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2020年12月 魔女見習いを迎えるまで

2020年の暮れから、ありがたいことにお客様が増えた。

ところが、次々にいらっしゃるお客様にうまく対応できず、ワンオーダーのために30分以上待たせてしまうこともあれば、せっかくご来店された方が、ご入店できない事態も起こり、募り募った申し訳なさで、何だか無性に涙もろくなり、とうとう私が、お店に行くことができなくなった。

課題は、いくつも見えてきた。そして、ようやく、初めて、一人で運営している喫茶店について調べることにした。一人が店を回している喫茶店をワンオペ喫茶というらしい。

改めて自分の業務について一部を書き出してみた。

・茶葉やコーヒー豆、珈琲フィルターなどの仕入れや発注
・お冷とおしぼり、メニューを出す
・オーダーを聞く
・ドリンクを作る
・配膳
・接客
・会計
・洗い物
・告知
・問い合わせへの対応
・清掃

珈琲をドリップしている間は、手が離せず会計できなければ、オーダーも取れない。とにもかくにも、片付けて、テーブルを開けていくのが精一杯で、炊事場は、洗い物の山となり、食器も回らなくなる。

自分自身がドリップマシーンのようでもあった。お客さんの顔をまともに見る余裕すらなく、丁寧な挨拶さえできない。

ただ飲み物を入れて、ただお金を受け取るだけの作業が続き、おまけに、わざわざ僻地の当店まで着てくださった方が、店内に入れず、お帰りいただかなければならなかったことは、かなりこたえた。さらに言うと、(お冷やが届くまで、メニュー表が届くまで、注文を聞きに行くまで、飲み物が手元に来るまで)相当待たせている。

来店されるお客様が、当店を、おしゃれな喫茶だと勘違いしているのではないかという懸念がプレッシャーになった。うちは、コツコツ作っているお店なので、お手洗いは、まだ未改装だし、あちこち見られたくないコーナーも残っている。
お手洗いを聞かれるたびに、味気のない冷たい便座のお手洗いにご案内しなければならないと思うと、気分が滅入った。


思い切っての1月の半ばから休業宣言。

「せっかく勢いのある時に、休業するなんて!」などと友人は言わなかった。

友人も(おそらく常連さんも?)私のパターンや性格を知っているからかもしれない。

自分の混乱した状態を整理しながら、タスクを一つづつ書き出し、できることから改善することにした。

作業量と人手は、明らかに足りなかった。かといって、業務用食洗機を導入するコストはない。

今まで一度も考えたことがなかったアイディアを提案したのは、画家のDai Simaoka だった。


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「忙しい時間帯に、食器洗いしてもらうだけでも、だいぶ違うやん。一人雇うたら?誰かおらんかな、ええ子・・・。」と言ったのだ。

私には全くなかった発想だった。

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【アクリル板設置中のDai Simaoka】
ほとんどパニック状態だった私の相談に真摯に乗ってくれたSimaoka氏が、アクリル板を設置してくれている写真。額縁からのドリンクの提供が、自分の想像を超えて、お客さんに喜ばれ、一方でアクリル板の必要性に迫られるという、まさに『板』だけに、板挟み状態の私の大混乱ぶりに、何度もじっくり耳を傾けてくれたのがSimaoka氏だ。アクリル板は、Simaoka氏の案により、開閉式になった。「ここ開くんですね!」とお客さんが喜んでくれる。大切なカウンターのデザインや店内の雰囲気を壊すことがないように工夫してくれたことにも、私の相談と泣きべそに付き合ってくれたことにも感謝している。

12月の後半、Simaoka氏の助言を受けて、今では、欠かせない存在である、はるちゃんが、お店の助っ人に入ってくれるようになる。


・・・続く



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