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本屋さんのダイアナ/柚木麻子

図書館で見つけた本。柚木麻子さんは『BUTTER』を読んだことがあって、女性の描き方がとても好みだなと思っていたのでなんとなく手に取った。
だって、主人公の名前が大穴(ダイアナ)という時点で面白かった。
二人の主人公の視点を交互に物語は進んでいく。

好きなところ

「リュークス、リュークス、フィルフィルルー。なんびとたりとも、この神崎彩子を縛ることはできない。私に命令できるのは、この世界で私ひとりだけ……」

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)p342

主人公の一人、彩子が呪いに打ち勝つ瞬間。
彩子ちゃんが強姦に遭うシーンは胸が苦しかった。そして、その事実を受け入れられないで過ごす大学生活も。
しかし、自分と同じことをされそうになっている後輩を目にした時、「こんなことはおかしい!」とやっと言えたんですよね。

この呪文をみたときに、ミュージカル『ウィキッド』(Wicked)の「自由を求めて」を思い出した。誰も私の事を引きずり下ろすことはできない、私は自由に空を飛ぶ。恐怖を感じながらも立ち上がるこの曲が私は大好きだ。

震えながらも自ら立ち上がるシーンが私は好きだ。

ぐさっときたところ
終盤でダイアナは父親と邂逅する。しかし、その正体は自分の働く書店で本を盗んだ万引き犯、だし、みすぼらしい身なりで彼女とデキ婚する、と軽々と話す。
尊敬する作家でもある、自らの父の実態をまじまじとみせつけられるシーンはインパクトがあった。

作品と製作者の人格は別物として扱うべきが否か?問題ってあるよね。
もっと作者を知りたい!と思って調べると自分の理想が崩され、幻滅してしまった経験がある方もいるのではないだろうか。私はある。
これが身内だったらまぁ相当複雑な気持ちは出てくるのは想像に難くない。

大人になったからこそ、改めて少女の心の動きや、行動を懐かしく思うことはある。彼女たちと同年代の感想も聞いてみたい、と思った本だった。

使用素材
フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)
illustAC


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