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○歳になりたくない

2023年ももうすぐ2ヶ月が経とうとしていますが、今年初めての投稿です。こんにちは。

今年も節分の日に1つ歳を重ねた。暦の上では春になる日、“立春”の前日が節分である。つまり冬の最後にあたる日が誕生日であることは、昔から結構気に入っている。
俳優という職業柄、年齢は積極的に公言してはこなかったが、今年で39歳になった。40歳まであと1年である。○9歳、というのはどことなく人を焦らせる。29歳の私は人生にとても悩んでいたし、19歳の私は20歳になりたくなくて泣いていた。いざなってしまえばどってことないのに、どうしてこうも重くのしかかるのだろう。

ピーターパン症候群という言葉がある。わりと有名な言葉であるが、心理学、精神学の正式な用語ではないらしい。

大人という年齢に達しているが精神的に大人になれない男女を指す言葉。カイリーは著書の中で、ピーターパン症候群を「成長する事を拒む男性」とも定義している。また同作家は、これに関連して『ウェンディ・ジレンマ』(原題:Wendy Dilemma)[1]も1984年に出版している

出典:wikipedia

男性ではないけれど、19歳の私はいわゆるピーターパン症候群だったと思う。ひとりっ子ゆえに小さい頃から周りは大人ばかりだった。児童劇団に所属していて社会に出るのが早かったのも原因の1つだろう。学校の先生もクセのある人が多く、大人に囲まれながら大人に丸め込まれる日々を送ることで中々尊敬できる人を見つけられず、そうなってしまったんだと思う。

思春期はわりと丸め込まれたまま疑問を持たずに過ぎてしまった為に、私の反抗期は遅れてやってきた。それが爆発したのが20歳前後だったのだ。「大人なんて汚い奴らばっかだ。子供の言うことなんか全く聞いてくれない。そんな大人になるくらいなら死んだほうがマシだ」と思っていた。今で言う中二病と言うやつのような気もするが、当時は真剣にそう思っていた。

しかし、大人はなってみると意外と楽しかった。自分の責任をもてる範囲でかなり自由に楽に過ごしていた。色んな人と出会い、色んな経験を積むことで良い意味で人の目をあまり気にしなくなり、自分らしい人生を謳歌できるようになっていった。

そして10年経って29歳である。
俳優としての生き方に悩んではいたものの、人間としてはむしろ「30代楽しみ〜」位の気持ちでウキウキしていたが、世間の目は30歳になった途端にはっきりと変わった。自分より年下の子とわりとフランクに話していても年齢がわかると途端に敬語に変わる。映像のオーディションも全く通らなくなった。すると段々今まで着ていた服なんかも若すぎるような気がして来て何を着たらいいか分からなくなってしまったのだ。まだ若いつもりの自分の意識と世間の目の間に乖離が生じて迷路に迷い込んでしまったのである。そんな30代とも何とか折り合いをつけたところで妊娠出産とコロナ禍でよくわからない中、5年程を過ごそうとしている。

どうしてこうも年齢はついてまわるのだろう。数字でイメージされるのが嫌で、オーディションでは聞かれない限り年齢を言わないようにしていた。非公開にしないまでも、年齢ではなく演技で可能な範囲を見て欲しかった。

皆がみんなそうではないだろう。こう文字にしてみると年齢を過剰に意識しているように見えるかも知れないが、基本的には気にしていないし気にしたくないのだ。ただ、恐らく女性は特に年齢に測られる機会が多く、その言動に傷付くことも少なくない。自分自身も「最近の若い子は」とか「おばさんが」とか口にしないよう気を付けている。

最近、あいみょんの『双葉』という曲をよく聴いていた。

君も大人になったら
恋をするんだよ
運命の人に出会うまでは
傷が絶えないかもだけど
悲しみなんかは気づけば雨になる
心耕し 花が咲くまで
可愛く揺れなよ 双葉

あいみょん『双葉』

サビのこの歌詞が可愛らしくて好きだ。するとYou Tubeのコメント欄に「19歳になりたくないと言っていたあいみょんがこんな歌詞を書くようになるなんて感慨深い(意訳)」と書いてあるのを見つけた。調べてみるとそのまま『19歳になりたくない』というタイトルの曲があり、聴いてみるととても懐かしい気持ちになった。あの頃あんなふうに苦しんでいたのは私だけじゃなかったんだな、と思った。

強くはなりたい でも弱くもありたい
私のままでいたい

思い出せないもの どこかに忘れてしまった宝物
一度握った手も 知らぬ間に離れてしまったんだ

大人になるたびに
見たくないものを見ては 泣いちゃうし
本当の自分に気づくことは少し怖いんだ

あいみょん『19歳になりたくない』

いい歌詞である。
あの頃の私に聴かせてあげたい。
気になった方はぜひ聴いてみてください。

ちなみに朝井リョウさんの『もう一度生まれる』という本も大人になる前の葛藤について描かれた短編集でとても素晴らしいのでぜひ。

39歳の私は19歳のときに思っていたものとは全然違うけれど、悩んだり迷ったりしながらも何とか生きているし、だからといって100%楽しみだけで出来た人生じゃない。それなりに悩みながら色んなことと折り合いをつけつつ、ささやかな幸せを探す日々である。あいみょんの曲を聞いてこの記事を書いてみようと思ったのだが、19歳の私に「大人になるのも悪くないよ。その歳なりの楽しみがあるよ。」とひとこと言いたかったのかもしれない。
きっとあいみょんもそういう日々を経て『双葉』に行き着いたのだろう。
私も久しぶりに何か物語を書きたいなと思わせてくれた。それが誰かのささやかな幸せになれたらなら、私にとって大きな喜びになるのである。

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