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女性の活躍をさまたげる同質性(ホモジェニティ)の問題

会社組織における多様性の話で不思議だなーと思うのは、多様性という話をするとすぐに「英語がー」とか「外国籍の社員がー」とかになること。

多様性の捉え方は色々あります。

企業組織における多様性の本質は、属性というよりは考え方や価値観の多様さだと思っています。

その上で・・・。

そもそも最も身近な多様性のひとつである「ジェンダー」について、それすらダイバーシティ&インクルージョンの入口にも立ってないんじゃないかなーと感じています。

ジェンダーギャップ指数は世界121位

2019年に発表された世界経済フォーラムによるジェンダー・ギャップ指数(the Global Gender Gap Report 2020)は153カ国中121位。

2006年は80位だったので、年々下降し続けているということです。日本が悪化しているというより、日本が何も変わらずに停滞し続ける中、世界が前進している話なのかなと理解しています。

2016年にSDGsがスタートして、女性活躍推進がニュースでも取り上げられてきた中で3年が経ち、それでこの状況。

変わらない、変えられない危機感ばかりがつのります。

多様性を阻む同質性(ホモジェニティ)

多くの場合、それが特に企業組織であれば、多様性を拒みたいとは誰も思っていないと思います。実際に企業サイトを見に行けば多様性の取り組みについてアピールされています。

にも関わらずなぜ一向に改善しないのか。

それは、同質性(ホモジェニティ)が生み出す「文化」であり「空気」に因るものだと思っています。

文化とは

「文化」とは、その集団において共有される思考(認識)や行動(振る舞い)のパターンです。

ルース・ベネディクトの記した「菊と刀」の中で文化はレンズと表現されていて、「そのレンズを通して与えられた世界はあまりにも自然なため、意識することは難しい」と述べています。

空気とは

「空気」とは、ある種の「前提」であると山本七平の「空気の研究」の中で述べられています。

空気を読む、空気に流される、などと語られる時には、何かしらの前提があり、その前提を起点としたモノの見方が場を支配します。その前提により善悪の基準が変動します。

共通するのは「無意識」だということ

「文化」はレンズであり、かけている人にとってはあまりに自然なので色が着いていることに気がつけません。

「空気」も同様に暗に場を支配する前提のために、前提をあえて疑うスタンスに立たない限り、ごく自然なことだと素通りされていきます。

同質性(ホモジェニティ)の中においては多様性はあまりにも自然に視界から外れていくのです。

このことを発見するのに、会社組織においては対して珍しい場面でもありません。

・意思決定者の会議に、女性性に属する方はどれくらい参加されている方はどれくらいいるか?
・そこの場に違和感を感じて口に出した人はどれくらいいるか?そもそも自分はそれを見てどう感じたのか?

あらためて問われるまでもなく、男女比が圧倒的に差があっても、違和感すら感じない人も多いんじゃないかなと思います。

数で誤魔化される組織内ジェンダーギャップ

上場企業や特に大企業と呼ばれる会社を中心に、女性比率が公表されています。帝国データバンクによると女性の管理職比率はわずか「7.7%」(2019年)です。

2015年に施行された女性活躍推進法で、女性管理職の比率を30%に伸ばすとした「2020年30%」のスローガンがありましたが遠く及びません。

とはいえ10%弱あるじゃないか、という感覚の方も実際には多いと思います。

かく言う自分もそうでしたので・・・。

ただ、実際の意思決定の場面において参加者が10人もいるようなケースは稀ですので、実際はつまり0。

意思決定にジェンダーの多様性はありません。

また、かろうじて1人入ったとして、残りの9人の同質性を打ち破ることを期待するのはあまりにも酷。ひどい話です。

40代以上の男性という同質性(ホモジェニティ)

つまり、現状の企業組織に占める40代以上の男性という同質性(ホモジェニティ)の高い環境の中にあっては、「文化」と「空気」により、多様性が意識されることがなく、数字で見ても意思決定に介在できるのは多くの場合は0人。

・男は働き、女は家(実際に妻は専業主婦)
・女はライフイベントがあるから仕事は一時的
・出世したければ男のように働け

そんなジェンダーステレオタイプに囚われた同質性(ホモジェニティ)の中で、変化が起きるのか?

と考えると、いくら勇ましい号令をかけたところで変わる期待は持てないと感じてしまいます。

そこにある希望

とはいえ悲観ばかりしてても仕方ありません。ジェンダーギャップを潰し、ジェンダーに捉われない働き方ができる、「選択肢の多い社会」にしていかなければなりません。

今、希望として感じているのは、ただ女性性の観点から声が発信され、それが広がり、社会のモメンタムになりつつあるからだけではありません。

私自身、いわゆる40代男性属性の1人といえます。

ですが、妻に支えられ続けている共働き家庭の夫であり、可愛い息子の親であるからこそ、このジェンダーギャップの実情に強く違和感と危機感を感じています。

私と同じように、男性性の属性の中にあって、この観点で共感値を持つ人が増えている。それが私の感じる希望です。

先の意思決定の場における男女比ですが、数自体を急に変えることはできません。

ただ、その中に含まれるジェンダーバイアスのない(余計なジェンダーステレオタイプを持たない)男性が増えれば、時間軸で言えばより短期目線で変わる可能性があります。

今こそジェンダーギャップに対して、男性性側からも声を発信すべき時なのだと思います。

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