#sp09.すべての人に平和を/クリスマス特別版

おはようございます。12月ももう20日。いよいよクリスマスも目前に迫ってきましたね。今朝もクリスマス特別版、前回と前々回に引き続いてクリスマスソングを3曲取り上げます。

さて、ロシアによるウクライナ侵略はいまだに続き、そしてイスラエルによるガザ地区への攻撃も続いていますね。クリスマスにもかかわらず、戦闘が続き、悲惨な状況に追い込まれている人々がいます。残念なことですが。

そういった戦争や戦闘はもうこりごりだ、戦争をやめようと訴え、平和を祈るクリスマスソングも存在します。今朝はそういった3曲です。


1曲目は今さら説明不要の超有名曲。ジョン・レノンとオノ・ヨーコの"Happy Xmas (War Is Over)"。

HAPPY XMAS (WAR IS OVER). (Ultimate Mix, 2020) John & Yoko Plastic Ono Band + Harlem Community Choir

「もし君が望むなら戦争は終わる、今すぐ」と締める曲ですね。そして新しい年こそ、恐怖に怯える年にならないようにとも。これ以上ないくらいのストレートなメッセージが込められています。

いまだ悲惨な犠牲を出し続ける戦争。テレビやネットで見るそんな戦争の状況が、争いから遠い場所にいるわたしたちの心にどこか影を落としている。だから争いや戦争がなくなれば、心からクリスマスを楽しめる、そんなふうにも解釈できそうな歌詞の内容です。

この曲の冒頭では「この1年何をして過ごした?」との問いかけがありますが、これは親しい人への個人的な質問以上の意味があるようにも思えますね。たとえば、世界の平和につながるようなことを何かした? みたいに問われているような。

そう聞かれても、「平和のために具体的な行動をしました」と胸を張って言えないのもまた事実。じゃあ実際に何ができるかというと、と考えるとこれもまた難しい。でも、難しいからこそ、小さなことからでもやっていくしかないですね。

戦争をやめろ、戦争ができるような準備もやめろ、と訴えることくらいかな。でも、何もしなければ平和もやってこない。迷いながらでも、戦争の終結を訴えるしかない。

ところで、この曲が発売されたのは1971年の12月。もう52年も前の曲なんですね。それにしてもこの曲の訴えるメッセージが今でも通じるということは、半世紀以上も人類は争ってばかりという現実を示すものでもありそうです。

一刻も早く"WAR IS OVER!"と言える日が来るといいのですが。


2曲目はこちら。ビング・クロスビー、デヴィッド・ボウイの"Peace on Earth/Little Drummer Boy"。これはストレートな反戦歌というよりも、もっと広く世界の平和を祈る曲。

Bing Crosby, David Bowie - Peace On Earth / Little Drummer Boy

「世界の平和を祈る」と書きましたが、この曲はもっと広い意味というか、キリスト教的な価値観の「世界の平和」を祈る曲と受け取れなくもない。けど、敢えてそういったキリスト教的な要素を引っこ抜いてみても、世界平和を祈る曲としても通じそうです。

タイトルにもなっている"Little Drummer Boy"とは、そのままドラムを叩く男の子のこと。この曲は「生まれたばかりの王様」について歌っていて、その王様の誕生をドラムを叩いて祝い、そしてその王様の下で世界の平和がやってくるようにと願います。

ドラムというとにぎやかなイメージをしてしまいますが、ここでは荘厳なドラムの音色を、主にビング・クロスビーがスキャットしてますね。さすがの円熟みのある音色です。

「生まれたばかりの王様」は、イエス・キリストのことを指すばかりでなく、広くこの地球に生きるわたしたちみんなのことでもあるんじゃないかな。みんな赤ちゃんとして希望とともに生まれた。その赤ちゃんが平和に生きられる世界を、と祈ります。

現実の世界の戦場では病院さえ攻撃され、赤ちゃんもまた生命の危機に瀕していますね。赤ちゃんは無力ではあるけれど、希望の象徴であるのみならず、平和の象徴でもあるはずです。

そんな赤ちゃんさえも攻撃してしまう戦争とそれが存在する世界には、どこにも希望などなさそうにさえ見えますが、それでも、赤ちゃんが成長した先の世界が平和であるようにと願うばかりです。

願うばかりじゃなくて、本当はもっとひとりひとりの具体的な行動だって必要なのはわかってはいるつもりですが。


3曲目はこちら。ジョナ・ルウィの"Stop The Cavalry"。Cavalryとは騎兵隊のこと。直訳すれば「騎兵隊を止めろ」となるとおり、この曲は明確に反戦歌です。

Jona Lewie - Stop The Cavalry

「クリスマスには家にいたい」と、この曲は繰り返します。誰だってクリスマスなのに戦場に居たくない。そんな気持ちがあふれています。だから、曲の中の「私」は大統領選挙に立候補して、当選したならば、「騎兵隊を止めろ」と命令すると歌います。

クリスマスには仕事でさえしたくないのに、それが戦争となるとなおさらいやですよね。第一次世界大戦時には塹壕の中でクリスマスを迎えた兵士がたくさんいたはずです。クリスマスまでには家に帰れると言われたにもかかわらず。

そんな若い兵士たちは塹壕の中で雪の降る空を見上げて絶望した様子にも言及しています。また、この曲は核兵器が使われたあとの放射性降下物にも言及しています。核放射性降下物が降る中でも、愛する女の子と踊れたらどんなにいいだろうかと夢想する兵士として。

けれど、核放射性降下物は言うまでもなく、第一次世界大戦の塹壕の中に降る雪とは比べならないほどの危険性を秘めていますね。だから第一次世界大戦時に降る雪とは比べ物にならないくらいの、核戦争の残虐さや残酷さを暗示しているとも言えそうな曲です。

この曲の曲調はなかなかユーモラスなリズムの中で、淡々とした歌い方が特徴的です。だからこそというべきか、ある意味では戦争に対する無力感さえも伝わってくるような、そんな曲となっています。

現実の世界ではいまだ戦争は終わらず、さらには核兵器があふれていますね。そういったものは必要ないにもかかわらず。そう考えると、少々無力感にも陥りそうな気分にもなりますが。

それでもクリスマスはせめて、戦火の中にいる人々が少しでも平穏に、そして安心と安全の中で過ごせるようにと願わずにはいられません。


※ひつじのはなし|Good Morning! Musicは、水月羊(the Maverick Black Sheep)が大胆不敵にも音楽(主に洋楽)エッセイを書こうという目論見と試みです。洋楽の曲を聞いての感想や解釈のエッセイ、コラムとなります。気になった曲の歌詞の意味はそれぞれ訳してみてください。また違った見方ができるかもしれません。


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