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【プロセスの対立は長期に影響を及ぼし、マネージメントで直後の影響を緩和できる】conflict transformation:a longitudinal investigation of the relationships between different types of intragroup conflict and the moderating role of conflict resolution

概要

本縦断研究では、課題、関係性およびおよびプロセスの対立の関連を長期にわたり調査する。また、特定の形態のグループ内対立が時間の経過とともに他の形態の対立の出現に関連するか判断する際の対立解決の役割にも焦点を当てる。
調査の結果、チームのやり取りの初期段階でプロセスの対立が発生すると、マイナスかつ長期にわたる影響が生じることが示された
具体的には、チームのインタラクションの初期にプロセスの対立が発生するが、課題や関係の対立が生じないことが、他のすべてのタイプの対立より高いレベル対立につながることが明らかになった
また、メンバーがともに過ごし始めた時点でプロセスの対立を解決できれば、時間の経過とともにプロセスの対立が他の種類の対立に及ぼす影響は限定される可能性があることも示された

(プロセスの対立)

問題と目的

  • 対立はダイナミックだが、時間経過に伴う相互作用を調べた研究は少ない

  • 本研究では、課題の対立 (目標の明確化のような仕事の問題)、関係性の対立 (性格の衝突のような人間関係の問題)、プロセスの対立 (ミーティングのスケジュールや仕事の割り当てのような)の時間経過に伴う関連を明らかにするなど)

  • Behfar et al (2008) を除いて、研究ではプロセスの対立が含まれることがすくない

  • プロセスの対立がチームに及ぼす影響を考慮すると研究する必要がある (Hinds & Bailey, 2003)

  • 対立解決の研究まで範囲を広げる (Jehn et al., 2007)

  • 対立の種類の変化と伝播の可能性を軽減する重要な要素として対立マネージメントを導入し、対立マネージメントに関する研究を特定の対立の種類に関連付ける重要性を示唆した過去の研究を基盤にしている

理論的背景

  • 対立の種類は、課題の対立、関係性の対立、プロセスの対立に分けられる (Jehn, 1997)

  • 異なる種類の対立は、異なる種類の結果をチームにもたらす (Jehn, 1997; Jehn & Mannix,2001; Matsuo, 2006)

  • 対立はチームにネガティブな影響を及ぼす (DeDreu & Weingart, 2003)

  • 情緒的反応を増大させて課題を妨害する (Jehn & Bendersky, 2003)

  • プロセスの対立は、よく関係性の対立として研究されているが、チームに悪影響を及ぼす (Vodosek, 2007)

  • プロセスの問題では個人の価値や敬意が問われるため、プロセスの対立は特にこの感情の影響を受けやすい可能性がある

  • たとえば、自分が嫌いな仕事、または自分よりも劣っている仕事を任されたと感じているメンバーは、その仕事が自分の個人的な能力に対する他人の評価に基づいて割り当てられたものであると思い込み、対立を処理するために非常に個人的で感情的な性質を与えている可能性がある

  • したがって、プロセスの衝突は、人間関係の衝突と同様に、パフォーマンスに一貫してマイナスの影響を与える

  • これらは主に、そのような対立に伴う感情に起因する

  • 課題の対立は、チームの多様な視点や需要を可能にし (Schweiger et al., 1989)、メンバー間の理解が促進される (Olson et al., 2007)

  • 一方で課題の対立により、メンバーが目の前の課題に集中できなくなる可能性もあり、その理由は、課題の対立が人間関係と深く関連していることが多いため (DeChurch et al., 2007; Simons & Peterson, 2000; Tidd et al., 2004)

複数の種類の対立の相互作用

早期の対立:

  • 早期の対立は長期化することを提案したい

  • 関係性の対立は強く感情的で (Jehn & Bendersky, 2003)

  • 関係性の対立は、チームメンバーへのネガティブな原因帰属を生じさせ、敵意や対立のエスカレーションのサイクルを生じさせる (Baron, 1991; Janssen et al., 1999)

