチリだとおっしゃってくださった恋人と、この度めでたく入籍いたしました」という結婚報告です。生まれたばかりの赤ん坊を腕に抱え、旦那さんと一緒ににっこり微笑んでいる写真が添付されていたりします。

それ以外にも、不妊治療が成功して子供を授かった方、乳がんの手術がうまく行って無事に社会復帰できた方、転職先で円満な人間関係に囲まれて充実した人生を送っている方などから心のこもったお礼状をいただきます。

私にとってそれは「この仕事をやっていて良かったな~」としみじみ感じる至福の瞬間でもあるんですね。

ところが、今まで一度もお礼状がいただけなかった案件がひとつだけあります。それは「引きこもり相談」を依頼された顧客からの事後報告です。彼らのメールには「すみません、せっかく先生にアドバイスいただいたのですが、3年経った今でも家から一歩も出られません」というような悲痛な叫びが綴られています。お礼状ではなく「詫び状」のようなものが多いんですね。

「引きこもりの相談」は私への依頼の中では比較的多く、記憶にあるだけでも今まで120件以上は手掛けたと思うのですが、今のところ「おかげさまで社会復帰できました」という明るい報告は一件たりとも私の元には届いていません。それだけこの問題は「根深くて解決が難しい」ということなんでしょうね。

相談の半数は「引きこもっている本人」からの直接依頼ですが、もう半数は「引きこもり(または不登校)の子供を抱えた親御さん」からのものです。

本人からの依頼であれば、彼ら自身が「何とかして現状から抜け出したいと強く願っている」という証拠ですから、すぐに問題解決できそうなものですが、さすがに5年、10年という長期で引きこもっている人にとって「勇気を振り絞って現実社会に一歩を踏み出すこと」は決して簡単なことではないようなのです。

引きこもる最初の原因は大抵の場合「人間関係のつまづき」にありますが、引きこもっている間に対人コミュニケーション能力が向上するはずはありませんので、むしろ最初の頃よりも「状況が悪化している」ことがほとんどです。

心も一種の「筋肉」のようなものなので、外的な負荷を長期に渡ってかけられていない心は「だるんだるんに緩んだ三段腹状態」になっているんですね。そんな「心の筋肉が衰えた人」に社会復帰しろというのは「寝たきり状態だった人に、いきなりフルマラソンを走れと言うようなもの」ですので、どう考えても無理な話なのです。まずは立ち上がるための「心のリハビリ」から開始し、徐々に「心の筋トレ」に進んで行かなければいけないんですね。

現実的に社会復帰を目指すのであれば、職業訓練所にしばらく通うとか、福祉作業所で働きながら1年ぐらい対人コミュニケーション技術を学ぶなどの「段階的なステップアップ」が必要となります。

福祉作業所とは、精神障害や発達障害を抱えた人が、簡単な事務や軽作業、調理などを体験しながら少しずつ社会復帰を目指す福祉施設です。障害者手帳を持っている人ならすぐにも入所できますが、それを持っていない不登校児や「引きこもりの人」なども通所できる可能性がありますので、最寄りの役所の福祉課などで相談して見ると良いでしょう。

まず社会に慣れることを目指すのであれば、作業も労働時間もユルユルの「B型作業所」、その次は比較的長時間働けてお金も稼げる「A型作業所」、最後は現場でのビジネスマナーなどの実践的な知識が学べる「就労移行支援事業所」に通う・・・というように一つずつステップアップして行けば、かなりの高確率で社会復帰が可能です。支援事業所への通所歴があれば就職活動自体の面倒も見てもらえますし、就労後の個別相談にも乗ってもらえますので、まさに「至れり尽くせり」なのですね。

この社会復帰ルートであれば、若年層の引きこもり(39歳以下)の場合、劇的な改善が見られる場合もあるそうです。

ところが、引きこもっている人ほどプライドが高く自意識過剰気味なので「そんないかがわしい場所で障害者なんかと一緒に働けるかっ!」なんて失礼なことを平然と言い放ったりするのです。

私が手掛けたケースだと、福祉作業所への通所を勧めた途端に「私はもう立派な大人なんですから、子供扱いしないでくださいっ!その気になれば私はいつだって普通の会社に働きに出られるんですよっ!」と反論されたことがあります。・・・いや、立派な大人は、親の年金を食い潰しながら20年以上もゲーム三昧の自堕落な日々は送りませんよね?その妙に強気な「上から目線」はいったいどこから来るのでしょう?

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