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国家という名の運命共同体〜安倍元首相の訃報に接し〜

日本中に、世界に衝撃が走った今回の悲劇から丸二日以上経つ。しかしまだ体の中をもやもやとした感情が渦巻いていて、こうして何かしら言葉にして吐き出しておかないとなかなか切り替えることができずにいる自分がおり、これを記している。

客観的に自分は政治に対して特別関心が高い訳ではなく一般的だと思うが、変化の早いこの時代に歴代最長期間で日本の首相を務め、日夜ニュースを通じて言動を目にしてきた方の訃報には、(彼の政治的信条,及び政党を支持するしないに関わらず)本当に、心が痛む。個別の政策の良し悪しや批判については個々人やメディアの発信の受け取り方で異なるので具体的言及は避けるが、(結果はどうあれ)日本をより良くしようと体調が悪い中でも懸命に取り組まれていた姿は記憶にあるし、実際にお会いされた方々の声も(今回の訃報に際しての様々な方々の発信を見るに)総じて、決して偉ぶらない、親しみやすいお人柄であったことが改めて伺える。※今回の事件を経て知り得た情報の中で、安倍首相の取り組みを至極ロジカルにデータで説明したこの解説に触れることができ、その功績を確認することができた。シェアしてくれた友人に感謝。

何よりも、人生をかけて国をリードした為政者の命が、この様な個人の、理不尽な怒りや憎しみによって暴力という手段で奪われてしまったということが悲しく、甚だ許せないことであり、ご家族の心情を思うと本当に胸が締め付けられる思いである。

今回の事件に際し、2019年、映画「ジョーカー」が公開された際に感じた記憶が呼び覚まされた。周囲から蔑まされ、孤独を抱えた主人公が最終的に狂気を他者にぶつける末路が描かれるが、作品を見た帰り道、自分の後ろに常に恐怖の様なものを感じながら家路についた記憶がある。

自分と関係があろうとなかろうと、周囲や社会への漠然とした不安やヘイトが名も知らぬ隣人に理不尽にぶつけられることは今の時代では起こり得るのだと改めて意識させられたし、そういった感情に自分の知らないところで自分の挙動が影響を与えているかもしれないということにもハッとさせられた。自分から見る他人と、他人が捉える自分は必ずしも相容れないものであるのだと。

今回犯行に及んだ人物を糾弾し、ありえないと断罪することはもちろん可能だろう。(自分もそう心で叫んでしまうし、許せないという感情が溢れてくる。)しかし根本的にはそうした人間を生んでしまった心理を解きほどき、再発させない社会を作っていかなければ、(もちろん、様々な因子があるのだろうからそんな簡単な訳がないのだが)こうした事件はこれからも生じてしまうように感じる。自分自身、そんな風に自分の一生を終えることなど絶対にいやだし、そのように命を落とすことがいかに本人やご家族にとって無念なことか、想像に絶する。

安倍さんが築かれた各国要人たちとの強固な関係性はある程度は現閣僚の方々に引き継がれているのだろうが、やはり構築に時間がかかる個人と個人の信頼関係を考えると、同氏がいるいないでは雲泥の差を生む様に感じる。いわんや批判の的となるトップとして、国民やメディアからの不満にさらされながらも長期に渡り政権を運営した経験値は、一朝一夕で他の方々が得られるものではないだろう。訃報に際し世界各国の様々な反応を見るにつけその影響力の大きさを感じる。そうした意味で今回の事件の影響は、外交問題に関わらず計り知れないものがあるように思う。(安部さんご自身が誰よりも無念であったことと思う...)

円安・物価高と各国の中でのプレゼンスが一層厳しい状況にあるこの国の未来に、あまりに暗い影を落とした今回の事件。ウェブ・SNSがもたらした国境を超えてつながるボーダレス性は、ある種私たちを国家という概念から解放したかの様な感覚を与えてくれた様に思うが、一方で、負の感情を増幅させこうした悲劇を生むトリガーにもなってしまう

今回の事件を通じて、一個人のこうした行いが社会全体に影響を与えてしまうということを考えると、改めて自分たちは、国家という概念の中ではやはり運命共同体なのだと、悲しくも強く思わされた。だからこそ、社会に埋もれる声なき声にも、私たちは耳を傾けていかなければいけないのだろう。たとえそれが個々人が望む自由な社会でないとしても...

最後に、安倍元首相のご逝去に改めてお悔やみを申し上げるとともに、ご家族・ご親族・ご友人の皆様のお心が少しでも早く安らかなるものになって欲しいと切に願う。

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