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あさイチ「子供のいない人生の生き方」特集

は?

なぜ「子供がいない人生」を「生き方」として特集するのか。
そもそも「子どもがいる人生が幸せである」という前提があってこういう人たちはまれで最近増えてきたから「認めてあげなければいけない」みたいな感じがあるからじゃないのか。

これも社会構造の中で「結婚するのが一人前」「結婚したら子供を持つのが当たり前」とされてきたものの弊害だ。

氷河期世代と呼ばれる人たちの大半が「第二次ベビーブーム」で生まれてからずっと大勢の中で競争を強いられてきた人たちだ。
優秀な人たちでも低賃金の派遣やアルバイトでしのぎ、生活するのにいっぱいいっぱいで子どもどころか結婚すらできない人たちも多い。
その中で趣味に走る人たちも多いがそれまで「当たり前」とされてきた社会構造が当たり前に形成できなくなったことが一番の問題であり、その中で結婚出産ができなかった人たちが増えたのを社会の側から「認めてあげないと」となっているこの風潮。

は?

でしかない。

「子供が欲しい病」

子どもが欲しくなくて子どものいないコラムニストが出ていたが、自分を語る時に30代の時に「子供が欲しい病」になった、と紹介していた。

自分の子どもが欲しい時期があったをこういう言葉で表現しているのだろうが、子どもがいる人や今まさに欲しいと思っている人には酷い言葉である。

子どもが欲しいと思うのはその人にとって意外でその時だけの衝動であっても、どちらかといえば否定するような意味合いを持つ「病」という言葉をくっつけるのはいかがなものか。
また、本当に望まない病の中にいる人に対してそんな衝動と同じにされてしまうのは失礼な話である。

普通に「子供が欲しいと思った時期」でいいのではないか。

何かにつけちょっといい風の言葉を使ってみようとか、ちょっと上品に自虐してみようとか、自分をいい風に見せようとかいう言葉で本当に自分勝手なんだな、ひいてはこういう自分勝手な人だから子どもを持たなかったんだな、と思われてしまう。

子どもを持たない人は自分勝手と言われることを補強してどうする。

本当に迷惑である。

子供を持たない自由

これもまた人による言葉なので迷惑なものである。
自分が子どもを持たない、と意志をもってもたない人にしか与えられない言葉だ。

授からなかった人にとっては自由を謳歌しているわけではなく、答えのない不自由さをどうすればいいのかわからずに過ごしている人もいるだろう。
それでも何とか折り合いをつけた話も多くあったが、折り合いをつけられずいるのに「そういう自由もあるものね」と言われても傷つくだけじゃないのか。

社会構造の中で不完全、不自然とされ見ないようにされてきた人たち

私の中では子どものいない人たちは家社会が色濃くある中で置いてけぼりにされている人たちだ。
家は子をはぐくむ場所と定義されている以上、子どもがいない人は不完全であり不自然な家族とされるのだ。なのでいても見ないようにされてきた。
見なければならないときは可哀想で哀れみを向けなければならないものにされてきたのである。

私は「夏目友人帳」が好きでよく見ているが、この漫画の中で親のいない主人公が初めてほっとできる場所を提供してくれた藤原夫妻という登場人物が子どものいない夫婦である。

元々平成前期に始まった連載漫画なのでその頃の社会意識が色濃く反映されている台詞が良く出てくる。
主人公夏目が藤原夫妻に行くことになった時のことを語る親戚の人たちは一様に

「子どものいない方たちだからちゃんとお世話をできるのかって思ったのよ」

と言う。
遠縁ではあるが夏目を引き取る先としても候補として上がっておらず、引き取ると名乗った時も「お金目当て」と言われている。どこか不完全で自分勝手であるような言い方をされる。

藤原夫妻本人たちはそういう面も含めて考えに考えて引き取ることを決めているのに。純粋に困っている子どもを見過ごせなかっただけなのだ。
引き取った後は「お金のことは心配しないでいい」と言うとおり、夏目が来たことで起こりうるお金を含めた責任もとるつもりもある。

だが、そういう人たちは夏目の親戚の中でも「珍しい」と言われ、今まで「いるけれどいないもの」とされてきた。

そういった背景を明らかにせず、ただ「子どものいないひともいるのでこういう言い回しは避けましょう」「こういう言葉で自分の中で納得できますよ」とかではない。

「多様性」を打ち出しながら「一様性」に落とし込んでいくメディア

いろんな人がいますよ。仲良くしましょうね。という感じのメディアの報じ方が本当に嫌気がさす。
今日の特集もそうだ。

結局のところいろんな事情を抱えてはいても「子供のいない人」と一括りにしていく。
シングルの人、経済的事情を抱えた人はその中に含まれていないので、そのくくりの人は厳密にいえば「結婚していながら経済的余裕もあるのに子供がいない人がどう生きているのか」だ。

そこで零れ落ちたシングルの人や経済的な事情を抱えた人の生き方はどうなのか?
最初に書いたように今の40代後半から50代なんて経済的事情で結婚できずに子どもも持てない人もたくさんいる。
それをすべて「子供がいない人」とし、あたかもその人たちが自分の意志で選んだ「生き方」であると決めている。
1時間も使って話すのなら全部紹介してもいいのではないだろうか。
生きにくさはこの社会構造や今の40代の人が20代だったときの社会の困難さを紹介すればわかるのではないか。

そしてその前から一定数いた人たちを自分たちが見ないようにしてきたのに「最近自由な生き方が選べるようになって増えてきた」ような言い方をするのは、やはりおかしいことなのではないか。

結局のところ想像力が足りないのは自分の周りしか見えていないメディアの方ではないだろうか。

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