  • 人間関係の衝突でイライラしている人は、他の人のアイデアを妨げるために人の意見に異議を唱える傾向があり、その結果チーム内で課題の対立が生じる可能性がある (Jehn,1995; Pelled et al., 1999)

  • 政治的闘争をしているリーダー間では、課題への考え方がゆがめて理解される傾向がある (Eisenhardt & Bourgeois, 1988)

  • 早期の関係性の対立は、のちのプロセスの対立を生じさせる。例えばDesivilya & Yagil (2005) は、関係性の対立はグループに負の感情を生じさせると示している

  • したがって本研究では、関係性の対立と同様に、チームのインタラクションにおける初期のプロセスの対立はのちにすべての対立形式につながりやすいものと仮説を立てる

  • 初期のプロセスの対立は、リソース割り当てミス、チームメンバーへの不適切な課題の割り当てを表現している可能性がある (Jehn, 1997)

  • プロセスの対立が伝播するもう一つの理由は、本質的な悪影響

  • ある事象が自分の望みと矛盾すると認識されると課題や資源の不適当な割り当てを認識するプロセスの対立など、マイナスの影響が生じる可能性が高い (Roseman et al., 1996)

  • 本研究ではプロセスの対立が関係性の対立に波及すると仮定するが、これはプロセスの対立 (問えば、課題の委任、役割の割り当てなど) はチーム内での潜在的な能力や敬意という個人的意味合いが反映される可能性が高いためである (Jehn & Bendersky, 2003)

  • (こういう当たり前のことはバカバカしいからか学術領域であまり目にしたことがない

  • (素晴らしい

  • 役割の割り当てのようなロジスティカルな問題が生じると容易に関係性の対立が生じるが、補足や緩和する情報がない場合メンバーは不利な割り当てが課題関連の要因ではなく個人的な要因だと理解する可能性が高いため (Ajzen ' Fishbein, 1975; Kelley, 1973; Trope, 1986)

  • (これも素晴らしい。この点をもし課題や役割をアサインする側に主張したなら、そんなことはない、勘違いだと同じ説明を繰り返されて意気消沈するだけ

  • 例えば課題の委任についてメンバー間で意見が異なる場合、委任された課題によって個人的に侮辱されたと感じるメンバーは、なぜ課題がそのまま委任されたか理解できず、侮辱された感情が関係性の緊張につながりうる

  • したがって、プロセスの対立は時間経過とともに関係性の対立に変化すると仮定する

プロセスの対立は課題の対立も生じうる

  • 最後に、チーム形成早期の課題の対立は、後期のすべての種類の対立を生むと仮定する

  • オープンなディスカッションの風潮はポジティブ・ネガティブな影響の両側面を含む (jehn & Bendersky, 2003)

  • 課題の対立は誤解を生じて個人的な攻撃をうみうる (Simons & Peterson, 2000; Yang & Mossholder, 2004)

  • なぜなら、チームメンバーは認知的な不合意を個人的な対立から合理的に切り離すことが難しいためである (Jehn & Mannix, 2001; Mooney et al., 2007; Simons & Peterson, 2000)

  • 先行研究は課題の対立と関係性の対立の強い関連を支持しており (DeDreu & weingart, 2003; Mooney et al., 2007; Simons & Peterson, 2000)、なぜなら、課題の対立が生じた場合には、日合意をメンバーへの嫌悪や好悪と関連付けてしまうためである

  • (これこそ組織心理学という記載)

  • さらに課題の対立は、プロセスの対立に転嫁する

仮説1:チーム形成早期の関連性の対立は、中間点、最終点のチーム内の3種類の対立を予測する

仮説2:チーム形成早期のプロセスの対立は、中間点、最終点のチーム内の3種類の対立を予測する

仮説1:チーム形成早期の課題の対立は、中間点、最終点のチーム内の3種類の対立を予測する

問題解決のモデレート効果

  • 対立が解消した場合、メンバーは対立を解決する方法ができたことを示している

  • 問題解決の先行研究では (Brett, 1984; Brown, 1983; Lewicki et al., 1992)、種々の対立と対立マネージメントの相互関係を調査していない

