ペンネーム:那癒譚所為尋

私はいつも素敵でいなくてはならない。私は自己の表現として私を使う。

磨きに磨きをかけ、私は艶やかに、滑らかに、その者の美しさを表現するの。時にはギラギラと輝いたり背伸びをしたりして強く華美であることを、時にはスモーキーでしっとりと落ち着いたセンシュアルな雰囲気を、時には野に咲く小花のような可憐さを。その時の気分で、魅せたい自分を纏う。


私は首元に漂うの。どうか抱きしめた柔らかさを想起して。蕩けた笑みが見たいわ。

私は指先を彩るの。どうか繋いだ手を思い出して。切ない表情が見たいわ。

私は胸元で舞うの。どうか大好きな私を独り占めして。幸せを噛みしめる顔を見せて。


貴方の記憶の奥底で一生忘れられない香りとして存在することがどれだけ嬉しいことか。町中でふと鼻をかすめる甘さが私を思い出させる。その瞬間だけは私が貴方を絶対に独占している。他の誰といても、美しい過去に私を探して。あの日の私を思い出すたびに、恋しくなっちゃって、どうしようもなくデパ地下で彷徨ってみたりしてくれたら嬉しいわ。

どうか、あなたの人生に私を刻み込んでちょうだいね。



【出題されたなかで使用した題材】
①人間以外の視点で描写する


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