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[番外編]転換期は突然に

2023年11月にはじめて正社員を雇用した。

最初から正社員を条件に雇った人ははじめてで、条件面や諸々の整備をする必要があった。
彼女には、当初、現場の出荷作業を含め、マルチに関わってもらう予定だった。しかし、財務面での経験があることがわかり、財務を中心に担ってもらうことにした。

わたしは以前から自分がお願いしていた税理士事務所に違和感があり、心から信頼できない状況が続いていた。当時の担当者とは、まったくと言っていいほど、コミュニケーションが取れなかった。前担当についても、わたしから会計事務所にお願いをして、担当を変えてもらった経緯もある。
なぜならば、嘘をつくからだった。例えば、
「税金関係の支払いの計算が間に合わないから、事務所でやります。本当はダメなんですけど、自分がまずは立て替えておきますので、また今度請求させてください。」
と当時の担当者に言っていただいたので、
「じゃあ、申し訳ないけど、お願いします。」
と甘えることにした。
3週間ほど後の監査の際に、
「先日の支払い、ありがとうございます。立て替えていただいていたお金、払いますね。」
と投げかけると、担当者はわたしに支払い明細書の控えを渡した。その日付は、その監査当日の日付だったので、不思議に思って尋ねると、
「遅れても特に問題ないので」と前置きした上で、
「先ほど支払いました」
と言った。
(だったらわたしが支払っても良かったのに)と思いつつも、自分の財務の知識や一般常識に自信が持てないせいで、それ以上追求はできなかった。
多分、彼は支払いを忘れていたのだと思う。その日、当社の監査だというタイミングで気づいて、慌てて支払ったのかもしれない。あくまで憶測だけど。

それだけではない。
当社の現金残高がとても困窮している時代の決算期には、消費税の計算もままならず、税金を支払う締め切りの前日になって、当初、想定として提示いただいた消費税額の3倍の額を言い渡されたことがあった。
なぜこんなにも大きな誤差ができるのか、と訊ねると、何かいろいろとわたしが理解できない言葉で説明してくれた。
結局、何を言っても暖簾に腕押し。なんとか支払いを済ませたが、そのあたりから担当者だけでなく、事務所に対する不信を抱くようになっていた。
実はそのあと知ったのだが、当社は当時、簡易課税だったのに、その担当者は、直前まで本則課税で計算をしていたのだ。業務が業務だけに、ミスや勘違いはあってはならないが、それでも、「すみません、勘違いしていました。」と言われれば、わたしはそこまで不信感を持たずに済んだと思う。しかし、こちらが情弱であることを利用し、嘘をつかれてはたまらないのだ。情弱だからこそ、心強い会計パートナーが必要なのに。
その事務所では、三度担当者が入れ替わった。共通して言えることは、どなたも当社の事業に興味が薄そうだと言うこと。
わたしが今、何をしていて、これから何をやろうとしているのか。事業としても財務的にも、どこを目指すのか、一度も訊ねられたことがない。
こちらも、借り入れの計画も含めて、事前の情報共有をまったくしなくなっていた。
2023年末に、顧問契約を解消したい旨を、担当者に告げたあと、唯一恩を感じていた当該事務所の所長さんにメッセージで送ると、
「 顧問契約解除の件は、担当から報告を受けております。 当事務所の方針である、会計処理を会社自らが遅滞なく行うことが、経営者が会社業績をタイムリーに把握し、ひいては会社を強くする。 という想いで関与させていただいておりましたが、残念です。」 とのメッセージをいただいた。その事務所で、唯一信頼していた所長からの言葉。
なぜわたしがこのような結論を出したのかを、まったく聞こうとしない姿勢。残念なのはわたしのほうだ、と言いたかった。

財務担当者を雇用し、彼女の力を借りて、強固な財務体制を作ろうと思った時、真っ先に考えたことは、税理士事務所を変えることだった。
その年の夏ごろから、人づてに紹介いただき、経営の勉強会を月に一度提供してくれた税理士事務所の会長さんのところで、お世話になりたいと思った。
この勉強会が、わたしに大きなきっかけを与えてくれた。
『創造勉強会』という名前で、BSC(バランス・スコアカード)で経営戦略・戦術を考えるという趣旨のものだった。
初回の宿題にSWOT分析があった。自社の強みや弱み、外部環境からの機会や脅威について挙げるポピュラーな経営分析手法だ。
ここで見出した活路が「脱生豆販売」という考え方で、その後の「ブランドづくり」へと発展するものだった。
いずれにせよ、「勉強会」と「採用」をきっかけに、12年お世話になった(地域ナンバーワンと言われる)会計事務所をやめたことが、ここ数年での大きな転機だと思っているし、大きな転機にしなければならないと、またひとつ腹をくくったのだった。


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