  • 初期の研究は、対立マネージメントの戦略が、課題の対立が関係性の対立として認識される可能性に影響を及ぼすことが示されている (DeChurch et al., 2007)

  • 問題解決の戦略と解決可能性の研究もある (Alper et al., 2000)

  • 例えば、対立を解消したチームはコミュニケーションと相互の尊敬が高い (Jehn et al., 2007)、チームの問題解決能力が高いとプロセスの対立がチーム内の危機的状態の質 (信頼や尊敬) から差し引かれる可能性が低い (Jehn et al., 2007)

仮説4:チーム初期の問題解決は、中間点・最終点におけるチームの対立への初期の対立の影響が緩和される

方法

対象者

  • MBAコースの学生85名、28チーム (平均年齢28.5歳)

  • 12週間のネゴシエーションコースにチームで取り組む

  • 各ネゴシエーション・ラウンドの終了後にアンケートに回答

測定内容

①課題の対立/関係性の対立 (Jehn, 1995)

③プロセスの対立 (Jehn & Mannix, 2001)

④対立のマネージメント (Jehn et al., 2007)

  • 上記から3項目を選定

  • Disagreements about the specific work being done were usually discussed and resolved

  • Disagreements about who should do what were usually discussed and resolved

  • Relationship conflicts were usually discussed and resolved

結果

記述統計

  • Time1のプロセスの対立は、Time2/3の全種類の対立を予測 (Time2の関係性の対立をの除く)

  • Time1の関係性の対立は、Time3の全種類の対立を予測

  • Time1の課題の対立は、Time3の課題の対立を予測したが、その他のどのタイムポイントの対立も予測しなかった

仮説検証 (full model, p<.10)

  • チームの数の少なさを加味して、p<.10に設定

  • プロセスの対立はTime2/3の全対立を予測し、関係性の対立がTime3の課題の対立を予測

仮説検証 (有意なパスのみ, p<.10)

  • 関係性の対立は有意でなくなったため除外

  • プロセスの対立がのちの全対立を予測

対立マネージメントのモデレート効果

  • モデレート効果の推定には、上述のフルモデルの各係数について以下の式で推定

  • b=b0+b1*moderator

  • 課題の対立・関係性の対立とのちの対立の予測を対立マネージメントがモジュレートする効果は示されなかった

  • しかし、プロセスの対立については、課題の対立 (Time2/3)、関係性の対立 (Time2)、プロセスの対立 (Time2)について対立マネージメントがモジュレート効果を示した

  • 簡潔に言えば

  • プロセスの対立は、後のすべての対立を予測しうるが

  • Time1の時点で対立をマネージメントできれば、中間ポイントにおけるすべての対立を緩和することができ、

  • さらにチーム活動終了時点での課題の対立も緩和できる

考察

プロセスの対立は、委任やグループ内での権威構造のようなものと結びついており具体的に解消しがたい側面であるため、解消されず長期に影響が及ぶ可能性がある

文献

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  2. Alper, S., Tjosvold, D., & Law, K. S. (2000). Conflict management, efficacy, and performance in organizational teams. Personnel Psychology, 50, 625-642.

  3. Baron, R. A. (1991). Positive effects of conflict: A cognitive perspective. Employee Responsibilities and Rights Journal, 2, 25-36.

  4. Behfar, K., Peterson, R., Mannix, E. A., & Trochim, W. (2008). The critical role of conflict
    resolution in teams: A close look at the links between conflict type, conflict management
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  5. Brett, J. (1984). Managing organizational conflict. Professional Psychology: Research and Practice, 15, 644-678.

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課題

問題解決の方法に結びつかない
解決すればのちの対立を緩和することは皆さんがそうだろうと思っている

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