【オススメ本】針貝有佳『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』PHPビジネス文庫、2023
幸福度調査でトップ3常連国。2022年・2023年と2年連続で「国際競争力1位」に選ばれた国。それでいて千葉県よりも人口の少ない国。
これが本書のテーマであるデンマークである。
何より気になるのは「16時に帰る」この一文であろう。
その答えはシンプルで、ワーク(仕事)の目的は「ライフ(人生・生活)」を充実させることにあると合理的に考えるから。言い換えると、「ワーク」のために「ライフ」が犠牲になっては本末転倒との考え方がデンマークでは当たり前のようになっているからである。したがって、国民全員が16時に帰ることに国民的合意があるのである。
もちろんこれは女性だけではなく、男性にも同等に当てはまる。本書でこんな記述がある。
「結婚して専業主婦になりたい」「ちょっと社会人を経験してから寿退社したい」という女性や、「一家の大黒柱として稼いでいるのだから、家事育児は妻がすべき」「仕事が忙しいから、子供の世話はできない」という男性には厳しい社会である(p.52)
どうだろうか。
「24時間働けますか?」などというCMがあり、働き蜂、ブラック●●、と昔から揶揄され続けた日本では、もしかすると一回聞いただけでは腹落ちしないかもしれない。しかし、日本の常識は世間の非常識、その逆も然りなのである。
デンマークでは「ヒュッゲ」という言葉(概念)があるという。ヒュッゲとは「心地よさ」という意味で、具体的には、家族との時間や、友人とのコミュニケーション、自然との時間、運動、一人の時間などを指す。もちろん個別差があるため、多様なものが想定される。ともあれ、この「ヒュッゲ」を実現するためには、毎日夕方4時に帰る必要があるのである。したがって誰も残業をしないのである。
ヒュッゲという言葉が分かりにくければ、下記の表現がわかりやすいかもしれない。
「休み」とは、決してベットに寝込むことはデイ。喜びを感じられるプライベートタイムをしっかり持つことである(p.133)。
もとより、そのようなライフスタイルをしようと思えば、自然と仕事の仕方も変わらざるを得ない。
端的に言えば、日本人が重視している「上司に伺いを立てる」「二重チェクをする」という文化を捨て、仲間を信じるビジネス文化がデンマークでさ根づいている。週休3日制を採用する企業も多いという。
そう、このメリハリ、信頼、そのためのコミュニケーション。この当たりが冒頭の国際競争力1位の秘訣になっているのだろう。
日本では2018年以降「働き方改革」が進んでいるはずだが、どうもデンマークに近づいている感じはない。。この差は一体なんだろうか。。
というわけで、自分自身の働き方、生き方についても猛省した一冊にもなった。
本当に大事なことの優先順位を間違えてはいけない。
追記
最後に上記以外で共感した記述も記録しておく。
・日本は(中略)、新しいシステムを導入する際にも古いシステムを併存させる傾向がある。それに対して、デンマークは古いシステムをバッサリ捨てて、新しいシステムに「乗り換える」(p.41)。
・本当に大切なプライベートタイムにまで「タイパ」を持ち込んではいけない(p.74)。
・会議は中途半端な時間に設定するのがいい(p.85)
・何より大切なのは、自分のなかのいいエネルギーの流れをキープすること。お互いのいいエネルギーが交わり合うことで、いい循環が生まれ、いいアイディアが生まれ、いい成果につながる(p.124)
・仕事も大切だけど、人生で一番大事なものって聞かれたら、家族(p.227)
(参考)PHP
https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-85597-4