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#127史料調査、書籍の編集と文字

 以前は多くの学生アルバイトを使って史料調査をよくしておりましたが、最近はなかなかそういう仕事も少なくなってきました。その頃には、入れ代わり立ち代わり来る学生アルバイトの方をどのようにして効率よく作業してもらうかに心を砕いておりました。
 今度、久しぶりにそのような仕事を引き受けることになったので、今回は大勢の人と史料調査や書籍の編集をする際に、どのような点に注意しながら作業を進めて行けばいいかという、著者なりの注意点について記したいと思います。

 書籍の編集の場合、読みやすさのために全体を統一するの方針を打ち出す必要があります。例えば、対象年齢がどの程度になるか、一般向けなのか専門家向けなのか、などです。
 例えば対象年齢を設定する場合、執筆者も編集者もMSワードなどのワープロソフトを使用する際に、小学生2年生までで学習する漢字を用いる、常用漢字を用いるなどを、「オプション」の「文章校正」の中で設定することで、そこから外れる漢字を入力した場合には、入力した文字の下に波線が出て注意喚起してくれるため、容易に統一した字遣いを行うことが出来ます。昔であれば手書きの原稿を扱う訳ですが、執筆する立場であれ、編集する立場であれ、頭に叩き込んでいないといけないとなります。しかし常用漢字は2000字程度なので、まあ大体何とかなります。

 史料調査の場合は複数の人が関わって作業をするため、統一されたルールで作業を進めないと混乱が生じます。先に述べた字遣いでは、常用漢字を用いるのか、旧字体まで使用出来るようにするのか、あるいは合体字も使用するのか、などです。
 筆者などは、さまざまな人が関わる場合には、常用字体を使用するようにし、合体字などは使用しないようにすることで、出来るだけ複数のパソコンでデータ使用することを想定して、文字化けなどが起こることを未然に防ぐことが出来るように検討します。これは入力データを印刷会社へ入稿した際も同様で、印刷会社が使用していないフォントで、こちらが旧字体を用いて入力していた場合に空欄になる、あるいは文字化けするということもあるためです。
 調査する対象によって、どうしても旧字体を使用しないといけないという制限があることもあります。古い時代であれば、その字遣いをしているということ自体に意味がある場合があるので、そのばあいは旧字体などを用いることをする必要がありますが、著者が関わるような、こと近世、近代の史料調査においては、あまり旧字体を用いる意味は見出せません。そのため、その後の作業で合理的に進めることが出来る字遣いを、調査の段階からしておくことで、その後の作業が円滑に進めることが出来ると言えるでしょう。
 以前に著者が編集担当をしていた史料調査で、データベース化する際の事前のデータの校正の際に、字遣いをルール通りにしていなかったために正確な文字が入っていない、あるいはスペースになっているということがあり、校正の際にその間違い探しに忙殺される、という経験がありました。字遣いなんてくだらない問題だと思われるかもしれませんが、あからさまな間違いでなければなかなか見落としがちになるので、出来得る限りに事前に手を打っておいて労力を軽減ることにこしたことはない、というように思います。

 それらの作業の際に現場で作業する人たちに、ルール統一に使用していたのが下記の書籍です。割合安価な書籍ですので、入手はしやすいと思いますが、少し古くなっている可能性もあるので、もしご使用になりたい場合は最新版に当たっていただけると良いかと思います。

・『常用漢字字体一覧-デジタル原稿の漢字の知識1』(日本エディタースクール、2005年6月)

 最近は文字化けや文字が飛ぶことも少ないのかも知れませんが、大人数で作業をする場合には、異なるパソコンを使用することもあり、またWindowsとMacの間でのデータのやり取りや使っているソフトのバージョンの違いなども発生することもあります。印刷会社にデータを入稿する際には、先方の状況も判りませんので、非常に古い機械やソフトなどを使用されている場合もあります。そういうこちらには不備がないけれども、予想出来ないトラブルというのは、多くの人を介する仕事を行う場合には発生しがちです。このようなトラブルを未然に防ぐことの参考になるかも知れませんので、言わずもがなのことかも知れませんが、こちらで今回ご紹介しておきます。

いただいたサポートは、史料調査、資料の収集に充てて、論文執筆などの形で出来るだけ皆さんへ還元していきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。