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コロナだしね、ペストマスク。

来店してくださるお客様が増えても、なるべくお客様の顔を忘れないよう努力している。元々、人を覚えている方だから、一度しか来店されたことがない人とのやりとりも覚えていることが多い。

2度、3度もご来店されたなら、「お久しぶりですね。」と、思わず声をかけてしまう。

(ただし、クタクタにくたびれていて、頭が回っていない時もある。)

そんな風に、来店してくださるお客様の一人に、仮装が趣味だという人がいた。

コロナウイルスのために、仮装イベントは、軒並み中止となり、仮装する機会が減ったらしい。

よく知ったお客様が、仮装して来てもらう分には、なんの問題もない。

MSKさんは、当店公認のもと、仮装して来店されるようになった。

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写真は2021年1月9日

ペストマスクは、店内の雰囲気にマッチし過ぎて、なんの違和感もなかった。

むしろ、当店の仕込み人だと思われるほどだ。

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そんなMSKさんがカウンターでお茶をする姿も、当店では珍しい光景では無くなっていた。

だが、私も気がついていなかったわけではない。

お一人でご来店されたお客様が、偶然、MSKさんの隣しか、席が空いていなかったため、案内した時のことだ。

自分の隣に、得体の知れない何かが座っていることに動揺される様子を。

どこに視線を持っていっていいのか、そわそわされていた。

あれは、流石に申し訳ないことをしたと思う。

少しフォローを入れておけばよかったが、あまりに厨房が忙しかったので、それどころではなかった。
何か得体の知れないものの隣に、突然、人間が座らされると、挙動不審になるケースがあるようだ。


こんな話もある。

ある日、常連さんとは言わないまでも、よく知ったお客様が、ご来店された。
その日は、カウンターに座られていた、他の初対面のお客様とも、ごく普通にお話しをされているようだった。

この時、同時に、カウンターでは、ペストマスクの人物(MSKさん)が座って、優雅にお茶をしていた。

後日、お客様から、ほぼパニック状態のぼやきを聞かされた。

「なんか、クチバシついた人、おったよな・・・。絶対おったよな。あんまりジロジロ見るのは失礼かなと思ったけど、気になり過ぎて、実は、他の情報何も入って来てないし、何話してたかすら記憶にない。あれは、ああいう顔の人なのか・・・いやそんな人間はいるはずない、何言ってるんだ俺は。だけど、店の他のお客さんは、誰もそのことにツッコミ入れてなくて、何も変わったことはないみたいな感じやった。なんで、みんな普通なん?おかしい・・・。向かいの男性が立ち上がって、なんかマスクつけてる人に『あのぉ・・・』って声かけた瞬間、『そうやんな!普通、そうなりますよね!!』と思ったら『杖忘れてますよ』って普通に言ってて、いや、そこ!?そこちゃうやろ!?って思いながら、あの時、会話しとった内容とか一歳入って来んかった。生まれて初めて、店を出て、車に乗った時、『嘘やろ!!!』って叫んだ。なんか、歩き方も普通の人間じゃなかった。」

偶然、Tetugakuyaには、雑誌『ナイスタウン』さんからの取材のため、記者の方がお見えになっていた。

「こちらの方、何か見たらしいんです。」と私は言った。

「いや、確実におったやんな!?」とお客様は、厨房のはるちゃんに訊ねたが、はるちゃんは、首をかしげる。

記者の方は、お客様の必死の訴えに「そういうの・・・普段から、見えちゃうタイプの人なんですか?」と声をかけていた。

「いや、違うんです。多分、思われてるのと違うと思うんです。」とお客様が、必死になればなるほど、記者さんは、フォローのつもりで「Tetugakuyaさんなら、何かそういうの見えちゃうような体験しそうですものね。」と声をかけられていた。

お客様は、「ほんまに?俺にしか見えてなかったん?いや、そういうのじゃないと思うんです!」と必死だった。

私もはるちゃんも、記者さんも、「このお客様は何を言っているのだろうか」という半ば哀れみの視線でお見送りした。

かわいそうに、幻覚でも見てしまったようだ。


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一方、桐子カヲルの方は、来店してMSKさんと目が合うなり、入口付近で、棒立ちになったまま、なぜか琴電(電車ローカル路線)のマスコットキャラクターである、ことちゃんの家族構成について説明し始めた。

ようやく席に着いてからも、ことちゃんの家族構成についての熱弁は続いた。
人間、驚くと、思わず訳のわからないことを言ってしまうのかも知れない。

ちなみに、あれだけ、熱く、ことちゃんファミリーについて語っておきながら、次に彼女が、Tetugakuyaに来店した時には、ことちゃんファミリーは一家離散していた。
(どっか行ったらしい。おそらく路上に落ちているとのこと。)


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その後、前々回の記事に書いたように、私がダウンしてしまい、1月後半、店を閉めた。せっかく来てくれていたお客さんとのご縁が切れるのではないかという不安はあった。

けれども、店の営業再開後、再び、MSKさんが来てくれた時には、嬉しかった。

よくTetugakuyaに遊びにきてくれるMSKさんの影響で、その後、不思議なイベントを開くことになるのだが、それはまた今度、書ければと思う。

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